当時の日記より61@2009 10/28
もう現実にきちんと向き合おうと決めた。姫(母)は間違いなく認知症を発症している。
先日15kgの新米が届いた直後、別の友人から野菜と一緒に新米が届いた件。姫は米嫌いだし、二人で到底食べきれる量ではないからご近所さんに配ってきてと言った。どの人にどの程度差し上げるかは姫が決めた。そして我が家の分として残ったのは1kg程度。
とはいえ、15kgのほうは手つかずなのだから全く困らない。
その1kgの米をめぐって騒動が起きたのだ。
それを廊下の段ボールの上にぽんと乗せた。後にふと見ると無くなっていた。あれ?と思ったけれど、姫が置き場所変えたのかな程度で特別気にもせず。
姫は毎食後、大量の薬を飲む。それをひとまとめにして袋に入れ管理しているのは私だ。夕食のあとそこから薬を取り出そうとして驚いた。袋の底へ隠すようにして米が入れられていたから。
怒っても仕方ないし、冷蔵庫のチルド室に入れた。
昼食後の家事も全て終わり、2Fにあがってのんびりしていると階段が辛くてめったに上がってこない姫が血相を変えてやってきた。
「お米を何処にやったのよ!」
「冷蔵庫に入れておいたよ」
「もっとあったはずよ、何処にやったの!」
「姫に言われた通りご近所さんに配ったよ」
「いいのよ、それで!!」
肯定しながらなんで怒ってる?そして更に続けた。
「たいそう喜んだでしょうね。あんなに気前よくあげちゃったんだからっ」
なんでここまで米に執着するのか分からない。怒りを私にぶつけまくってから1Fに戻っていった。
玄関のたたきに冷蔵庫に入りきらない野菜を無造作に入れている段ボールがある。野菜を取り出そうとして驚いた。その中からさきほど冷蔵庫に入れた米が出てきたから。もう怖い、何も言わない。
夕食を食べている時
「(15kgの)米袋、場所を移動させてよ。あれじゃ日が当たるわ」
「分かった、あとでやっておく」
入浴中、廊下からなんだか気味の悪い音が響いてきた。そしてそれが米袋をひきずった音だと分かって驚愕。
姫は体重40kgを切っていて、今では2リットルのペットボトルさえ持てない。その姫が15kgの米袋を移動させてしまったのだ、怒り狂いながら。
「私は頼んだことをすぐやってくれないと頭にくるのよ!」
言い出したら絶対にひかない、一つ気になるとそのことで頭がいっぱいになってしまうアスペルガーの姫。それでもここまでひどくはなかった。
そうか。アスペルガーが認知症になると、要求に一刻の猶予もなくなるのか。
思えば予兆はあったのだ。退院してきた日
「次の入院の時に着て行くお洋服はどれがいいかしら」
と言い出した。
「そうだね、あとで上から服持ってくるから選んだら?」
何気ないやりとりのつもりだったが、突如昼食を中断して2Fに上がって服選びを始めて唖然とした。
またある日は昼食の最中に荷物が届き、中身は何かとあまりにもしつこいので
「野菜って書いてあった。食べ終わったら中身確認するよ」
と告げるが納得しない。
「野菜が何なのか一つずつ名前を挙げてよ」
「いやいや、送り状に野菜としか書いてないもん。食べ終わったら自分で開けて見てみたら」
するとまた箸を置いて荷物に近づいた。
私は幼少期、食事の作法について厳しくしつけられた。その当人がこのありさま。頭にきて
「行儀が悪い!」
と声を荒げると慌てて戻ってきた。それほどまでに抑えが利かなくなっているのだ。
世間一般の『自分の親が認知症になったなんて思いたくない』という感情ではない。この期に及んで更に私に苦労が課せられるのかという絶望感。そこを認めたくなくて葛藤していた。
もう抗えない。この人は認知症だ。
私はどこまでこの人に苦しめられる?どこまで追いつめられる?神様なんていないんだな。
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