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当時の日記より108@2010 5/19

夕食にあまり手をつけず、しばらくしてお腹が張ると言い出した姫(母)。少し横になるとベッドへ。

なんだか胸騒ぎがした。夕食を終えると少し2Fでのんびりするのだが今夜はキッチンに待機。

退院してからほんのわずかだが毎日便通があるとカマグは服用していない。でも気になるから飲むとうるさいので飲ませた。すると今度はこんなにお腹が膨らんでいるのは何故だとしつこく質問。知らないよ私医者じゃないんだから。

何気なく

「おしっこはちゃんと出てるんでしょ」

この一言がアスペルガーの姫をパニックに陥らせてしまう。

「何なの?どういうこと?おしっこ出ないとこんな風にお腹が膨らむの?何の病気なの?腹膜炎?」

お腹が膨らむイコール腹膜炎というのが姫の辞書に書かれているらしい。そこから私は腹膜炎になったとエンドレスで聞かされる。一つ気になるとこの現象、もううんざりだ。

「水分が足りていないかも知れない。お湯に梅干しを入れて持ってきて!」

二日酔いかよと思いつつ、面倒なので言われたままに従った。

2度程トイレに立つが少ししか出ないと。このまま聞かされ続けては私が滅入るので

「ガスでも溜まってるんじゃない。おなら出せば治るよ」

「私はおならしないの。出ない体質なのよ」

どこぞのアイドルだよ、もう知りません勝手にしてください。

不安が募る一方の姫はお腹がどれだけ膨らんでいるか確認しろとパジャマを下げた。医者じゃないんだってば!と思いつつ見るとガードルを履いていた。

今日まで一体何十回ガードルの件を注意してきたことか。ダメだと言われてもマイルールは変えない。それがアスペルガーだと分かっていたって腹立たしい。

「ガードル履くなって言ってるよね。お腹苦しいってお腹締め付けてバカみたいだと思わない?」

布団の中でごそごそ脱いで

「はい」

と手渡された。ムカつく。

そしてまたトイレへ。

「すごい出た」

「そう。一件落着だね」

と思いきや

「下痢するかも知れない」

とまたトイレに。もう嫌な予感しかない。今度は下痢で腹痛に襲われてまた意識失うんだよ、絶対そうだよ。

案の定トイレの中から助けを求められるいつものパターン。

「気持ち悪い、吐きそう。洗面器」

私は一体何回直面しているのだろう。躊躇なくドアを開け放つと顔色がとんでもないことになっていた。あぁダメだなと思った瞬間痙攣しはじめてよだれ垂らして。私が泣きたい、こんな対処もう嫌だ。

それでも私しかいないのだ。いつだって、何だって私がひとりでどうにかしてきたんだから。

逃げ出したい気持ちに反して過去の経験を蘇らせる。手前に倒れたら便座から落ちて何処か打つ。下手するとまた肋骨を折る。タンク側に片手で押さえつけ転がらないようにする。

案の定意識を失い脱力。30秒もすれば意識は戻るだろう。本人がタンクに自力でよりかかる力が戻ったら救急車を呼べばよい。

ほどなく意識が戻り「いい。まず深呼吸して。血圧がいきなり下がったから意識を失ったの。もう大丈夫だから。」会話は出来ないが応答が明確になったところで本人一人で座らせてダッシュで電話。

明日から入院なのに病院へ事情説明をし今夜から受け入れて貰えないか談判。許可が出たので今度は119番。子供の時からアテにならない母親と暮らしてきた代償は、的確に素早く対応出来ることかも知れない。

お腹が膨れてる云々の段階で既に夫へはメールで「嫌な予感がするから来て欲しい」と連絡済み。

救急車到着までの数分で入院の荷造りをした。

夫の車に犬を乗せ、私は姫と一緒に救急車。病院へ到着するとたまたま帰っていなかった主治医と廊下でバッタリ。

「え?何してんの?」

先生が驚きすぎてため口になってる。僕が説明するとわざわざ夜間当直医のところに出向いてくれた。全て落ち着いたのは真夜中。

もう限界だ。命に関わる重要な決断を迫られるのはいつも私ひとり。父の時だってそうだった。姫が倒れる場面に何度出くわしたとしても人間が意識を失っていくさまをつぶさに見せられるのは気分のいいものじゃない。そしてその事態にいつ遭遇するかも分からず、24時間耐えがたい緊張状態の日々をもう4年。

投げ出してしまいたい。




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