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【映画17】異人たち(2023)

この作品は映画館に観に行きました。
予告かポスターを見て、何となく観てみたいなぁと思ったので。

基本的に映画館で観る映画は、「観に行くぞ!」と意気込んで行くタイプの人間ではあるのですが、年に数回この作品のように"何となく"観に行くことがあります。

もちろんハズレもありますが、確率的には良い出会いが多いんですよね。

ちなみに、この作品も良い出会いのひとつでした。



※この記録にはネタバレが含まれます。未視聴の方はご注意ください。





◆あらすじ

原作は日本の脚本家・山田太一の『異人たちとの夏』。
12歳の時に両親を亡くし、それ以来孤独な人生を歩んできたアダム。現在はロンドンのタワーマンションで暮らし、脚本家として生計を立てていた。
両親との思い出をもとにした脚本に取り掛かっているとき、ふと子供の頃に住んでいた街を訪れてみる。すると、昔と同じ家で亡くなったはずの両親が当時のままの姿で生活していた。
そんな不思議な体験をしているのと同じ頃、同じマンションの住人だというハリーが突然部屋に訪ねてくる。逢瀬を重ねるうち二人は親密な関係となっていく。
それまで孤独だったアダムに訪れた不思議であり愛しい日々。この物語の結末は・・・?


アンドリュー・スコットの演技が素晴らしい

主演のアンドリュー・スコットのことを初めて知ったのは、イギリスのドラマ『シャーロック』のモリアーティでした。

【『シャーロック』(シーズン1)の鑑賞記録はこちら▼】

モリアーティというなかなかクセのある役どころに上手くハマっていた彼。他の作品も観てみたくなったことが、この作品を観に行くきっかけのひとつでもありました。
そして、今回のアダムもまあまあクセのある設定のキャラクターだったと思います。子供の頃に亡くなった両親と大人になってから不思議な再会を果たします。最初は不思議に思っていたアダムも、だんだん失った愛情を取り戻すような時間を過ごします。大人だけど子供の頃のように扱われたり、今の自分のことを両親に打ち明けたり。この絶妙な心のゆらぎ加減の演技がアンドリュー・スコットさんは素晴らしかったですね。お父さんに抱擁されるシーンや、クリスマスのシーン、両親と共に同じベッドで眠るシーンなど、「うわぁ、この表情とか目線の送り方とか完璧だな」と素人ながら思ってしまうほどでした。
彼が出演している他の作品もぜひ観てみようと思います。

ハリーとの関係性が愛しくて儚い

アダムの住んでいるマンションの住人として突然現れたハリー。
あまりにも唐突な登場の仕方だったので、最初は「良い人?悪い人?どういう存在?」と思考を巡らせながら観ていました。
でも、だんだんとハリーがアダムの孤独な心を満たしてくれるような存在になっていくのを観て、微笑ましく思っていました。
アダムがハリーを亡くなったはずの両親に会わせようと、家に連れて行ったところで感じた違和感。
これが、あのラストシーンに繋がっていくとは思っていませんでした。
やっと出会えた存在だったのに・・・。
最後に二人が星のように消えていく演出は、その儚さを表しているようでした。

作品のテーマ”孤独”

この作品の大きなテーマとして孤独が描いてありました。登場人物がやけに少なかったのもそれを際立たせるためだったのではないでしょうか。
まずはアダムの孤独。ハリーと出会い、亡くなったはずの両親と共に過ごすことで、次第に孤独な心が満たされていきます。
両親と二回目の別れを告げるとき、悲しみと寂しさはあれど、以前のアダムとは異なっているのを感じました。
そして最後にハリーの孤独も明かされることになります。
しかし、ラストシーンにてお互いの存在のおかげでアダムもハリーも孤独ではありませんでした。
悲しくて切ないラストではありましたが、そのことが救いになってくれました。

◆総評

この作品の原作は山田太一さんの『異人たちとの夏』だそうです。この原作は未読なのですが、原作のタイトルに”夏”が入っている理由が想像できた気がします。
特に日本人にとって夏は、怪談やホラーの話がよく語られるように少し変わった異様なことが起こる季節でもあります。(他の国ではどうなのか気になるので今度調べてみます)
亡くなった人と再び会うことができる、亡くなった人が会いに来る。そんな出来事は夏のイメージ、そして『異人』という言葉がピッタリだな、と思いました。
この作品では特に季節感については(おそらく)明言はされていませんでしたが、少なくとも原作の雰囲気は出ていたのではないでしょうか。
作品を観終わった後の切なさが残る感じが、まさに夏の夜の雰囲気のようだったな、とふり返ってみて改めて思いました。
ぜひ原作も読んでみたいですし、日本でも映画化されているようなので機会があれば観てみたいと思います。



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