見出し画像

僕らのマジックアワーRUN

初めての朝に出会った。
もちろん早朝を走ったことはある。

私は週に1度10キロを走る、ランニングが趣味の中年だ。

走る時間帯は朝が多い。

昼は人が多いのと気温が高くなりがちなのであまり好まない。
夜は顔面から転んだ経験から、走りたくない。

そんな理由から、私は朝によく走る。

朝のことならまかせて!と言えるくらい、
ランニングコースである私の街や近くの川の朝を知っているつもりだった。

でも、今朝は本当にビックリした。

私の知らない朝の顔が突然現れて、たった1時間のうちに物凄いスピードで変化していったのだ。

あなたは、「マジックアワー」という言葉を知っているだろうか。

マジックアワー (magic hour) 、マジックタイムは、日没前、日の出後に数十分程体験できる薄明の時間帯を指す撮影用語で、光源となる太陽からの光線が日中より赤く、淡い状態となり、色相がソフトで暖かく、金色に輝いて見える状態である。(Wikipediaより)

走る仲間からこの言葉を教えてもらい、ゴールデンウィークはこの空と出会うためのランニングをしようと心に決めていた。

そして、今朝がその日だった。


****

5月3日(月)

AM 3:40
目覚ましよりも30分早く目覚める。
今朝はマジックアワーを撮影するために、日の出30分前から外へ出て走ると決めていた。
東京の今朝の日の出時刻は4時47分。
まだ時間があるので布団の中でゴロゴロしている。

AM 4:10
窓の外を見るとすでに紫を予感させる空の色になっていた。
慌てて着替えて外へ出る。


AM 4:20
いつものランニングコースを走り出す。
人は誰もいない。いつもなら常に走っている車でさえも数分おきに見かける程度。
少し肌寒い5月の早朝の空気が走るのに心地よい。
薄手のパーカーを選んで良かった。 

太陽がスタンバイしている東の空。


太陽と真逆の西の空。

同じ時間でも、360度空の色が違う。
さらに空の色は、1秒ごとに少しずつ変わっていく。
私は全てを目の中に収めたくて、ぐるぐると回る。カメラでは上手く撮れない色があり、またカメラではないと見えない色もある。なんとも不思議だ。

AM 4:40
川に辿り着き、川と空とだけが見渡せるような場所を探して走る。

見つけた。

こんな朝は初めてだ。
この景色は私だけのもの。
周りには誰もいない。
聞こえるのは流れる川の音、鳥たちの声。
かすかに風の音と、虫の声。

AM 4:50
色が逆転してきた。
ほわんとやわらかい。

少しずつ人が歩き出してきた。
おはよう。
今日の始まり。

早朝の空にこれだけ沢山の表情があるなんて、知らなかった。
いや、今までも見たことはあったのだと思う。
だけど、視界に入っていただけで、ちゃんと見たことがなかったんだ。
なんてもったいないことをしていたんだろう。
遠くへ行かなくても、こうやって家のそばで、感動を味わうことができるんだ。

AM 5:00
zoomを開く。
走る仲間たちとオンラインで待ち合わせをしていたのだ。
全国各地に住むみんなも「マジックアワー」を楽しんでいる様子だった。
住む場所によって空の色が違うのが面白い。
日の出時刻はバラバラだ。
離れていても同じ時間や景色や感動を共有する。
なんて贅沢な時間なのだろう。

AM 6:00
帰宅。
帰り道は少し暑くて、これから夏に向けて早朝のランニングが気持ち良くなるなと感じる。
午前5時のランニングはよくやっていたけれど、今年の夏は午前4時のランニングが定番になりそうだ。
そんなことを考えながらシャワーを浴びて再び布団に潜り込む。
おやすみなさい。

****

目覚めるとすっかりいつもの空だった。
良いお天気だ。
さて今日は何しようかな。
まだお昼前。

特別だけど特別じゃない今日は、まだまだ続く。


◆◆◆◆◆◆

 


同じイベントに参加したメンバーの記事の紹介です。
この企画に参加したことで、スピッツの音楽がかつて自分の生活に染み込んでいたことを思い出したそうです。
〝人の心を鷲掴みするのではなく、「優しくつまむ」くらいの控えめな引っかかりのようなものに、私は幾度となくやられてきたのだと思い出す。〟

夜を駆け、そして紫の夜を越える・長 ひかり

この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?