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【詩】いにしえの水のように

いにしえの水のように

愛はいにしえの水
いつも身近に見えていて
身心を潤し癒し清めてくれる
気持ちいい遊び相手
生命体の六割以上を満たし
誰もが常に必要とする恵み
空から降ってきて
地上でばらばらになっても
川を流れ海で合わさり  
やがて皆また空に戻って行く
蒸気と化し空気中で見えない時も
優しく私達を包んでいる

人々は天に雨を乞う
地球に恵みをもらえるように
時に許しを乞う
嵐を静めてもらえるように

現代の人々は
ボトルに入った飲み水をお金で買う
良い悪いと区別する
水の営みはずっと変わらないのに
技術の発展の代償に
限りあるものになった
大事さを忘れて
なおざりに過ごした代わりに

いつか天に帰っていく
ある水滴は地上に降りてすぐ陽光を浴び
ある水滴は川を流れている途中で
ある水滴は濁流となって翻弄されたあと
ある水滴はやっと辿り着いた海の凪で穏やかに過ごしてから
あるいは
暗い底で息を潜め身動きもできず長い時間を過ごしてから

いつか天に帰っていく
水滴は
地上の命を自分で絶つ術はない
水を生き切るしかない

もともと生まれも死にもしていない
姿を変えながら
自らのサイクルを淡々と繰り返す
水はただ水として
命のためだけに生きる
愛のように

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