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【詩】ほほづき

ほほづき

鮮やかな赤色に染まった
ほほづきの実が いくつも
通りすがりの軒先に
昭和のような風情でなっていた
3Dのハートみたいに膨らんだ萼が
優しい形で周囲を癒し微笑みながら

人生の過渡期に沈み
真っ暗闇の耐え難い辛さで悶えていた時
必死の願いを込めて頼っても
助けてくれなかった相手が
目の前で苦しみ縋り付いてきた手を
振り払うことはできなかった

様々な頼まれごとは続き
でき得る限りを尽くしたのち
やっとの思いでそれ以上を斥けたら
酷い人だと罵られた  
憎しみを吐き捨てるような言葉の矢
胸の芯がぴりんと壊れそうになった

たぶん最初から分かっていた
後出しじゃんけんされるみたいに
それでも困っている人の力になるべきだと
己の中の古い常識を捨て去る勇気がなかった
さもなくば自分も幸せにはなれない
どこかで聞いた戒めに迫られながら

何より大事に守るべきは
純粋な自分自身だった
がんじがらめのこだわりと俗識 
思い込みの檻から いつか
解き放たれる未来を目指して前を向き 
愛を諦めずに生きていく

傷付いても受け止められる心に稔り
とことん寄り添えるようになるまで

あの華やかなほほづきの萼
ひとつひとつに包まれた中には
橙色に熟した小ぶりな果実が
空気ごと艶めく誇らしげな命で
瑞々しく息づいているに違いない

自らの萼に守られ
凛と美しく佇みながら
平安と愛に満たされた心で


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