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《聖書-6》イスラエルの誕生

こんにちは。
Ayaです。
今日はイサクの息子・ヤコブについてまとめます。彼がイスラエル民族の祖となります。

ヤコブ

イサクは縁戚のレベカと結婚し、エサウとヤコブという双子の男子をもうけます。
エサウは活発な少年に成長し、イサクからの愛情を受けていました。一方ヤコブはおとなしい性格で、イサクからは愛されず、母レベカに愛されていました。母レベカのヤコブに対する愛は偏愛に近く、エサウではなくヤコブを跡取りにしようと画策します。
エサウは体毛が濃い体質でした。ここに目をつけたレベカはヤコブの腕に毛皮をまとわせ、すでに盲目となっていたイサクを騙して後継指名をさせようとしました。この計画は成功し、イサクは誤ってヤコブを後継者に指名する誓いをたててしまいました。当然ながらエサウは激怒、ヤコブは母レベカの兄のもとへ逃亡することになります。
この逃亡の最中、ヤコブは不思議な夢を見ます。天まで届きそうな大きな梯子を天使たちが上り下りしているのです。

「私はあなたの父祖アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたがいま横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える」
創世記28-13

という神の声で目が覚めました。ヤコブはこの夢を吉夢と考え、この場所を『天の門』と名付けました。

ミヒャエル・ヴィルマン『ヤコブの梯子』


姉妹の確執

母の兄のもとで働いていたヤコブは、その娘のラケルと恋仲になりました。ラケルとの結婚を認めてもらおうとしますが、ラケルの父はヤコブには財産がないので認めてくれません。ヤコブは懇願し、『7年間無償で働けばラケルとの結婚を認める』との言葉を引き出します。
7年経ち念願の結婚が許されると思ったヤコブ。初夜を過ごして相手の顔をみると、なんとラケルではなく、その姉のレアだったのです。レアはラケルほどの美人ではなかったので、押しつけられたのです。
伯父のもとに抗議にいくと、さらに7年ただ働きすれば、ラケルとの結婚を許すというのです。さすがにラケルを哀れと思ったのか、結局ラケルとの結婚はすぐ許されました。こうしてヤコブはレアとラケルの2人の妻をもつこととなったのです。

ロセッティ『レアとラケルの幻影を見るダンテ』

この顛末のせいで、ヤコブはラケルしか愛さず、レアは蚊帳の外に置かれていました。この状態を神は哀れに思い、レアには何度も子どもたちを授けました。一方、ラケルはその兆しがありません。次第に姉への嫉妬を抱くようになったラケルは自分の女奴隷ビルバをヤコブに差し出します。アブラハムの妻サラの項でも書きましたが、当時女奴隷は女主人の所有物であり、格好の『代理母』だったのです。ビルバは男子を2人出産し、ラケルの意地は守られました。
今度はレアが反撃にでます。自分の女奴隷ジルバを差し出したのです。ジルバも妊娠・出産し、レアとラケルの姉妹の対立はさらに強くなっていきます。
そんなある日、レアの息子がコイナスビを見つけました。このコイナスビは出産の効果があるとされていた植物です。ラケルはなんとしても手に入れたいとの思いで、姉レアに頭を下げます。レアにしてみれば日頃の冷遇への怒りもあり、2人は言い合いになります。お互いに言いたいことを言ってスッキリしたためか、2人はなんとか和解しました。
執念が実ったのか、ラケルはやっと妊娠・出産しました。

ヤコブの子どもたち

では、ヤコブの子どもたちについてまとめます。
1.ルベン(母レア)
2.シメオン(母レア)
3.レビ(母レア)
4.ユダ(母レア)
5.ダン(母ラケルの女奴隷ビルバ)
6.ナフタリ(母ラケルの女奴隷ビルバ)
7.ガト(母ラケルの女奴隷ジルバ)
8.アシェル(母ラケルの女奴隷ジルバ)
9.イサカル(母レア)
10.ゼブルン(母レア)
11.ディナ(唯一の女子。母レア)
12.ヨセフ(母ラケル)
13.ベンヤミン(母ラケル)
総勢13人の子どもたちです。この後もっと複雑な経緯がありますが、この子どもたちが『イスラエル12支族』の祖先となるのです。

イスラエルの誕生

さてたくさんの子どもたちに恵まれたヤコブでしたが、未だラケルたちの父親に使われている身でした。ラケルの兄弟も彼を敵視しており、さすがに辛くなってきたヤコブは帰郷への思いを抱きました。妻たちを説得し、家族と奴隷を連れ、財産を持って旅にでます。
この旅の最中、何者かに襲われ、格闘します。この格闘になんとかヤコブは勝ちますが、相手は正体を明かさずに去ってしまいます。

ポール・ゴーギャン『説教の後の風景』
説教後人々の前に現れたヤコブと天使の幻想をえがいている。

のちに相手の正体は神に命じられた天使だったということがわかり、ヤコブは神から『イスラエル(神と戦う人)』という名を授かりました。
さて、故郷にたどりついたヤコブは、兄エサウに恐々と贈り物を持ってあいさつにいきます。エサウは昔のことは水にながし、ヤコブを歓迎しました。こうしてヤコブの帰郷は果たされたのでした。

イスラエル人とユダヤ人の定義

ヤコブが授かった『イスラエル』という名は彼の子孫たちに引き継がれ、現在では国名となっています。
では、私たちが彼らを呼ぶときに使う『ユダヤ人』との違いはなんでしょうか。
そもそもユダヤ教というのはユダ王国の滅亡(B.C.585)後バラバラに離散したイスラエル人たちの宗教として成立しました。ユダヤ教を崇拝する人々という意味で『ユダヤ人』という呼称が生まれたとされています。
あくまで彼らの自称は『イスラエル人』であり、『ユダヤ人』は他の民族から呼ばれていた言い方という理解が一番手っ取り早そうです。

さて、ヤコブについてはここまでです。人類最初の殺人事件のカインとアベルといい、聖書に出てくる兄弟は必ずと言ってもいいほど対立します。エサウさん過去のことを水に流すなんていい人と思いますが、聖書の世界ではあまり好まれないようです。やはりあれだけ過酷な土地では、ヤコブのように狡猾に生きる方が好まれるみたいです。まあ彼の場合、母リベカが主犯のようなものですが。
ラケルとレアの関係は、レアが可哀想ですね。夫には好かれず、子どもたちをたくさん出産するのは辛いものがあります。当時子どもができないと離婚される可能性もあったのでラケルとしては気が気ではなかったでしょうが、にしても図々しいような気がします‥。もっとも2人を平等に扱おうとしないヤコブが一番悪いような‥。
兄と対立して苦労したヤコブですが、彼の子どもたちもまた対立することとなるのです。


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