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当時の日記より65@2009 11/8

私の父は1993年に倒れました。一度は退院したものの、再び倒れ亡くなったのは2007年のこと。一方姫(母)は2006年に肺癌が発覚。なので2006~2007年の1年間は両親同時介護という生活をしていたのです。この頃、父の主治医に言われた言葉がずっと私の中に残っています。

父が亡くなる半年ほど前からまだら呆けの症状が現れるようになった。どう対処していいか分からず手を焼いていた時に主治医から声をかけられた。

「人は同調という仮面をかぶって、多少自分を押し殺して周囲に合わせて社会生活を送る訳です。高齢になるとその仮面が外れちゃうんですね。だから年寄りはわがままというより、本来の性格が突出したというのが正しい解釈かと思います」

言われた私はその時しみじみ思ったのだ。『仮面の外れちゃった父とそもそも初めから仮面がついてない姫の世話に明け暮れてるんだ、私って』と。

今さら思う。姫にはそれなりの仮面がついていた。そして今こそ本当にその仮面が外れたのだ。

見栄っ張りだったこともあるけれど、とにかく何でも気前よく人に振舞うのが好きな人だった。本人も「自分の食べる分が無くなったとしても、差し上げた人が美味しいって喜んでくれたらまた差し上げたくなる」と言っていた。

そんな姫はもう何処にもいない。

疲れている時は甘いものだよと友人が自宅にわざわざお菓子を届けてくれた。ところが消費期限が翌日で大慌てで食べたと、その夜に電話をしてきた姫に話した。

そして今日病院へ行くと開口一番

「お菓子どうしたの?」

と尋ねられ

「だから大慌てで食べたよって話したじゃない」

「そういうことじゃないわよ!私に聞かせるだけ聞かせておいて、持ってきて食べさせてあげようって気持ちの欠片もないわけ?今日必ず持ってくるもんだと思ってた。全部食べた?へぇぇぇー」

衝撃だった。こんな卑しい発言を聞いたのが初めてだったから。

田舎から届く荷物だってウニを筆頭に「誰にもあげるな、全部私のもの」の時も相当驚いたけれど。

この突きつけられた現実をひとりで受けとめなくてはならないのが重荷で苦しい。

いつまでこの生活が続くのか。


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