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走ることで、明日がもっと楽しみになる

明日がもっと好きになった。それは、好きな場所が増えたから。

私はランニングが趣味で、毎週ほぼ決まったコースを走っているのだけれど、たまにランニング仲間から「こんな所を走っているよ」なんて話を聞くと、すぐに影響を受けて同じような場所へ走りに行きたくなる。
最近では古墳や史跡まで走ったという話をよく聞いていて、すごく気になっていた。なぜなら3年ほど前まで住んでいた熊本では、月に1回ほど塚原古墳公園という所へ子供達を連れて遊びに行っていたからだ。
古墳でそり滑りとか、ギョッとされちゃいそうだけど、そんなのが大いに有りな、大きくて開放的で自由なとても気持ちの良い公園だった。

手を伸ばせば海も山もある、空気も水も美味しくて自然に囲まれた熊本。出かけるたびに素敵な景色と出会い、大切にしている場所がいくつもある。その中でも好きな場所ランキングの上位に入る古墳公園。また行きたいなぁ。
そんなことを考えながら私の家の周りにも古墳があるのだろうかとGoogleマップで検索をしてみた。しかし、残念ながら走るにはちょっと距離があった。
ならば史跡はどうだ!再度検索をしたところ、家から5キロ弱の場所に史跡を発見した。片道5キロはランニングに最適な距離だから迷うことはない。ランニングの目的地は「野火止用水史跡公園」ここに決めた!
時刻は午前9時。日曜日の朝を満喫すべく、私は家を出発した。


初めて走るコースは少し緊張する。
Googleマップを見ながら走るのは危ないので、ある程度頭の中に地図を記憶してから走るようにしている。曲がる場所を間違えると家の方へ引き返していたりすることがよくあるから、目印を間違えないようにしなくてはいけない。
この少しの緊張感が、いつものランニングよりも私を走らせてくれることに最近気がついた。
意識が地図や新しく見る景色に集中していると、いつもは休み休み走る私が、あっという間に3キロ、4キロと走れているのだ。途中で止まってランニングアプリを開くと、もうこんなに進んだのか!とか、1キロ走るのに7分切ってる!とか、ご褒美が沢山ついてくるから、さらに足取りが軽くなる。

あっという間に目的地まで残り一直線となっていた。最後の道はゆっくりと、景色全体をしっかりと見ながら走った。
すると、目の前には富士山が驚くほど綺麗に見えてきて、とても感動的だった。今日はやけに空気が澄んでいると思っていた!
昨日の雨が嘘のように今朝は快晴で、空気も冷たくて澄んでいるのが走っているとよく分かる。ほどよい湿度が呼吸しやすくさせてくれるし、本当に走りやすい日だった。走ってみないと知ることができない空気が存在するような気がする。今日みたいな日は、どこまでも走って行けるような気持ちになる。

ほどなくして目的地に到着した。
野火止用水史跡公園。
あれ?そういえば、以前車で通ったことはある場所だ…見覚えがある。まさか史跡だったなんて、驚いた。

武蔵野のうちでも特に高燥な土地で、自然の水利には恵まれなかった野火止台地。そこで川越藩主松平信綱が1655年に野火止用水を開削。生活用水や農薬用水等に使用されてきた。しかし、1969年に水事情が悪化したため、多摩川からの分水が中止となる。
屋敷内に引水したり、畑地への灌漑及び沿線の乾燥化防止に果たした役割は極めて大きいものだった。文化的業績の大きい野火止用水を滅ぼしてはならなと、埼玉県新座市は復原・清流復活の事業に着手し、本流と平林寺堀の一部を復原した。

野火止用水について知ると、目の前に流れてくる水の重みをすごく感じる。水がすぐ手に入ることを当たり前だと思ったらいけないよね。

公園の隅に野火止用水の分岐点を発見!

左が本流で右が平林寺堀。
本流に沿って進んでみる。

私は頭が混乱してきた。まるで熊本に戻ってきたような、そんな風景が目の前に広がり続けた。
半径5キロの世界に、熊本にいたときと重なる景色や匂い、空気が広がっている。
車でただ通過しただけの、車では気が付けなかった場所が、特別な場所へと変わっていく。 
散歩ではなかなか行けない5キロの道のりもランニングにはちょうど良い5キロ。
まだ見ぬ近くにある素晴らしい自然を、景色を、見つけてしまった。
気にも留めなかったこの場所との出会いが、私の心を大きく動かす。熊本のように愛おしい場所が身近に増えていったら、私の日常はもっともっと豊かなものへと変わっていくだろう。

ランニングは、わざわざ行くには物足りない場所を輝かせるのが得意だ。今回行った史跡もそう。電車やバスを乗り継いでわざわざ行くにはちょっと物足りなさを感じる場所になったのかもしれない。
ランニングの目的地として行ったからこそ、その場所にあるものを純粋に損得なしに感じることができたような気がする。 
走って行って本当に良かった。


*****


もうすぐ紅葉が綺麗な季節になる。紅葉を見にまた走って来よう。
ここは、毎年秋が来るのが楽しみになるような、そんな私の特別な場所に、きっとなるような気がした。
いつ紅葉するだろうか。今日も私は、明日を楽しみに過ごしている。

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