乳がんになった私 #22「グランパスファミリー」
4月23日。
ヘアカットとテレビ取材を終えた私は、内田と2人で豊田スタジアムへ向かった。
オフィシャルサポートソングを担当させてもらっている名古屋グランパスのホーム戦。
抗がん剤治療の直前だったこともあって、なんとなく気分的にこの日は現地観戦ではなく、おとなしく家でDAZN観戦の予定だった。だが、数日前にチームスタッフの方から、ぜひ現地にお越しください!とご招待をいただいた。
別に今家でおとなしくしておく必要もないか…!せっかくだから現地で盛り上がろう!その方がきっと気持ちも明るくなる!そう思い、ありがたく伺うことにした。
豊田スタジアムに到着すると、チームスタッフの方からたくさん声をかけていただいた。皆さんの温かい言葉が嬉しかった。
乳がんを公表してから初めてのスタジアムでの試合観戦。やはり試合中は病気のことなんか忘れ、試合に熱中して興奮して叫びまくった!来て良かった!
結果は惜しくもドロー。もちろん悔しさはあるがそれ以上に、やはり生で応援する楽しさ、心のたぎり、グランパスからもらえるパワーを感じていた。
試合終了後すぐに、私は少し席を外していた。(お手洗い)
席に戻るため歩いていると、スタッフの方が「森さん!森さん!急いで!!!」とすごい勢いで手招きしている。
え、何何何?一体何が?!
ピッチを見た。
なんと、試合終了後の選手たちが何やら横断幕を持ってピッチを歩いている。
【Qaijff彩乃さん 共に乗り越えよう】
感情のキャパオーバー。
涙腺崩壊。
心臓が爆発するかと思った。
まさかこんな…!!!
大号泣する私にスタッフさんが「今からゴール裏の前、ピッチに行きます!」と言い、誘導されてあれよあれよとピッチの脇へ。
見ると、今度はゴール裏のファミリー (グランパスサポーター) の方たちが横断幕を掲げてくれていた。
選手会長の森下選手が、戸惑う私を笑顔で招き入れてくれた。
(写真撮影の時、背中に誰かがポンっと手を添えてくれた。その時はいっぱいいっぱいで確認出来なかったのだが、後で写真を見てみると、位置的にランゲラック選手だった。泣ける…。)
驚きと、ありがたさ、嬉しさと…
いや、もう言葉が感情に追いつかない。言葉にできないとはまさにこのこと。
この時のピッチ上での私の頭の中は…
うわああああああああああ…!!!涙
こんな時間を作ってもらって…!!!涙
試合直後でお疲れのところなのに…!!!涙
どうしよう、ありがたすぎる…!!!涙
どれだけの人が協力してくれたんだ…?!涙
(ああ、今思い出しても泣けてくる。)
スタッフの方々からの温かい言葉、ハーフタイムで「たぎってしかたないわ」を踊ってくれたチアの皆さんの熱いダンス、ボランティアスタッフの方々からいただいたメッセージ、そしてゴール裏の皆さん、選手の皆さん、グランパスファミリーが掲げてくれた横断幕。
この日のこと、一生忘れません。
そして思いました。グランパスファミリーの中にも、きっと同じく乳がんの人や、その他の病気、色々な状況の人がいると思います。私はこの日、皆さんからものすごいパワーをもらいました。だから私も、パワーを届けたい。返したい。それは音楽という形や、言葉や行動で伝えることかもしれない。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
何度ありがとうと言っても足りないくらい。
ありがとう。
(#23へ続く)
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