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ママのイライラの裏側

3歳の娘さんがいるママからの相談を受けました。 『夕食の片付けをしていたんですけど、急に居た堪れなくなって相談に来ました。娘には些細なことで怒ってしまうし、夫に対してもイライラが酷くその感情を隠すのにまた疲れます。絶対になりたくなかった自分の母親のようになって来ている自分が嫌です。夫は娘を可愛がるし、土曜日には必ず夕食を作ってくれます。私たち夫婦は共働きですが、私は家に帰ってからも家事が山のようにあります。夫が帰ってくると夫が何かしたわけではないのに、テレビを見ている彼に何とも言えない不満を感じます。夫にも『最近イライラしてるよね』と言われます。私母親・妻として失格なのでしょうか?』

可愛い子供に恵まれ、夫はいいお父さんで家事を土曜日にしてくれる。周りからも『いい旦那さんだね』と言われる。自分のお父に比べたら何倍も家族のことを気遣ってくれる夫。だからイライラしている自分がおかしい。私は感謝するべき。といった感じでしょうか。


ママの長ーいTo-Doリスト

家事や子育ては目に見える仕事だけではないです。特に子育ては常に先を予測して準備することを要します。夕食の片付けをしながらこの相談者ママの思考を想像してみました:

『明日は雨が降りそうだから、後で傘と長靴も用意しとかなきゃ。あ、長靴がもうそろそろキツくなりそうだから近いうちに新しいのを買わないといけない。雨が降ったら近所のXXちゃんのママは車運転出来ないから、私が朝XXちゃんも乗せていくことを遅くなる前にXXちゃんママに連絡しておこう。雨だと園の外遊びは無くなるから、園だよりを読んで持ち物を確認しないと。お迎えの後歯医者さんがある。夕飯はXXとXXを作るから、歯医者さんの後に買い物に行かなきゃ。夕飯の買い物のついでにトイレットペーパーも買う事を忘れたらいけない、、、と延々と続く。そして常に『しなきゃいけないこと』のセンサーが稼働しているため『やることリスト』が空になることはほぼ無く、頭は休むことを知りません。

家族みんなの生活がスムーズにいくために、詳細に渡る様々な物事を計画したりマネージすることを感情労働と呼びます。家事とかHome Economicsも同じ部類に入ります。見えない仕事・役割の事ですね。

想像してみて下さい:お母さんが土曜日のご飯だけして、普段は仕事から帰ったらテレビを見ている姿を。お父さんが子供の保育園・習い事・歯医者や医者の予約・パパ友付き合い、家族の誕生日のこと、ご飯の献立・買い物、、、を全て受け持っています。こういう家庭はありますが、とても少ないです。男性の方が給料の良いキャリアがある事が多いから、というのも理由の一つかも知れませんが、妊娠・出産・授乳という女性しか出来ない大変な役目を果たした後も家事子育てを全般任されているワイフは、会社で男性社員と対等に仕事をするにはかなり不利です。

『いや、僕は子供の歯医者にも習い事もお迎えも時間が空いていればなるべくやるよ』というパパも多いと思います。でもそれは単発的なことの上に、歯医者や習い事はその前にリサーチがあり、予約を入れたりと裏で感情労働が伴います。

なぜ感情労働は女性の仕事になるのか:男性のご機嫌伺いをするように社会から教えられている女性達

私の亡き祖父は夜食にバターをたっぷり塗ったパンとブラックコーヒーを飲むのが習慣でした。それを祖母は毎晩祖父の食べるペースなどを確認しながら準備していました。TVで野球を観ている祖父にトーストとコーヒーを出してキッチンに戻ってくると(祖父にとっては自動的に出てくるものの様で、前に置かれても祖母にありがとうも言わない)、小学高学年の私に祖母が『女性はね、いつも家族の太陽でいないといけないのよ』とニコッとして言ったのをよく覚えています。

お父さんの機嫌を害さない様にと気を遣っている母親を見て育った人も多いのでは無いでしょうか。

大学の飲み会では、おしぼりやビールのお代わりなど『早く気が付く』女の子がモテて、『いい奥さんになるね』と褒められますよね。そして今の時代でも女性はこの褒め言葉が欲しいがために気が付く女を知らず知らずのうちに演じます。職場では男性社員と上司のご機嫌取りも仕事の一部です。

女性は周りからの外見や女らしさに対する評価を(特に男性からの)自分の価値だと思っているところがあります。その結果、自己評価を自分で設定し、自己実現の目標を高く持つプライドをなかなか持ち合わせない、又はそれに気づくのに時間がかかります。

気づいた時には毎日の家事と人の世話と気遣いに追われ、自分は一体どんな人間だったのか、どんな事が好きで楽しいと感じていたのかが分からなくなって来たりしませんか。他人の感情を優先すると自分らしさを次第に失っていきます。


いちいちお願いするのが疲れるのよ

『頼んでくれたらやるのに』と夫は言う。いや、いちいちお願いしなきゃいけないのがしんどいし、頼む時も『またイライラしてる』と思われたくないから言い方にも気をつけないといけない。頼まないと気づいてもらえないことにも孤独感を感じます。だから情けない気持ちを呑んで掃除機をかける、おもちゃを片付ける、洗濯を畳む、、、。こうして鬱憤は溜まっていく。

もうずっと前のジェネレーションから周りのハーモニーを保つため、自分の意見は後回しするように育て上げられてきた女性は、時代が変わってもそれがDNAに組み込まれているため、『あなたが喜んでくれればそれで良い』という美徳を唱え続けます。


感情労働ができる事でより豊かな人生になる

こういった類の話をすると、男性を敵に回している様に勘違いされがちですが、私がフェミニズムを語るときはその反対です。私にも大切な息子がいます。彼らがもっと感情労働できる様になれば、彼らの人生はより豊かになると確信しています。なぜなら感情労働は共感力がないとできないからです。『男だからどうせ出来ない』と最初から期待されていないと成長しない → これはこれからのボーイズを育てる母親の課題でもあると思います。

男性にとっても『男だから』のステレオタイプにいつまでも縛られているのは息苦しいですよね。大切な人のお世話をする事は、その人との繋がりを深める事です。これからもっと多くのボーイズが感情労働を通して人生をより豊かなものに出来ると良いですね。

子育てのご相談はホームページからご連絡ください。
https://www.proparents.club


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