『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.3 柿本人麻呂

あしびきの 山鳥(やまどり)の尾の しだり尾の 
長々し夜を ひとりかも寝む  

柿本人麻呂(第三番)


(現代語訳)


山鳥の尾の、長く長く垂れ下がった尾っぽのように長い夜を
 (想い人にも逢えないで)独りさびしく寝ることだろうか。

*****


 「ケーンケーン」
 山の奥深く。
 どこかで鳥の鳴き声がした。
 「お、キジか」
 猟師風の男が両手で持っていた猟銃をぎゅっと握りしめる。
 「メスでも探しているのか?悪いな、俺も女に会えないまま今夜を過ごすつもりはないんだ」
 男は、音を立てないよう、キジの居場所を探る。
 慎重に。慎重に。
 (いた!)
 木の陰に隠れていたキジの姿が見えた。
 このチャンスを逃すまいと、男は更に緊張感をもって猟銃を構えた。
 汗がにじむ。
 キジの方は、男の存在には気づいていないようだ。
 照準をキジに合わせ、頃合いを待つ。
 (今だ!)
 パーン。
 男が引き金を引いた。
 ガササササ。
 男の撃った弾はキジに当たることなく、キジは破裂音に驚き逃げて行ってしまった。
 「くそっ」
 男は苦虫を噛み潰したような表情になり、まただめだったか、と、落胆した。
 
 なぜこうもうまくいかないのか。
 実は、男は周囲の人間から猟が下手だと馬鹿にされていた。
 今度こそはと思ったものの、今回もうまくいかなかった。
 なぜうまくいかないのか。
 猟の上手い者に教えを請えばよいものを、プライドが邪魔をする。
 女たちにも見下げられる。

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