見出し画像

隙間から覗いた世界の先に

静まった世界に、小鳥の声が少しずつ響き始める。太陽が顔を覗かせてくると、街は少しずつ動き出す。

車の通る音、シャッターが開く音、いろんな音の鳴る方に吸い寄せられるように、私は窓をそっと数センチだけ開ける。

そうすると、冬に感じる鼻の奥までツンとするのとは違う、不思議な柔らかさを宿らせた冷たい空気が部屋の中に流れ込んだ。ついこの間まではあれほど疎ましかった湿気は、気付かぬ間に存在感を薄くしている。

空気の変化は、学生や街ゆくサラリーマンの白一色の衣服も、ここ1週間で艶やかな黒と紺に塗り替えていた。

そんな街の様子を部屋の窓からそっと覗き見ることから、私の1日は始まった。

ここから先は

604字

かみつれ

¥400 / 月 初月無料

忘れたくない小さな心の動きと無常な日常の記録。言葉で心がつながる瞬間がひとつでもあると嬉しいです。

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,153件

#今こんな気分

74,771件

ZINEの制作費や、表現を続けるためのお金として使わせて頂きます🌱