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花束みたいな恋をした


超絶ネタバレ

てっきり『運命の出会い→幸せな結婚』みたいなベタな恋愛ストーリーだと思っていたので、たとえ脚本が坂本裕二であってもスルーしていた。

紆余曲折あって別れを選んだ菅田将暉と有村架純が元サヤに戻ることを匂わせて物語は終わるが、
菅田将暉が社二病(厨二病の亜種)に罹患する描写がとても怖かった。

モテないという一点を除けば、菅田将暉の演じる『麦くん』は、モテキの『幸世』と同類の人間だ。
フィッシュマンズや岡本靖幸、真心ブラザーズを聴き、いしいしんじや堀江敏幸を読む。
麦くんはきのこ帝国と今村夏子が特にお好きなようであった。

そういう人間が、そういう人間がだよ、
いくらブラック企業に就職し、労働に喜びを見出したからといって、
今まで愛していたそれら全てから興味を失い、
『人生の勝算(熱い感じのビジネス書)』を読むだろうか。

完全に、麦くんという人格の『死』だ。

そんな彼から気持ちが離れ、イベント会社のイケメンパリピ社長であるオダギリジョーと軽い浮気をする有村架純(絹ちゃん)。
労働に目覚め、娯楽といえばパズドラぐらいの麦くんと、働きながらも好きなものは好きでい続ける絹ちゃん。

喧嘩が増え、一緒にいる時間は減り、しまいには会話のネタもなくなり、相手に対して何の感情も抱かなくなる。

しかしね。

知人のお葬式に黒い服で共に駆けつけ、おめでたい席には共に盛装してお祝いする。
会話は減ったにしろ、5年間の、大小様々な思い出を共有している。

籍を入れていないだけで、この2人は『熟年夫婦』と何ら変わらないと思った。

麦ちゃんと絹くんの別れ話の最中、別れを決意していたはずの麦くんが、『夫婦ってそんなもんなんじゃないの?』と涙ながらに復縁及び婚姻を訴えていた。
そんなもんだと思う。

別れ話をしていたファミレスに、かつての自分たちとほぼ同じ雰囲気のサブカルチャーカップルが現れ(羊文学のライブで出会い、崎山蒼志も好きだという2人。設定が細かくて一貫している)、過去を思い出して2人は泣き、結局別れを選ぶ。


ここで冒頭のシーンに戻り、お互い別の相手とデートをしているが、なぜかその日は2組とも夕食は共にしなかったようで、家でお互いを思い出しながら自分で作った簡単な夕食(絹ちゃんはレトルトカレー、麦くんはパスタ)をしているシーンで終わり。


社二病大絶賛罹患中の菅田将暉は怖かったが、険悪ながらもお葬式や結婚式に共に正装して出席している2人を見たときは、『なんか良いな』と思った。色々あるけどこれで良いじゃん、と。

対象年齢がよく分からない作品。
でも、まあまあ好きだ。

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