きっと今日が雨だから

仕事を終えてオフィスを出る。傘をさしながら歩く駅までの距離。肌寒いなあと感じるのは、雨だからなのかな。

ついこの前まで夏だったのに。
気がついたらもう9月も終わろうとしていて。

だんだん深まる秋に、いよいよ近づいてくる冬。日が暮れるのがどんどん早くなっていて、季節の移り変わりに、なんだか少し焦り気味になってしまう。

寒い時期が来れば、わたしはお気に入りのこのお家から出なければならなくなる。

大きなキャリーバッグひとつだけを持って、上京してきたのが2年半前。

初めてのひとりぐらし。何もない部屋に、実家から持ってきた折りたたみ式の小さなテーブルを置いて、寂しく1人でご飯を食べるところからスタートしたわたしの社会人生活。

家具を置いて、棚を買って、絨毯を敷いて。少しずつ、少しずつ、自分のおきにいりを集めて作った大切なわたしのお部屋。

このお部屋に住めるのも、残りわずか。

お気に入りの銭湯。行き過ぎて常連と化した海鮮丼屋さん。何曜日はどこが安い、袋は○円、情報を網羅してニーズに合わせて使い分けられるようになった近所のスーパーたち。
慣れ親しんだこの町も、もう少ししたら出て行かなきゃいけない。

なんだか、少し寂しい。いや、とっても寂しい。

退寮のその日まで、残りあと数ヶ月。

次はどの町に住もうか。そんなわくわくよりも、落ち着くこの町を離れないといけないことの寂しさの方が大きくなってしまうのは、きっと今日が雨だから。

ぽたぽたと聞こえる雨音に耳を傾けながら、しんみりしてしまった夜。

濡れてしまったパンプス、明日の朝には乾いてるといいな。

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