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当時の日記より66@2009 11/12

昨夜トイレで倒れたと連絡があった。しかし本人曰く

「トイレで具合が悪くなっただけで、意識失ったわけじゃないわよ。ちゃんと自分でナースコールしたんだもの。それから後のことを覚えていないだけよ」

もー、あんたバカでしょ。それを意識消失って言うんです。

師長と少しお喋りしたが、認知症かどうか疑わしいとのこと。そして作話への対処は、間違いを指摘するほどに相手はヒートアップしてしまうので『出来うる限り、聞き流せ』と。

出来ない!

自称味覚障害の姫(母)が、その状況を軽減する技を自分であみだした。それは「酢」だ。もともと酸っぱいものが好きだが、今は病院での食事にあれこれとかけている。そうすると味覚障害が和らぐのだとか。まぁ、なんでもいいんだけど。しかしその量が普通じゃない。一週間かそこらで360mlのお酢一本を使い切ってしまうのだ。

無くなったと騒ぐので買って届けた。私には軽口を叩ける仲良しのナースが沢山いるのだが、みんなが口々に言う。

「姫はさぁ、腰に手あてて酢を飲んでるんじゃない」

とか

「妊娠したんじゃない?」

とか。

あなたもう言われ放題です(笑)

この頃の治療法は経口薬のタルセバと点滴のアリムタをダブルで使用していました。タルセバはとても合っていましたが、何しろ強力な薬で副作用がひどく、日常生活に支障をきたすほどだったため中止に。ただしアリムタ投与だけでは効果が弱い。そこで副作用の出方を医師が見守りながら時々併用という形を取っていたのです。タルセバはこの頃臨床データが少なかった。姫は手指のあかぎれ以外に突然顔が真っ赤になるという謎の副作用も起こしていました。他の患者さんには見られない症状で病院も対処のしようがなく、ただ冷やすだけ。その赤い病(勝手に命名)の最中に総回診があり、10名近い医師が初めて見たと脈を取ったり顔にぴたぴた触れたりと大騒動になったそうです。

そのことを私に説明していた時、いつもの悪いクセが出た。

「教授の一人が『なんとか脈』って言ったの。小さな声で。あれは絶対に不整脈に違いないわ。私は今度は心臓の病気になったのよ。だって言われてみればなんか心臓の調子がおかしいもの。だから総回診のあと看護師を呼んで問い詰めたんだけど、そんなこと聞いてないの一点張りで。あとから担当医が来たけど、心臓の病気なんかありませんって嘘ついたのよっ」

私には予想がつく。「頻脈」って言ったに違いない。知らない医師に取り囲まれて緊張して脈が速くなっていたんだろう。「脈」だけを拾って大騒ぎしているだけだ。

医療チームには報告するとみんな爆笑。

「卯月さんってほんといつも冷静だよね。それ絶対頻脈だわ」

いやもう疲れる...。




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