任天堂の強さの秘密
こんにちは!あやなです。
2020年も残りあとわずかですね!
さて今回で10回目です!前回はブレイクタイムとして振り返りの会にしましたが、意外にも多くの人に読んでもらってうれしかったです〜
さて今日は、株式会社 任天堂を取り上げたいと思います。
特に、今年のニュースで任天堂の記事をよく見かけた気がします、、。
巣篭もり需要からのSwitchやあつ森の爆売れ、、!話題がたくさんあった企業です。
お察しの通り、直近の決算は凄まじいことになっています。
巣篭もり需要からのSwitchやあつ森の爆売れの影響もありますが、日本でも時価総額9位を誇る企業です。また、ゲーム業界は経営を続けることが難しいと言われている中、任天堂はどう生き残り、勝ち筋を描いてきたのか?
その点に注目します!
目次はこちら〜
1. 任天堂について
さて!まず基本情報から〜
任天堂株式会社
・創業は1889年で、花札やトランプの製造を開始したことからスタート。
・ファミコンやゲームボーイといったこれまでになかったゲーム機を開発し一気にヒット
・2019年通期売上は、1.31兆円で日本のゲーム業界だったらNO.1
・「人々を笑顔にする娯楽を作る会社」でありつづけ、任天堂IPに触れる人口の拡大、すなわち任天堂が作るキャラクターや世界観により多くの方に触れてもらうことが目標
次に任天堂の事業について。
主に4つの事業で構成されています。
1. ハードウェア
2. ソフトウェア(自社ソフトとサードパーティー)
3. デジタル(パッケージ併売ダウンロードソフト、ダウンロード専用ソフト、追加コンテンツ、Nintendo Switch Online等の売上高)
4. モバイル・IP関連(スマートデバイス向け課金収入、ロイヤリティ収入等)
1〜3が決算資料の項目のゲーム専用機にあたり、4のモバイル・IP関連の売上はごくわずかです。
ちなみに、直近の決算FY2021の2Qまでの累計を見ると、海外の売上が全体の77.5%を占めます。意外にでかい。特に米大陸の売上が厚く、Switchが国境を越えて支持されたことがわかります。
そして、ここ10年間の売上と営業利益を見てみましょう。
まず、前提に、ゲーム業界での経営はかなりリスクのある「バクチ経営」だと言われます。
なぜか?
–作り出したハードのゲーム機やソフトゲームがヒットすれば、売り上げは伸びる。
–コケれば途端に売上は下がる。
–例えヒットしたとしても永遠には続かない。一般に、6年前後の製品ライフサイクルの家庭用ゲーム機は、ライフサイクル後半にかけて市場が成熟化し、売り上げも利益も落ちてくる。
–これまでの発売から4年後くらいから売上が落ちる傾向に。「4年目のジンクス」今年はSwitchが発売から4年目だが、、
つまり、不安定な経営を強いられます。
任天堂の売上と営業利益推移を見ると、視覚的にもよくわかります。
2012年度〜2017年度まで著しく落ち込んでいます。
そして2018年度から勢いを急に取り戻しています。
まさに、売れたゲームとこけたゲームが影響していて、
2010年ごろまでは、ニンテンドー3DS (2004年発売)やWii (2006年発売)がどちらも販売台数1億を突破しヒットしました。
しかし、2012年に発売したWii Uが大コケ。1356万台しか売れませんでした。前作の1/10ほどです。
しかし、苦悩の末に2017年に発売したSwitchが大ヒットし、復活しました。
Switchの現在の販売台数は6830万台ほどらしく、、1億台を突破したら本当の大ヒットです。
不安定な経営ではあるのですが、ハードウェアやソフトウェアが売れまくって、ブランドの信頼に繋がるとLTV(Life Time Value = 顧客生涯価値)はグッと伸びます。家に任天堂のいろんな時代のゲーム機がある人も多いのでは?
信頼が作れて、利益を生み出せる仕組みさえ整えば基盤は強そうです。
任天堂は時価総額が日本企業の中でも9位で高い評価を得ている企業です。
それは任天堂がリスクヘッジをとり、かつ利益を生み出す事業戦略を持っているからです。
2. 直近の任天堂の決算は?
じゃあその戦略って何?ってことですが、
その前に直近の決算の何が凄まじいのかみて、具体的にどの数字が任天堂の強みなのかをみてみましょう。
3つ凄まじい点を取り上げます。
①売上が前年比+73.3%。
凄まじい伸びです。
②売上総利益率が前年比+8.4pt,で56.4%
売上層利益率だけ見ると、売上はかなり増えているのに、原価が下がっている単純に考えたら不思議なことが起きています。
原因は下の表にあるようにハードウェアよりもソフトウェア(特に自社ソフト売上とデジタル売上)の販売量の割合が増えたからです。これがどう言うことかものちに説明します。
③売上販管費率も前年比-8.3ptで18.5%に下げている。
営業利益率が前年比、+16.7ptで37.9%の驚異の数字
3つ取り上げましたが、特に、
売上総利益率56.4%と営業利益率37.9%の高さが目立ちます。この数字は、過去最高水準です。
ハードウェアを製造しておきながら、この粗利の高さはかなりです。ソフトウェアだけなら可能かもしれませんが、、。
また、他社ゲームメーカーの営業利益率と比べると任天堂の高さも伝わると思います。
営業利益率 他社(2021年上半期)
・Sony ゲーム・ネットワークサービス 20.7%
・バンダイ 14%
・セガサミー 営業赤字
任天堂は、利益率の高い経営体質を作れていると言うことです。
3. 任天堂の事業戦略
本題です。任天堂の事業戦略の特徴を5つ取り上げます。
①潤沢な現預金
②ファブレス経営
③ハードで普及させ、ソフトで利益を獲得する
④サードパーティーではなく、自社ソフト開発に注力
⑤広告宣伝費の少なさ!ブランド力がすごい
一つずつ説明していきます。
①潤沢な現預金
任天堂の自己資本比率は85%以上あります。
これは高い水準です。自己資本比率とは、全ての資産のうち自社が持っていていつでも動かしたり使うことのできる資本がどれくらいあるかと言うことです。総資本は自己資本と他人資本(負債)で構成されるので、自己資本の割合が大きいほど経営の安全性が高いと言えます。
業界やビジネスモデルによって、どのくらいが適切なのかは差がありますが、60%~70%あると理想のようで、任天堂はそれを超える高い割合であることがわかります。
冒頭で、ゲーム業界は不安定だと言う話をしましたが、やはり発売するゲームが売れるか売れないかの世界でもあるので、売れなかったときのリスクに備えて自己資本比率を高めているのだと思います。
②ファブレス経営
ファブレス経営というのは、製造や組み立ての工場を自前で持たないことを言います。対照的なのは、自社の工場を持ち、全てを管理するSPAモデルのユニクロやニトリ。このファブレス方式をとっていて有名なのはAppleです。
任天堂は、自分の工場を持っておらず、開発段階では任天堂で細かく設計をしテストはするものの、製造部分は協力会社に一任しているんです。
もちろん自社で製造した方がコスト削減になる部分もあると思います。
しかし、任天堂の場合ある一定期間で製造するものが変わってきますよね。その都度体制や部品を取り替えていくと、その方が時間と費用の無駄遣いになるので、製造部分だけは依頼しているんです。こちらの方式を取った方は経費が削減できるんだと思います。
また、
•特殊な技術を使った高価な部品を使わず、世界中で使われている部品を使用する
•組み立ても複雑ではなく、低コストで大量生産できる作りにしている。
この辺りに力を入れているようです。
もちろんユニークな技術を取り入れているとは思います。しかし、どこでも手に入る部品とシンプルな構造で設計することにより、低コストで大量生産する戦略を取っています。
SonyのPL4を思い出してください。PL4の方が、映像技術などが高度な仕上がりになっているイメージが強いです。任天堂はその点で勝負するよりも、いかにハマれる面白いゲームを作れるかに注力している気がします。
③ハードで普及させ、ソフトで利益を獲得する。
任天堂は主にハードウェアとソフトウェアを売っています。現状の決算では、ハードとソフトの売上構成比はほぼ半分ずつです。
Nintendo Switchの2017年3月期〜2020年3月期の資料を参考に販売台数を引っ張ってきました。
ハードウェアの伸びは鈍くなるも、ソフトウェアの販売本数は急激に伸ばしています。
任天堂はハード→ソフトの順で売ろうとしますし、ソフトの方が大量に売れるように戦略を組みます。
なぜか?
ハードよりソフトの方が利益率の高い商品だからです。
ハードの方が、できるだけユニークにでも低コストで作られているものの、ある程度の価格はしてしまいます。しかし、ハードを買ってもらわない限りはソフトは売れないので、利益率は低くして販売しているのではないでしょうか。ハードウェア・ソフトウェアの利益率までは調べられなかったのですが、単純に考えればこの戦略が予想できます。
なので最初の数年はハード販売に強化、それを追って追い越すようにソフトウェアの数も増やして販売を強めていく。2019年〜2020年度の変化だけでも、かなりその違いが見られるようです。
④サードパーティーではなく、自社ソフト開発に注力。
売上総利益率が上がった要因に、自社ソフトの売上高比率の上昇が挙げられています。
ソフトウェア売上というのは、任天堂が作ったゲームと他社が作ったゲームの売上で構成されています。このゲームを作ってくれる他社のことを「サードパーティー」といいます。
現時点でスイッチのソフト販売本数の80%が任天堂製ソフトです。数年前と比べてもこの割合が増えてきているようです。
なぜか?これも、自社ソフトを作って売った方が利益率が高いからです。
サードパーティーが作ったソフトが任天堂で販売し売れた際には、もちろんロイヤリティ収入を任天堂が得ることになります。
サードパーティが開発したソフトの場合は、ロイヤルティ収入が売上の10〜20%程度にとどまるりますが、自社開発ソフトの場合は、小売の流通コスト20〜30%を引いた70〜80%程度が収入となるんです。
これに対してソニーのPS4のソフト市場でソニー製ソフトの比率は20%未満です。かなり違いますよね。
任天堂はマリオやどうぶつの森など確固たる人気と知名度を誇るブランドが存在しますから、自社で開発した方が満足度もクオリティも利益率も高いのではないでしょうか。
デジタル売上高もソフト売上高に対して、割合を増やしてます。ソフトのデジタルダウンロードはパッケージやカセットの製造や流通のコストもカットされるので、特に利益率が高いんだと思われます。
⑤広告宣伝費の少なさ!ブランド力がすごい。
広告宣伝費の割合に注目で、最新の決算では1Q〜2Q累計で307億。
売上の4%にしかならないんです。日本だけでなく、海外でもあれだけ売っているのに関わらずこの小ささはすごいなと思います。
これまでの任天堂の努力の賜物の数字だと思います。冒頭でも若干触れましたが、ゲームメーカーは顧客の信頼を勝ち取って、うまくいけばLTVの長い商品です。しっかりハードを普及させ、抜群に面白いソフトゲームで顧客のハートを掴んだ証拠ですね。
任天堂のゲーム機やソフトを知らない人はほぼいないでしょうし、何度かコケたりしてますが、多くのヒット商品を生み出してきた企業です。Switchで高い期待にも答えより顧客の信頼を作ることができたのだと思います。
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以上で5つの事業戦略を述べてきました。5つのサマリです。
①潤沢な現預金
→自己資本比率は85%と高い水準。不安定な経営であるからこそのリスクヘッジをしっかりとっておく。
②ファブレス経営
→自社で工場は持たずコストカット。また部品もコモディティ化&構造もシンプルなゲーム機を開発し低コストで大量生産。
③ハードで普及させ、ソフトで利益を獲得する。
→利益率の高いソフトウェアを最終的には多く売れるように、ソフトウェアの販売数を増やしていく。
④サードパーティーではなく、自社ソフト開発に注力。
→自社でソフトウェアを開発し売った方が利益率が高い。
⑤広告宣伝費の少なさ!ブランド力がすごい。
→顧客の信頼を勝ち取れればLTVの長いメーカーに。ハードを普及させ、面白いソフトゲームでハートを掴んできた!
この5つが、一か八かの不安定な状況な中でも、任天堂がリスクヘッジをとりつつ、利益を生み出す経営体制が作れている秘密です。
4.任天堂の今後の伸び代はどこにある?
最後に!任天堂が今後、今の水準を保ち続けるためにはどうしたらいいのでしょうか。伸び代を大きく2つ考えてみました。
①利益率の高い分野のユーザー普及率を高める
ーサブスク、Nintendo Switch Onlineの会員を増やす。2019年末で1500万人ほどの会員数。それに対し、ソニーは4000万人ほどいるらしく、まだ伸び代がたくさんある。
ーデジタルダウンロード率を増やす
ースマホゲームの売上増加。スマートデバイス向け課金収入、ロイヤリティ収入はまだ全体売上の3%しかないので、ここを取っていく。
②Switchのコンパクト化
ーSwitch Liteの販売量を増加
ースマホへのBluetooth接続とかできたら◎
Switch本体の売上は発売から4年目を迎えることと、巣篭もり需要が落ち着くことから下がってくると思います。なので、新たなコンテンツを利益率の高い商品である、Nintendo Switch Onlineのプラットフォームや、スマホゲームで展開していくことが次の戦略かなと考えてみました。
任天堂の今後の動きに注目です!
本日は以上〜