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初めの試練だったのね|ちいさなお店の記録 no.4

前回はこちら。

図書館に着いた。白紙に戻ったお店の名前を考える。

予期せぬまわり道に、焦る心を隠してノートを開いて考える。景色を見てみたり、周りを見てみたり、iPadに入った吉田松陰の書物を読んでみたりしながら。

泡のように、ひとつふたつと気持ちが浮かんでくる。そもそも、ほっとひと息、自分に戻れる場所という想いを名前に込めたのだ。名前を変えても、この想いは変えずにいきたい。ほっとひと息、ほっとひと息、、、。そもそも、ほっとひと息することは、何のためにあるのだろう。


張り詰めた糸を緩めるような、そんな時はなぜ必要なのだろう。ずっと頑張れて、満ち足りた気持ちで歩き続けられたら、それはそれでいいのではないか? そんな考えが渦巻く。

ぐるぐる巡る考えを落ち着けるように、手帳をひらく。私はなぜ、ほっとひと息を欲しがっているのだろうか。

2年前、「何者かにならなくてはならない」と日々疾走したが故に、心を壊した私は、以前より痛みに敏感になった。

しかし現実というものはどうしようもなく厳しく、優しく、どうにもならなかったりする。その現実に落ち込み、涙した時、すべて逃げ出したくなって、自分のことも攻撃したりする時、どうしていいかわからなくなる。

そんなことが度々訪れるが、そういう時に、あったかいチャイティーと店員さんの笑顔に出逢えたり、甘いチョコレートを口に含んだり、太陽が部屋にすっと差し込んだり、そんなことがあると、少しだけ、そのどうしていいかわからない気持ちを横に置いておける気がする。

そうやってほっとひと息をつくと、横に置いておいた現実に向き合ってみようかなという気持ちや、とりあえずしんどいけど一緒に生きてみようといった気持ちが生まれる。反対に、もうこれは手放そうという勇気も生まれたりもする。

ほっとひと息や、自分に戻れる瞬間は、大袈裟かもしれないけれど、生きる力を、苦難の中の力をくれる気がして、私はこの瞬間を求めているのかもしれない。

そう思うと、お店の名前はすぐに決まった。「苦難の中の力」「あなたを癒す」そんな花言葉を持っている「カモミール」。このマガジンタイトルでもある「かみつれ」がすぐ浮かんだ。そして「かみつれ文庫」とノートに綴ってみる。うんうん、安心する。

「燈芯香」がダメかもしれないと分かった時、思ったよりもすぐに切り替えができた。その自分の薄情さに嘆いていたのだけれど、こういう試練が来た時、「燈芯香」という名前で本当に乗り越えられるのか、ある意味試されていたのかもしれない。

新たなものを生み出そうとしていたけれど、もう既に自分の近くにあった言葉に戻ってきた。ずっと連れ添ってきた「かみつれ」なら、どんなことがあっても共に居られる気がする。

そして忘れてはならない事の発端、商標検索をする。被りもなく安心したが、専門知識がこれほど必要な範囲、コストを少し増やして専門家にお願いすることにした。出願までとんとん拍子で進み、現在結果待ち。ちなみに、画数診断も大吉で安心。

名前騒動はとりあえず落ち着いた。いよいよネットショップ作り。

つづく

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