裏会小説　第7話

第6話はコチラ。

◇

上司との名古屋出張は無事に終わった。

事前に準備した甲斐あって取引先との商談もスムーズに終わることができた。

上司も教え子の成果を喜んでいるのか、帰りの新幹線の中一杯飲もうと誘われ、東京に戻ってから飲んだ。

上司の昔話に相槌を打ちながらも、ユウイチは行きのタクシーで見かけた不可解な建物のことがずっと気になっていた。あのマークはどこかで見た気がするのに、それがどこだったのか思い出せない・・・。

◇

店を出て家路につく。

いつも見かける路上パフォーマーは居ない。代わりに変なピエロが居た。

～♪　～♬

寄ってらっしゃい♪　見てらっしゃい♪

こんなに大きなカボチャがあるよ！

あなたはカボチャが欲しくなる

要らない人でも欲しくなる

それがなぜだかわかるかな？

僕は魔法の八百屋さん♪

おっと、そこのお兄さん！

最近名古屋に行ったのね。美味しいお酒飲めたかな？

途中で見かけた奇妙な建物。

深く調べちゃいけません♪　知らない方が幸せさ♪

僕は魔法の八百屋さん♪

Google、Zoom、Youtube　みんな大好き流行りのサービス。

どんどん使ってくださいな。なんでも検索してくださいな。

無料だ無料ランランラン♪　タダより安いものはない♪

僕は魔法の八百屋さん♪

どんなことでも知っている。気になるあの子の好きな人も。

奇妙な建物の正体も。

そんなに知りたい?あの建物。

だったら買ってよこのカボチャ。教える代わりに買ってって。

今なら1玉800円。よしもう一声700円。

安いぞ安いぞ今だけだぞ！かぼちゃと秘密の交換だ！

僕の魔法の種明かし？Google先生に聞いてごらん。

あなたのことはお見通し。家族や友達よりも知ってるよ♪

ランランラララン、ランランラン♪

僕に知られたくないことがある？だったらピーマン買ってよね♪

今なら2つで2000円。安いぞ安いぞ2000円。

よしもう一声、1980円。お買い上げありがとうございます。

これで秘密は守られた♪　秘密はきちんと守られた♪

ランランラララン、ランランラン♪

～♪　～♬

ユウイチの手には、しなびたカボチャとピーマンが残っていた。

料理なんてしない。作れるレシピと言ったらカレーくらいだ。

「カボチャ　ピーマン　カレー」

虫眼鏡マークのところにキーワードを入れた。

「【5分で解説！】かんたん！男の夏野菜カレー」

そうそう、急に暑くなって、ピリッと辛いカレーが食べたいと思っていたんだ。

2500円でカレーか。佐伯と飲みに行くよりは安く済んだな。

ユウイチは地図でスーパーを確認し、カレールーを探しに急いだ。