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当時の日記より79@2009 12/28

散歩でも行こうかと車椅子を出したところで荷物が届いた。巨大発泡スチロールの中身は鮭の切り身、たこの足、ホタテ貝10枚、イクラ2箱、あわび、ホタテの貝柱(え?じゃ全部貝から外してくれればいいのに)他にも色々。

頭に来るを通り越し無言で悩んでいると姫(母)が一言。

「卯月は私のお友達から荷物が届くのが気に入らないのよね。いっつも嫌そうな顔するもの」

姫は本当に問題の本質が見えない人だ。これを何処にしまえと。うちは業者じゃない、普通の家庭だよ。ごく一般的な冷蔵庫だよ、分かってる?

「その嫌そうな顔を見せられるのがイヤなのよ。冷凍庫に入れておけばいいことじゃないの」

我慢していたがここでキレた。

「ねぇ、うちの冷蔵庫は週に何箱も届く荷物でパンパンなの。簡単に言うけど、入ってるものを出さなきゃ無理なの。食べないでしまってるだけの何かを捨てなきゃ入らないよ」

すると今度は『捨てる』と言う言葉だけ拾ってかみつく。

「卯月はいつだってすぐに捨てる捨てるって。どうして食べ物を大切にしないのよ!」

「食べ物粗末にしているのは姫でしょ」

同じことを何度も言わされて不愉快。

12/29

昼食に焼きそばを作っていたら

「焼きそば?いらないわ。病院でしょっちゅう出てくるの、食べたくないわ」

作ってる最中に言われても。だいたいお昼は麺類じゃなくてはダメだけど、そうめんとうどんとそば以外にしろと言われて驚いたが、本人は本気で言っている。焼きそばは大好きだ。病院と卯月が作る物は美味しさが違うから焼きそばが良いと言いながら、出せば食べ飽きてる、嫌だと。

頼むもういい加減にして。

さつまいもを蒸かして出し、食後の薬を無事飲ませた。じゃ、散歩にと車椅子を出したタイミングでまた荷物。姪からタコとホタテが届いた。もう私は何も言わない、顔色も変えない。そのほうがよっぽど姫はビビるようだ。

12/31

強風の大晦日。昨日の散歩はあてどなく住宅街をあちこち。いつも同じ景色では飽きるだろうと気を利かせたつもりだったが最初の体験がマイルールとなる姫にはそれが不服だった模様。

「スーパーに寄れるいつもの散歩コースに戻してよ。お金が使えない散歩は楽しくない」

結局それか。

「うん。じゃまた来年ね」

「今日行きましょうよ」

「だってこの風だよ。車椅子押すの大変だよ」

「でもこの時間はお散歩って決まってるでしょ」

いや、あなたが勝手にそう決めてるだけでしょ。本当に融通がきかない。人の気持ちが分からない。私が大変だとはどうして考えが及ばないのか。

また1年が終わる。2006年の春、余命三か月と診断された姫は今日も存命だ。



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