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【映画08】最強のふたり(2011)

以前メインのアカウントでも書いたことのあるこちらの作品。

観るきっかけになったのは、音楽でした。
ざっくり言うと、車いす生活の大富豪の障がい者と介護役になったスラム街の黒人青年のお話。
泣ける映画としてジャンル分けされていたのでそれなりに心の準備をして挑んだのですが、良い意味で期待を裏切られました。
観た後に感じたのは、じんわりとくる胸のあたたかさ。
涙は流しませんでしたが、もし流れたとしてもあたたかい涙だったことでしょう。



※この記録には、ネタバレが含まれます。未視聴の方はご注意ください。





◆あらすじ

事故で首から下に麻痺が残り、車いす生活になってしまった大富豪のフィリップ。介護役を探していたところに、失業手当のために求職活動をしていたドリスと出会う。ドリスは最近刑務所を出たばかりのスラム街の黒人の青年。境遇も異なり共通点も無いふたりが、だんだんと絆を深めお互いに無くてはならない存在になっていく実話を基にした物語。


笑顔の多いふたり

障がいをテーマにした泣ける作品だと、どうしても暗かったり悲しくなったりするイメージがありました。でも、この作品は違いました。

このジャケット写真からも分かる通り、笑いあうふたりの印象がとても強く残っています。
普通の人なら、首から下が動かないフィリップのことをかわいそうと同情の目で見てしまいます。しかし、ドリスは「大変だな。じゃあこういう時はどうするの?」と純粋に聞いてきて、ジョークも言います。デリカシーが無いようですが、一方で偏見もありません。おそらく彼にとっては人の性格の違いくらいのものです。障がい者としてではなく、ひとりの人間として接してくれるドリスといる時間がフィリップにとっては心地よさそうでした。
ブラックジョークにはドキドキしてしまいますが、ふたりが楽しそうなおかげでこちらも笑顔を分けてもらいました。

離れて分かった大切な存在だったふたり

恋愛作品ではよくありますが、この作品でもふたりが離れてしまうシーンがありました。ドリスの家庭の事情のため、フィリップのところの住み込みの仕事は辞めなければならなかったためです。
新しい介護役を雇って過ごしてみたフィリップですが、やはり違和感がぬぐえません。おそらく新しい人が悪いわけではなく、ドリスとの時間が心地よすぎたから。ふたりでいたときはあんなに笑っていたのに、ドリスがいなかったときのフィリップからは表情が消えていてゾッとしましたね。
一方で、ドリスもフィリップと過ごした日々のおかげで変わっていったように見えました。今まで触れたことのない世界に触れたことで、芸術に関する知識と気品が備わったような。
そして最後にドリスがプレゼントしてくれたものは、フィリップにとって自信がなかったために手を伸ばせなかった存在。クライマックスのふたりの笑顔で胸があたたかくなりました。

まさにタイトル通り”最強のふたり”

共通点はひとつも無いようなフィリップとドリス。
でも、お互いに無いものはお互いが補い合い、まるで欠けたパズルのピースがピッタリハマったかのように感じました。そういう意味でも”最強のふたり”という邦題は分かりやすかったように思います。
ちなみに、この作品はフランス映画なのですが原題はIntouchables。英語ではUntouchables。直訳すると”触れられない人々”という意味だそうです。最初に聞いたとき思い浮かんだのはスピッツの『ロビンソン』の「♪誰も触れない二人だけの国」という歌詞でした。”他人には分からない強い絆”や”境遇の異なる普通なら交わることのないふたりが大切な存在になった”ことを端的に表すと『最強のふたり』なのかな、と。
しかも、この作品は実話に基づいたストーリーです。二人はそれぞれ別々の道を歩みましたが、今でも時々会っていて強い絆はその後も続いていたことがエンドロール前に明かされ、さらに胸が熱くなりました。

◆総評

メインアカウントのほうで触れたので、こちらではあえて書きませんでしたが、音楽が素晴らしい作品でもあります。作品のテーマソングは、シーンによっては印象が変わるような曲でした。作中何度か流れてくるのですが、物悲しく感じるときもあれば、強さや希望を感じるときもある。特にラストシーンは明るい希望を含んだ朝焼けのような印象を受けました。
この作品は障がいのある方との向き合い方について気づかされた作品でもあります。知らず知らずに同情の視線を向けていたことを。そして、それが人を傷つけることだってあります。ひとりひとり考え方だって違う。だからこそ、その人に合わせて向き合うべきなんだなと思いました。それは人間関係においても同じですね。
視聴後に色んなことを考えさせられた作品でした。まだ言語化できていないこともあるので、今後何度か観て少しずつ加筆していく予定です。

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