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『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.10 蝉丸

 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

蝉丸(第十番)

(現代語訳)
  これがあの、京から出て行く人も帰る人も、知り合いも知らな
 い他人も、皆ここで別れ、そしてここで出会うと言う有名な逢坂
 の関なのだなあ。


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小さな呑み屋が好きだ。
普段知っている街でも、ふらふらと歩いていると、「おっ」というところに行き着く。
そういうところは、こう言っては失礼だが、決して小綺麗でもなく、どこもかしこもベタついている感じがして、とにかく狭い。
そこでは一見さんも、常連さんも、肩を並べて、というよりも重なり合わせて呑む。
店のおやじを筆頭に、酔っぱらいであっても憎めないやつばかりが集う。
気軽に声を掛け合う。
「ニイチャン、どっから来たんや」
とか言われる。
ぼくはこういう店を好んで選ぶので、こんなことも日常茶飯事。
適当に話して、気が済んだら次の店へ。
少し思いついたのだけれど、いや、ぼくはそういうところへは行ったことがないし行く機会も一生来ないとは思うけれど、豪華な立食パーティに似ている気がした。
気がしただけ。
身だしなみを整えなければ入れないようなところではなくて、誰でも立ち寄れるような、誰にでも話しかけられるような、この雰囲気が好きだ。
だから、堅苦しいのが苦手なぼくからしたら、とても居心地が良い。
ひとりで呑みに来ても、友人と呑みに来ても、こういう店は出会いと別れを自然と呼んでくれる。

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