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当時の日記より84@2010 1/12

変化が恐怖のアスペルガー。考えを変えられないその性質は常にもめごとを起こす。加えて問題は自分以外にあると思い込んでいるから私は悪くない、私以外の人が悪いという結論を出してしまう。我が家の場合、その一番の対象は娘である私に向かうのだ。

姫(母)はスリッパを履かない。私はヒールのあるものしか履かないし似合わない、というマイルールのせいだ。そして病院という他人の目があちこちから注がれる場所でキレイに見せたいという気持ちも強い。大きなリボンが足の甲に施されたサンダルタイプの室内履きはヒールのあるタイプで、姫はそれがとてもお気に入り。しかし血をつけてしまったのだ。(タルセバ副作用で指先があかぎれ状態になるのだが、手だけではなく足も同様。そこが切れて出血した)

同じサンダルを買い、それは捨てるように言ったがそこでキレた。

「卯月はそうやってなんでも捨てる捨てるって無駄遣いばかり。まだ新しいのよ、なんで捨てなきゃならないのよ。家で履きますからっ」

待ってー。それじゃ室内を土足で歩き回ってるのと同じことなんだよー!

姫にとって捨てる行為は変化と認識。つまり自分のところへ入ってきたものは全てが我が家にあり続けるのがスタンダードと捉えてしまうらしい。

退院中、どさどさ届く荷物を私は玄関先で開封し、その中身だけをいちいち姫に見せに行く。それは何故か。箱ごと見せたらその箱が我が家にあることが当然だと認識してしまうから。

姫が真っ先に反応するのは中身じゃなくて箱なのだ。以前は箱ごと室内に持っていったが「あっその箱捨てないで使うから」となるのに気づいた。箱だけじゃない。「あっその袋」「あっそのヒモ」見せなければそれで済む。

そもそも物に対する執着が昔から強い人だった。脳転移によって引き起こされた記憶障害はその状況に拍車をかけた。物を所有するという思いが尋常ではなくなったのだ。

この先、どこまで記憶障害は進むのか。いつまで生きているのか。私はただ不安でたまらない。もう疲れている。

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