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異世界キャンプ チートはなくても美味しいものがあれば充分です

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「モンスターしか食べるものがないんだけど!」  ピクシーのリリは叫ぶ! 川雲百合、リリが人だった頃の名前だ。 ある日の仕事終わり、急に目の前がフッと真っ暗になると、魔道士に目的…
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2022年3月の記事一覧

14話、討伐隊(8)

 ピエェーーー!!

 風が弱まったからなのか、何度も切りつけていたからなのか、金切り声を上げたロック鳥の脚が片方落ちる。
 しかしロック鳥は逃げるように飛び上がり、天高くまで飛ぼうとする。
 しかし何故かあまり高くまで飛べない、そのまま魔法石にブーストされたクリスタの跳躍により追撃を右翼に食らった。

「間に合いましたわね」

 クリスタの攻撃が当たったと同時に、クラウディアとアンがロック鳥の前

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14話、討伐隊(7)

 クラウディアは訝し気な顔を直ぐに戻すと、真剣に答える。

「魔力もそこそこ戻りましたし、風の精霊を呼びますわ」
「遠くない?」
「精霊魔術は距離が自由なのよ」
「ふーん、そんなもんなんだ」
「それに、あちらもそろそろ援護が必要でしょう」
「それはそうね」

 リリはクラウディアの言葉を聞き、改めてロック鳥の方を見る。
 上手く飛べていないロック鳥だが、ラーナに対しては掴みかかるような動作はしてい

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14話、討伐隊(6)

「ダメだ、来る! リリは日記もって待ってて」

 そう言うと、ラーナは日記をリリに投げ渡し、懐から小瓶を取り出しグイッと飲み干す。
 そして傍から見たら怪我をしてしまいそうなほどの、物凄い勢いで崖を降りていった。

「ラーナ、待って!」
「リリ様、戦闘は避けられない、そうラーナは判断したのでしょう」
「行きなさいクリスタ、依頼者に死なれては困るわ」
「クラウディア様の御心のままに」

 軽い会釈を

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14話、討伐隊(5)

(ラーナの鞄を持ち上げるのは無理、でも日記の一つぐらいなら)

 ズルズルと日記を鞄から引っ張り出すと、飛んでいるときに邪魔にならないように、リリは日記と自分とを紐で結んだ。
 本は立てた状態にして、自分には肩と腰の2箇所を通すように。
 一度飛び上がり、一度持ち上げてみる。

「っん!」

(イタタタタッ紐が食い込んで痛ったーい、でも我慢すればなんとか持ち上がりそう)

 持ち上がることを確認し

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14話、討伐隊(4)

 キュイ、キュイと鳴くロック鳥に紛れてリリの耳には会話が聞こえる。

「キキュイ、オカアサン」
「キュイ、エサヲモッテキタ、キキュイ」

 鞄の中で身を震わせ丸まるリリのもとに、聞き慣れない声が聞こえてくる。

(聞き取りづらいけど、もしかして誰かが助けに来てくれたの? こんなとこまで?)

「エモノ、オオキイ、タイヘン?」
「バシャ、オーク、マモッテタ」
「オーク?」
「タタカウヒト、オーククル

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14話、討伐隊(3)”料理パート”

【オニオンスープとバケット】

「っえ、バケットなんてあるの? そんな高いパン、ボク初めて食べるよ!」

 思わずラーナがテンション高めに反応をした。
 そして屈託のない満面の笑みで、お礼をする。

「ありがとう、クリスタ!!」

(初めて食べるバケット! テンションあーがるー)

「お礼は私に言うべきではなくて? 私の所有物ですのよ?」

 ラーナのテンションに水を差すように、クラウディアがそう

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14話、討伐隊(2)

 一方その頃、馬車の中に隠れるリリ。
 外にいる巨大な鳥の雛に怯えながらも、ラーナの鞄の中で、まだ丸くなっていた。

(どうしよう、どうしよう、このままここにいて良いの? それとも逃げるべき?)

「ここ、何処なんだろう? 雲の上なのは分かったけど……」

バサァ、バサァ

 急にものすごい勢いで風が吹き、馬車がグワングワンと揺れる。

(んんー!? なに、なに?)

 リリは鞄ごと宙に浮きそうな

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12話、ストーンフラワー(4)

「出来たよ?」
「あ、ありがとう」

(ラーナの無表情って怖いわー)

「リリの言った通りにしたけど、確かに切り落とした部分は食べられそうにないね」
「や、やっぱりそうよね……ほかは大丈夫そう?」
「うん、美味しそうな匂いだね!」

 リリは凍り付いた、笑顔だがラーナの目が笑ってない。
 その笑顔のままラーナはイヴァに問いかけた。

「それと、イヴァ?」
「なんじゃ?」
「ボクの分も、お酒出してく

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12話、ストーンフラワー(3)

 そのまま暫くは、ラーナが種を集めては、酔っぱらいのイヴァが収納魔法で詰め込む収穫? を100発ほど続けた。
 すると急にストーンフラワーの勢いが無くなってきた、リリには心なしかストーンフラワーが疲れているように見えた。

(終わりかな? もう少し欲しかったなぁ……)

 すると急にストーンフラワーが大きく膨らみだした。

「あいつら逃げる、イヴァ弓!」

 ラーナは何かを察したのか、イヴァに指示

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12話、ストーンフラワー(2)

「ここだねっ!」

 カルラ・オアシスの街並みがまだ遠目に見える程の距離で腰に手を当てラーナが仁王立ちする。
 そこかしこに大きな岩石が転がっている街道、馬車が通れるように岩を退けただけの舗装もないずさんな街道。
 後ろにはジョッキを片手に酒を飲む二人とリリがラーナを見ていた。

(なんでソフィアエール飲みっぱなしなの?)

「ソフィアはなんでついてきたの? ギルドで飲んでればよかったじゃない」

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14話、討伐隊(1)

 サウエム荒原には、スカイロックと呼ばれる大きな岩山がある。
 天を突き抜けるほどの大きな岩山だ。
 登っている五つの人影がある、中腹はだいぶ先に通り過ぎたのであろうか? 人が二人程度なら通れるほどの道なき道を進む一行は足場を確認しながら確実に歩みを進めていた。

 ハァ、ハァ、ハァ……

 メンバーはラーナ、イヴァ、クラウディア、クリスタ、アンの五人。
 珍しい組み合わせ、やはり誰が行くかを選ぶ

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