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浅田次郎「マンチュリアン・リポート」を読んで/本の話

浅田次郎の「マンチュリアン・リポート」を読んだ。

 かれこれ、2年くらい積読していた。気になりながらずっと積んでいた。なんとなく読む気になれなかったのは、読む前から悲しくなることが分かっていたから。
 
 これは蒼穹の昴シリーズの10冊目に当たる本で、一つ前の長編「中原の虹」の最後に起きた、英雄爆殺事件の真相に迫る物語。この爆殺されてしまった英雄というのが、またかっこいい人だった。アウトローなヒーロで、知れば知るほど、好きにならずにはいられないキャラクター。浅田先生の筆力には畏れ入る。
 だから「中原の虹」の最後で、その英雄が爆殺されて終わったことに、当時かなりショックを受けたのだった。
 なので、その事件の真相に迫るこの「マンチュリアン・リポート」は気になりながらも、なかなか読む気になれなかった。読んでしまったらあの英雄の死を受け入れなければならない気がして。


 でも同時にずっと気になってもいたので、そろそろ潮時かと思ってついに手に取った次第。
 結論からいうと、それほど悲しくはならなかった。「中原の虹」には登場しなかった新たな登場人物の目線で書かれいたからだ。その新たな登場人物が、第三者として事件を調査し、依頼主に報告するレポートという形で物語が進んでいく。客観的な目線が多いので、没入感はそれほどなく深く感情移入せずに読めたのでした。
 様々な人の証言から明らかになる、英雄爆殺事件の真相。その中で映し出される英雄の生き様は、最後まで鋭い輝きを失わない。自らの死を予感しつつもその傑物を貫く一本の線は少しも撓《たわ》むことはなかった。
 そんな潔い終わりだったと分かり、胸が熱くなった。自分の流儀や美学を貫ける、芯のある姿は心をうつ。やっぱりこの人好きだなぁと思った。

読めてよかった。

蒼穹の昴シリーズは、まだ続きがある。
長編「天子蒙塵」と中編「兵諌」。

近いうちに読みたいと思う。


浅田先生、ほんとすごい。筆舌に尽くしがたい素晴らしい物語。

本は面白いな〜。

栫彩子(カコイアヤコ)関西が拠点のフリーのフローリスト。

店舗を持たず、受注制作でアレンジ・花束を制作し宅配便でお届けしています。書くことも仕事にしたい。趣味は読書と3DCG。


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