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《世界史》灰色の枢機卿リシュリュー

こんにちは。
Ayaです。
アンリ4世の死によって、マリーは息子ルイ13世を摂政として補佐することになりました。遠縁のカトリーヌ・ド・メディシスのようになるかといえば、意欲的にも能力的にも不可能でした。

リシュリュー枢機卿(1585〜1642)

最初は夫アンリ4世の残した重臣たちを留任させたマリーでしたが、そのうちイタリア人のコンチーニという人物を重用し、人々の顰蹙を買いました。これはすでに成長していた息子ルイ13世にとっても同じで、リシュリュー枢機卿に出会うと、1617年コンチーニ殺害とマリーの幽閉を命じます。マリーは次男を連れて逃亡しますが、リシュリューのとりなしで息子と和解します。この時にルーベンスに注文して作成させたのが、24枚にも及ぶ『マリー・ド・メディシスの生涯』です。

『マルセイユ上陸』
24枚にも及ぶ『マリー・ド・メディシスの生涯』の一枚。生誕から結婚、出産、摂政、息子との対立と和解について取り上げている。亡夫アンリ4世の連作絵画も作成されるはずだったが、マリーの失脚で頓挫する。

ですが、リシュリューが権勢を握り始めると、仲介してくれた恩人であるはずの彼を疎ましく感じ、今度はリシュリューの失脚を画策します。この陰謀はすぐに発覚し、誰にも弁護されず、フランスから追放されます。そのまま放浪の人生を送り、1642年亡命先のケルンで客死します。
小煩いマリーを追放して、ルイ13世のもとで絶対王政の基盤を築いたリシュリューでしたが、問題を抱えていました。

リシュリュー枢機卿の三面像
私利私欲のない人物として、後世の人々から称賛された。


アンヌ・ドートリッシュ(1601〜1666)

ルイ13世のもとにはスペインのフェリペ3世王女アンヌが嫁いでいました。リシュリューは反スペイン政策を行なっていましたが、アンヌはこれをすべて母国に通報していたのです。
さらに問題だったのが、ルイ13世とアンヌの夫婦仲の悪さでした。アレクサンドル・デュマの小説『三銃士』では仲の良い2人ですが、実際は冷めきった仲でした。これはルイ13世の同性愛嗜好のためと言われています。
アンヌは当時でも一二を争うと言われた美貌でしたが、同性愛嗜好のルイ13世には何の効果もなく、3回の流産で完全にアンヌを見限っていました。一方で、アンヌは恋多き女性としても有名で、結婚から20年以上たった1638年に待望の男子ルイ(後のルイ14世)を出産した際には、王の子ではないとの噂が流れました。
結局王が狩りの帰りに大雨に遭遇し、避難した王妃の城で2人が一夜を過ごした時のこどもとされました。きっとリシュリューがルイ13世の性的嗜好から世継ぎを得るのが難しいと考え、アンヌの不倫を黙認したか、信用できる男性を引き合わせたのでしょう。まあ公表通りルイ13世のこどもの可能性もありますが。
後年このルイ14世の出生の噂は、『鉄仮面の男』につながることとなります。

ルイ13世妃アンヌ・ドートリッシュ
美貌の恋多き女性で、若い頃にはバッキンガム公爵に言い寄られた。晩年にはリシュリューの後継者マゼランと愛人関係だったと言われている。

1640年には次男フィリップ(後のオルレアン公)も生まれますが、あくまで兄ルイに何かあったときのスペアとして出産したのでしょう(兄弟の争いを抑えるため、フィリップは度々女装させらましたが、そのうち女装を好むようになります)。
1642年リシュリューが亡くなります。終油の儀式で『汝は汝の敵を愛しますか』と問われると、『私には国家の敵のほか敵はなかった』と答えたと言われています。自分の後継にはイタリア人枢機卿のマゼランを指名していました。
半年も経たないうちに、今度はルイ13世も崩御します。享年41歳。未亡人のアンヌは、4歳のルイ14世を抱え、マゼランとともにフランスの統治に取り組むこととなります。

今日はここまでとします。
日本史で実子と対立した母といえば、織田信長の母土田御前や伊達政宗の母義姫がいますね。この2人は先端を行きすぎて問題児の息子に家の将来への不安を感じ、ほかの息子を後継にしようとしたといえるでしょう。同じようなマリーですが、彼女の場合、息子が自分の意見を聞かなくて頭にきたので他の息子を擁立したという感じが強く、あまり同情できないですね。最近流行りの『毒母』に近いような気がします。
問題母マリーと宰相リシュリューに挟まれ存在感が薄いルイ13世ですが、ヴェルサイユ宮殿のもとの狩小屋を建てたり、若ハゲ隠しでかつらを被ったり、息子(かどうかは置いといて)のルイ14世に影響を与えています。ルイ13世は暗殺とも言われていますが、その暗殺方法が浣腸薬に毒を仕込むというものでした‥。あんまり認めたくないような‥。

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