乳がんになった私 #69「がんが消えた…?」
11月1日、マンモグラフィ、CT検査、そして検査結果を聞く日。
数日前から緊張と不安を抱えて過ごしている自分がいた。
やはり検査結果を聞くのは、怖い。
エコー検査で怪しいと言われ、診察室で泣いた3月6日。
大きな病院で、高確率で乳がんだと思うと言われ泣いた3月13日。
乳がんと確定した3月29日。
途中経過、胸のがんが広がってしまっていると分かった7月21日。
そして今日。
病院へ到着し、まずは人生2度目のマンモグラフフィ。
初回も痛すぎて辛かったのだが、今回もやはり…。大量の冷や汗をかいて、終わると足元がふらついた。
技師さん「大丈夫ですか?本当に痛いですよね…!中には、辛くて倒れちゃう方もいるんですよ…」
私「うわあ…そうなんですね…!」
フラフラになりながら、次はCT検査へ。
CTも2度目だ。造影剤の点滴を繋ぎ、順番が呼ばれたら検査装置に仰向けに寝て、開始。息を吸って、止めて、吐いて。CTはあっという間に終わる。
検査結果が出るまで乳腺外科の待合室で待った。
今日の付き添いは母と内田の二人。大事な日は必ずこのメンバー。
午前中はいつもとても混雑している乳腺外科だが、検査結果を聞く日は午後の受診で、この日の待合室はガラガラだった。
しばらくして診察室へ呼ばれた。
主治医のS先生はいつも通り穏やかな口調で話し始めた。
S先生「まず、脳のMRIの結果は問題なしでした。」
私「あ、やっぱりですか!良かった、安心しました。」
頭痛や視力低下から脳転移を恐れ、自らお願いした検査だった。不安がひとつ解消された。
S先生「CTの結果、肺や肝臓への遠隔転移も見られませんでした。」
私「良かったです…!!!」
遠隔転移があればステージ4。こればっかりはずっと付きまとう不安と恐怖。身体の中は、目に見えないから、怖い。
S先生「そしてですね、腋のリンパ節のしこりは、やはりほぼ見えなくなってました。ただ、画像で100%判断はできないので、前にもお伝えしたセンチネルリンパ節生検という検査はします。」
私「はい、はい、良かったです…!(肝心の胸は…!!!)」
S先生「そして、右乳房なんですが…ほぼ見えなくなってるんです。」
私&内田&母「えっ!!!!!」
S先生「ここに、ほんの少し…分かります?点のようなものが残ってるんですが、これががんなのかどうか、画像だと判断がつかないんですが…ほとんど見えないんですよね。」
私「や………まさかこんなにも効くなんて………!すごい…本当に…分子標的薬、すごい…!」
私も母も内田も、嬉しくて、嬉しくて、言葉が出てこなかった。
がんが消えた…?完全に、消えたかもしれない…?
驚きと喜びで絶句している3人とは裏腹に、S先生はとても真剣な顔付きで話を進めた。
S先生「それでですね、今後の手術ですが、画像上はほぼ見えなくなったという…結果が良かったので…僕も今朝画像を見てずっと考えてまして、悩みまして…」
私「…え、それって、全摘じゃなくなる可能性が、ってことですか?」
S先生「はい、画像上はがんがほぼ見えなくなってるので、この、少し点のように残ってるところだけ部分切除という可能性もありなのか…とも考えたんですが、だけど、やっぱり命のことを第一優先に考えるなら」
S先生は、はっきりとした口調でこう言った。
S先生「僕は全摘が良いと思います。」
今まで聞いたS先生の声で、いちばん力の込もった声だった。
私「そうですか…!!!」
私は、嬉しかった。今までたくさんの患者さんを診てきた先生でも、今朝から悩んでいたんだと教えてくれたことが。逆に、悩んでいただなんて不安になるから言わないでほしいと思う人もいるかもしれないが、私は、先生だって人間で、悩んだんだという過程を話してくれたことが嬉しかったし、だからこそ信頼できると思った。朝にMRIの結果を見て悩んでいる先生を一瞬で想像した。
母や内田が、画像上ほぼ見えなくなっているのに本当に全摘を選ぶべきなのか、そして部分切除を選んだ場合のリスクについて質問した。
S先生は、画像は100%ではないこと、もともとあったがんが一度は広がっていて、今は見えなくなっているがもしかしたらがん細胞が残っている可能性もあることを説明してくれた。そして、もしがん細胞を身体に残してしまったら、今後、遠隔転移の可能性も上がってしまうと。遠隔転移をしたら、取り返しがつかないことにもなりかねないと。
S先生「最終的に決めるのは森さんです。今後の人生にも関わってくる選択なので。…でも、僕は、全摘を勧めます。」
私「全摘でいきます。」
当初の予定通り、私は全摘を選択した。母も内田も、納得した。
S先生「分かりました。…ただ、まだ手術まで時間はあるので、変更も可能です!」
私「えーっ!!!笑」
私たちは、笑いながら診察室を出た。
(#70へ続く)
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