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『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.7 安倍仲麻呂

天の原 ふりさけ見れば 春日なる
     三笠の山に 出(い)でし月かも

安倍仲麻呂(第七番)

(日本語訳)
天を仰いではるか遠くを眺めれば、月が昇っている。あの月は
 奈良の春日にある、三笠山に昇っていたのと同じ月なのだなあ。


*****

夜道を歩いていて、ふと、空を見上げた。
 そこには美しい月があった。
 思わず立ち止まる。
 大きくて丸いが、まだ満月にはなっていないように見える。
いつもそこにあるはずなのに、こうやって改めて見てみないとわからない。思い出さない。
そういえば、昔見た月と一緒だ。
仲間たちと見た月。
彼らは、いまどこでなにをしているのだろうか。
疎遠となってしまったので、わからない。
自分から関係を切ったのだから仕方がないか……
昔を思い出す。
仲間とは、良いものだったのかもしれない。
しかし、いまはたった独りとなってしまった。
どこかで幸せになっている仲間を想って、目を細めた。
幸せに、なっていてほしい。
それは本当の願いだ。
昔を懐かしんでいる自分に気がついた。
いや、だめだ、仲間とのことはもう、過ぎたことなのだ。
そう思い直すと、月から目をそらし、再び歩き始めた。


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