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2022年1月の記事一覧
9話、サウエムサンドワーム(3)
ドドッ、ドドドッ、ドドッ……
荷台をガタゴトッと大きく揺らし、大きな馬車が荒原を疾走する。
「もうすぐ?」
リリは、ソフィアに目配せをし聞いた。
ソフィアは直ぐに気づき、答える。
「この岩を回り込んだら、旋回して停止するよ、君たちの好きにすればいいさっ」
「わかりました……ラーナ?」
「……」
(あれっ? ラーナ、もしかして震えている?)
「どうしたの?」
「飛び出したいの、我
9話、サウエムサンドワーム(2)
リリやラーナがまったりと馬車に揺られていたその頃……。
豪華な刺繍の入った真っ黒なローブに身を包み、身の丈ほどの杖を抱えた少女が荷馬車に揺られている。
御者をする人族の商人ドミニクが、荷台の少女に声を掛けた。
「イヴァお嬢ちゃん、もうすぐカルラ・オアシスにつくから、荷物の準備をしておいてくれ」
彼女はイヴァンナ、薄い黒褐色の肌、ダークグレイの髪、尖った耳をしたダークエルフの少女だ。
9話、サウエムサンドワーム(1)
「あっちの大きな岩を超えた所! 急いだほうがいいと思う」
「オークちゃん、どうしてだいっ?」
「これと同じ匂いがする、普段は土の中にいるんでしょ?」
「じゃあ、すでに襲われている人がいるってこと!?」
「オークちゃん! それは本当かいっ!?」
ラーナの言葉に二人が反応する。
「たぶん」
「あーなんてことだ、肝の匂いがするってことは、そのサンドワームは傷を負わされている、急がないと、せっかくの
SS、ラーナ髪を切る
「髪を切りましょ!」
ピクシーのリリが声を上げた。
「急にどうしたの? せっかく長くてきれいな金髪なのに、邪魔になっちゃった?」
「そうじゃないわ!」
「違うの?」
「ラーナの髪よ!」
「ボクの?」
ラーナは自分の腰まである髪を、手で触る。
確かに手入れは、ここ暫くしていなかったので、ボサボサに感じる。
「んー、確かに邪魔だねー」
ラーナは一言そう言うと、おもむろに髪を束ねた。
8話、クエスト受注(8)
やり取りを静かに黙って見ていたラーナが、ソフィアに答える。
「1つ目は普通に無理! 2つ目の保証はしない! とりあえず、知ってることを教えて」
「オークちゃんが聞きたいのは、どんな内容だいっ? 私が答えられることかなっ?」
「サンドワームの狩り方と弱点」
「ほーう、前向きだねっ!」
「早く教えて!」
ラーナの言葉に、ソフィアは目を輝かせて答える。
「弱点はあえて言えば頭だねっ、狩り方は音
8話、クエスト受注(7)
野次馬の奥から人を掻き分けて、リリ達の知らない女性が声をかけて来た。
それはもう、十年来の友人であるかのように馴れ馴れしく。
「オークちゃん、本当かい? それは、ほんっとーに助かるなぁ! わざわざ真っ昼間に、うるさいギルドに来た甲斐があったってもんだよ、いやー私はホントーに運がいい! っな、そう思うだろ君たちも」
近づくだけでエールの匂いと薬草の匂いを漂わせている、馴れ馴れしい女性。
8話、クエスト受注(6)
「おぉい! お前、ハイ・オークだってぇ?」
「「……」」
(面倒なことになってきたなぁ、無視しよ無視)
「なぁんで、この街にいるんだよぉ?」
(マジでだる絡みしてくるじゃん、誰か止めて……)
リリが気づかれないように周りをチラリと見る。
ニヤニヤと笑う数人の酔っぱらいの仲間。
興味なさげな冒険者達。
頼みの受付嬢も、黙ったままこちらをジッと見つめている。
「ここは天下のドラーテム
8話、クエスト受注(5)
リリは、異様な雰囲気に周りを見渡した。
震えながら隠れる者、睨みつける者、武器を手に取る者までいる。
「お、鬼……」
「まぁ、そうなるよね」
ラーナは大きくハァーッとため息を吐くと、そう呟いた。
リリも覚悟はしていたが、想像以上の反応だ。
「このっ、バケ……」
武器を構えた冒険者の一人が、口を開いた瞬間。
受付からぶっきらぼうに呼びかける声が響く。
「嬢ちゃん!! 用件を
8話、クエスト受注(4)
「ほえー、ここが冒険者ギルド! 頑丈そうな建物、おっきな扉!」
リリ達の目の前には重厚な石で出来た無骨と言い方が褒め言葉に思えるような建物。
三階建てなのだが、一階だけ天井が物凄く高くなっている。
まるで教会のような、特殊な作りの建物。
「ねぇラーナ、入り口大きすぎない? 行き来している人の4、5倍はあるわよ?」
「巨人族が来るかもしれないからって、大きな扉にしてるみたいだよ? ボクは巨
8話、クエスト受注(2)
門の入り口で、恐らく犬人族であろう衛兵に質問をされた。
「観光か? 商売か? 通行か?」
(本物の獣人さんじゃん! ゴールデンレトリーバーみたいー、大きいしモッフモフ!)
リリは心の中で勝手にこの衛兵をゴールデンさんと呼ぶことにした。
ラーナの1.5倍ぐらいはあるであろう体躯、整えられたモフモフ。
触りたい気持ちをぐっと抑え、リリは慣れた旅人を装い、なるべく元気に話しだした。
「観
8話、クエスト受注(3)
『ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ』
門をくぐった二人は音のより大きな方へと向かう。
大きな城壁が作り出す影で薄暗さに目が慣れていたリリは、お日様の光を浴びると、少しだけ顔をしかめた、そして改めて周りを見渡す。
「うわぁ~お、露店がいっぱーい!!」
趣きは日本で言う所のアメヤ横丁、海外的に言えば、バンコクの露店街や、ラオスのナイトマーケットのような感じだった。
煩雑に並ぶ露店、行き
8話、クエスト受注(1)
ドラーテム王国の南西部。
サエウム荒原に亜人にも優しい街がある。
【カルラ・オアシス】
カプト地方の西部、サエウム荒原の中央に位置するオアシスに、作られた街。
ドラーテム国王シゲイルより、鬼族を除いた亜人の移民、永住が自由に認められた都市である。
[爬虫類族・レプティロイド]を中心に、ケンタウロスや[犬人族・ルプソイド][猫人族・フェレソイド]など多くの種族がいる。
亜人はドラコニス大
SS、ラーナの戦術論(その1)
荒野で焚き火の火がパチパチと音を立てながら、ゆらゆらと火が揺れている。
焚き火を囲む一羽と一人、鍋を囲みながらケラケラと笑い声をあげながら談笑している。
「そういえば、ラーナってどれぐらい強いの?」
(ずぅーっと、気になっていたのよねー)
具のないデザートフィッシュのスープを口に運びながらリリは聞く。
「っん? どういう基準で?」
ラーナは、焚き火にサボテンを焚べながら聞き返す。
7話、ジャイアントスコーピオン(7)“ごはんパート”
焚火の横には机代わりの大きな岩盤、その上には木皿が規則正しく並べられている。
「良い石が見つかってよかったわ、重くなかったの?」
「んっ? 全然問題ないよ? これくらいなら片手でも充分!」
まるで空のダンボールを持つかのように軽々と岩を二つ抱えるラーナ。
その岩を椅子代わりに机を挟みこむように置くと、今度はリリが自分で持てるサイズの石を置き、フワリと座り込んだ。
「匂いだけでも幸せな気