わたしが公式マーク付きTwitterアカウントで「顔出し」したわけを聞いてほしい
緑が青々と輝く季節を迎えた春のころ。
私は「顔出し」をした。
上記は私が担当する「ロリポップレンタルサーバー」のTwitterアカウントに投稿したツイートである。
個人のSNSやこのnoteでも度々「顔出し」はしてきていたが、所属する会社の、いわゆる「公式」のSNS上でこういった投稿をしたのは初めてだったため、動画作成に至るまでには様々な葛藤があった。
不特定多数の方に顔を知られてしまうことへの抵抗感。to Cサービスの交流の窓口でもある場に私が出て良いのだろうかという不安感。偶然にも動画を見た生き別れの兄(富豪)から連絡があり、一生困ることないほどの財産と豪邸を与えられ、SNS担当者としてではなく深窓のお嬢様として一生を暮らさなければならなくなるかもしれないという憂い。
はあ……どうしよう、思いがけず生き別れの兄(富豪)と出会ったら……マルチバース世界を含めると、30億いるとされる私のファンが悲しんじゃうナ……
そんな煩慮に心を埋め尽くされながらも、なぜ私が公式マークの付く企業アカウントで顔をさらす決意をしたのか、またそこにどんな意図があったのかについて、綴っていきたい。
そして、お兄ちゃん(富豪)!連絡待ってます!
人はなぜ、企業の公式アカウントをフォローするのか
みなさんはTwitterなどのSNSアカウントで、企業の公式アカウントをフォローしているだろうか。
正直なことを言おう。私はほとんど企業アカウントをフォローしない。公式アカウントをフォローしたとて、好きなアーティストや著名人にとどまる。
私にとってのSNSは、「個」を表現する場という認識が強いからだと思う。
そんな私が企業の公式アカウントの「中の人」として、まずすべきことは「人気企業アカウント」の調査だった。人はなぜ、企業の公式アカウントをフォローするのだろう。その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった――。
上記は私が参考にしているTwitterアカウントの一部である。
どのアカウントもみなさんご存知の企業ばかりであろう。見ていただければわかるが、どれも「中の人感」が大変強く、むしろ「中の人の個人アカウント」として生息している(そしてよくバズっている)
そのことがよく表れている、ニッセンのツイートを紹介したい。
「ファッション通販のニッセン」というアカウント名を消して、アカウント名が「†舞子†」となっていても全く違和感がないことがわかるだろう。ニッセンのことなんか一切書いてない。「The 中の人感」ある企業アカウント。(子どもの頃、ニッセンの分厚いカタログみるの、めっちゃすきでした†)
上記のような発信からもわかる通り、おそらく上記の企業アカウントのフォロワーたちの多くは、その企業や商品の情報を知るためにフォローしているのではない。中の人の個の人柄に魅力を感じたり、「みんなが知っているあの企業のアカウントがこんなこと言っちゃうの!?」とおもしろがったりした先の行為がフォローに繋がっているのであろう。
つまり多くの場合、「企業アカウント」をフォローしているのではない。
「企業アカウントの個の部分」をフォローしているのではないだろうか。
もちろん、シンプルに企業のプロダクトのファンだから・お得なクーポンを配布しているから、といった理由でフォローしている方もいらっしゃるだろうが、それほどのメリットがない企業アカウントをわざわざフォローしている理由の多くはこういった「個」の魅力にあると私は感じている。冒頭にも書いているとおり、やはりあくまでもSNSは、「個」を表現する場という認識が強い方が多いからであろう。
企業側としては、公式アカウントに抱いてくれた「親近感」をその企業自体にも感じてもらえればSNS運営は成功だろうし、たとえSNS経由で直接商品を買われなくとも、潜在的なファンを増やすことに大きな価値がある。
OK!わかったわかった!要はいつも通り、Twitterやればいいってことでしょ??
よ~~~し、私も真似しちゃうぞお~~~!
確かにそこにはいたんですよね、彼氏。
四の五のいうのはやめよう。結果からいいます。
失敗の要因は様々あると思うが、一番は「ロリポップ」はターゲット層が明確な「サービス」のアカウントであるということが挙げられると思う。
先ほどあげた3アカウントは、ターゲット層が多岐にわたる企業アカウントである。そもそもが知名度も高く、老若男女問わず多くの方が商品を購入したり使用したりしていて、指名検索数も多い企業のアカウントだからこそ、SNSの「強い中の人感」は効果的なSNS運営方法なのだ。
さらに、SNSだけではなくテレビや雑誌など様々な媒体で宣伝することができる企業であり、SNSだけがPRの主戦場ではない。
しかしレンタルサーバーを提供する「ロリポップレンタルサーバー」は、そもそもターゲット層が明確(=ホスティングサービスを使って何かを行いたい人)である。他に宣伝する場所が少なく、SNSで中の人感だけ出してたら、サービスのことは何も伝えられない。
中の人感あるツイートはSHARPがやればいい。
私達はインターネット=魂を支えるから。
そう、「中の人感」は重要だが、それだけでは何かが足りない。
ターゲット層が限られているサービスは、どのようにSNS運営を行えばいいのだろうか。
さて、その話題に触れる前に少し横道には外れるが、私の中の人としての矜持のようなものの話をしたい。「フォロワーを増やすこと」について、恐れ多くも大先輩SHARPさんのツイートが素晴らしかったので引用したい。
私のひいひいおばあちゃんも言ってたのだが、やみくもにフォロワーを増やすためだけの施策は私もやりたくないと思っている。それは「ただフォロワーを増やすこと」が成功だと思っていないからだ。私がやっていることはあくまでも「ファンを増やすこと」であり、そもそもサービス運営の根本にある思想は「ロリポップを使っているユーザーのその先の人生が豊かになること」であるからだ。これは、ただ目先の数字にこだわったアクションとは相反する。この思想については、私のSNS運営の哲学にも関わるため、また後程触れていくこととする。
ターゲット層が限られているサービスのSNS運営
さて、ただただ中の人感あるツイートを楽しくやっているだけではだめだと気づいた私。ロリポップと同様に、全人類が対象ではないプロダクトを扱っているSNSアカウントを参考にすることにした。
PCパーツメーカーであるASRock Japanだ。
WAKARANE~~~!
全然わからない!マザーボードの型番全然わからない!でもちゃんとリプライはとんでいる。しかも正解者いた。マジか。わかるんかこれで。
このアカウントのすごさは「ニッチであることを恐れていないこと」である。そしてターゲット層の方々にちゃんと有益な情報を届けて、中の人とフォロワーが「一緒に」楽しんでいるのがわかる。中の人はきっと、自分の会社はもちろんパソコンのことがだいすきなんだろう。
そう、ターゲット層が限られるサービスのSNSアカウントで大切なのは
ターゲット層が限られたSNSアカウントに居心地の良さを感じてもらえるのは、オープンな場だけど、仲間意識が強く、「見えてる」クローズドな場なのではないだろうか。
その場合、「中の人感」だけでは足りない。サービスをもっと愛して快適に使っていただけるために必要な有益な情報を提供することが大切なのである。
というわけで、ガラッと方向転換。ひとまず有益な情報をたくさんツイートすることにした。
マスコットキャラクターであるロリポおじさんを使って、「ロリポ豆知識」としてよくある質問を連載形式でツイートすることにした。
有益。確かに超有益。マジでみなさんWordPress簡単インストールに失敗するときは「.htaccess」とか「.ftpaccess」とかが同一階層や上位階層にないか確認してくださいあと元々WordPressがインストールされているところにインストールしようとすると失敗すああああああそういう話がしたいんじゃないんですこの記事
まあそんなこんなで、有益な情報たくさんツイートしてみたわけなのだが
お分かりですよね。この豆知識ツイート、「親近感×有益な情報」じゃない。
だって、全然中の人感も親近感もないんですもの。ロリポおじさんの画像使ってるだけでロリポおじさんっぽくないし。
さて、どうしたもんか。中の人感を出しすぎず、有益な情報を提供し、「ロリポップにしかない」個性を出すには。
「顔出し」をすることにしたわけ
中の人感を出すには、様々な方法があるだろう。
名前を出す、日常をツイートする、妄想彼氏を紹介するなど。実際どれもやってみたが、レンタルサーバーっぽい有益な情報と、そういった中の人感あるツイートが入り乱れている「ニッチなターゲット層向けアカウント」って一貫性がなさすぎる。情緒が不安定すぎる。私よくも公式アカウントで妄想彼氏紹介したな。馬鹿かよ。
※現在上記キャンペーンは終了しております。
このように、本当に本当に紆余曲折あり、中の人感を手っ取り早く出すために、「顔出し」することを検討しはじめた。
レンタルサーバーというちょっと小難しそうなITのサービスの中の人の「人間っぽさ」を高め、「こういう人が運営しているんだな」と認知してもらうことは、ロリポップをより身近に感じていただくのに効果的ではないだろうか。
そう、私がサービスのひとつの「顔」になろう、そう思ったのだ。
さてここで、総務省が公開している「平成27年版 情報通信白書」よりSNSの利用率及び実名利用率のデータを紹介したい。
少し古い資料のため、この時よりはTwitterの実名利用は増加していると思うが、それでもこと日本でTwitterを利用する際、その「場の匿名性」に価値を見出している方が多いように思う。
それは企業アカウントにおいても同じで、中の人が「顔出し」をしているケースはそう多くないように感じる。
だからこそ、顔出しすることは一つの個性になるかもしれないと感じた。
でもここで、私の心に一つの言葉が浮かんだ。
そう、顔出しって超怖い。ルッキズム的な考え方は本当に嫌いだが、だがしかし、私が顔出ししたことでフォロワーがめちゃくちゃ減ることもありえるかもしれない。正直本当に悩んだ。めちゃくちゃ悩んだ。
公式アカウントの中の人顔出しを成功させるにはどうしたらいいんだろうか。
企業公式アカウントの「顔出し」で工夫したこと
ズバリ、「親近感×有益な情報」のバランスに注意することだ。
「顔出し」はそれだけですでに中の人感に満ちているため、顔出しがノイズにならないよう、それ以上は強く中の人感を出さず、「顔出し」した際には有益な情報を発信することに徹する。そのバランス感を大切にすることで、フォロワーが減ることなく親近感を持っていただき、ユーザーにとって役立つ発信をすることができるのではないだろうか。
そうして顔出し動画を投稿しはじめた結果、エンゲージメント率やインプレッション数が大きく向上。SNS運営をはじめて10ヵ月ほど。ようやく手ごたえを感じる結果を出すことができたのだ。
「親近感×有益な情報」のツイートはたしかに、ロリポップを使っているユーザーやホスティングサービスを利用したいと考えている方に届きはじめている。
正直なことをいうと、SNS運営をしていく中で、失敗したなと思うことも、うまくいかないと感じることもたくさんある。こうした「顔出し」をはじめて間もないため、不安がないとはいえない。だがこうした試行錯誤の中、いつの日かロリポップらしい個性のあるSNS運営のスタイルを確立していければいいなと思っている。
私がすきなロリポップは「ただレンタルサーバーを提供するサービス」ではない。「人間味あふれるあたたかいサービス」である。
そう感じているからこそ、ユーザーとコミュニケーションをとりやすいSNSという場で「顔出しする」ことになったのは、とても自然なことだったようにも思う。
SNSの中の人としてどうありたいか
私は自社のサービスが本当にだいすきだ。
インターネット黎明期、ロリポップを使ったかわいいサイトを見ては「ホームページを作ってみたい」と思い憧れていたサービスこそがロリポップだ。インターネットで表現するすべての人を応援する力を持った、本当に素敵なサービスだと思う。
そんな大好きなサービスを運営する私は、ユーザーにどんな価値を提供できるのか。
「サービスを使ってもらう」だけではない。
「サービスを使ったその先」にある「ユーザーの人生が豊かになる」ためにサポートすることが、ゴールなのだ。
「お店のサイトを作った方が、そのお店をより繁盛させることができた」「アフィリエイトサイトを使って収入を得ることができた」
サービスを利用した方の生活をイメージして、より豊かにする。それを実現させる一助となることが、現在インフラともいえるサービスとなったレンタルサーバーを提供する者の使命ではないだろうか。
SNS運営をしていて気づかされたことの一つは、想像していた以上に、ロリポップユーザーはロリポップを愛してくれているということだった。
そう、ロリポップは、ユーザーと共に成長してきたサービスなのだ。
だからこそロリポップSNSは、インターネットで表現するすべての方の「伴走者」として、親近感のある立ち位置でわかりやすい情報を発信し続け、ユーザーと共に成長し続けたい。
私はそんな、SNSの中の人であり続けたいと思う。
……ところでお兄ちゃん(富豪)、連絡まだですか?
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