ストフェスの存続意義

日本でコスプレイヤーが多数集まるイベントの一つで、その意味では関西だけでなく西日本最大のイベントが、大阪の大阪日本橋ストリートフェスタ、通称ストフェス。堺筋沿線の日本橋電器街、通称でんでんタウンで堺筋を歩行者天国とするイベントだ。
その界隈は、昔からの電器関係の資材や工具の店からPC専門店、アニメやゲームのグッズショップが並ぶ。判りやすく言えば、秋葉原の大阪版だ。

その日本橋の地域活性化を目的として、毎年3月に開かれるようになった。自身も、2013年から2015年までの3年間、参戦した経験を持つ。地域活性化としてのイベントではあるが、認識と実態は大規模コスプレイベントだ。
人が背景に入らない撮影場所は皆無に等しく、絵にならないと嘆く連中も多いが、同時に祭りとして楽しむ分には問題無い。そしてまともに動けない人混み。

そのストフェスは、2020年はイベント1ヶ月前の2月にキャンセルが発表されたが、同時に2021年3月を目指していた。それも11月に入って、早々にキャンセルを発表した。
「マスク・オア・ディスタンス」の欧州と異なり「マスク・アンド・ディスタンス」を唱える日本で開くなら、更衣室の定員を8割ほど削減する必要が有るが、それでも会場全体の人口密度はさほど変わらず、現時点での復活は時期尚早も甚だしいとの判断だろう。

早ければ、目指すは2022年3月。だが、個人的には3度目の正直は現状では存在しないと思っている。
そもそも何故、4ヶ月前の11月なのか。早過ぎる決定にも思えるが、それはイベントのために準備を開始するのが11月頃で、それ以前に可否を決定する必要が有ったからだろう。
遠征組も多く、来場客の宿泊や交通の確保を鑑みると、この時期だとそもそも予定を組み始める前だ。後々キャンセル手続きなどで手間を取らせることは無い。
ただ、その親切以上に、コスト面で早々に決断すべきだったのではと読んでいる。

道路の使用に代表される申請から各種手配も含め、準備費用が本格的に発生するようになると、当然ながらキャンセルには違約金、キャンセル料が発生する。その費用だけでも莫大な費用になるだろう。
ストフェスはコスプレイヤーも撮影者も全員有料で、その売上が翌年のイベント費用に回る。イベント側はあくまでも「次回のための寄付をお願いしている」と云うのが対外的なスタンスだが、事実上全員に金を出させる以上は寄付ではなく、イベントと云うビジネスだ。だから、前述でも他の記事でも、イベントに関しては参加者とは使っていない。来場「客」が正しいからだ。

これは邪推だが、営利団体として利益を求めていないのであるならば、既に最後に開かれた2019年分の売上は、既に相当な額が2020年の準備費に消えたと思ってよい。いくら協賛各社から金が入ったとしても、撮影者も含めて1万人を優に超える客がもたらす、数千万円の売上は大きいのだ。
その上で、残りを2021年に充てて結果それもダメだった場合、採算的に存続の危機に陥る。それであれば2022年の準備に金を回すため、一旦イベントを凍結させると云う腹積もりだ。
ここまで勘繰っても、有り得ない話ではない。逆に言えば、これが本当ならどのイベントも一度、耐えても二度飛べば団体が潰れると云う危険を常に抱えていることになる。

さて、それでなくても、ストフェスの存続意義は数年前から言われている。きっかけは、6年前に現地の知り合いを撮影した際、それと一緒にいた人と話していた時に聞いた。その近くの電材屋で働いているため、表も裏も知っていると言う。
元は、でんでんタウンを中心とする日本橋界隈の地域活性化として始まったが、メインとなる堺筋から路地に入った、所謂オタク向けの店が並ぶ通りが普段より賑わう程度で、それ以外の…特に古くからの電器関係の店は…恩恵を受けない。
その一方、堺筋とそれに至る路地などは通行止めとなり、その付近も人混みで徐行を強いられ続けるなど、物流や納品に影響が出る。また、イベントは休日だが、休日に翌日からの現場で使用する資材の調達に職人が足を運ぶとしても、自身がオタクに関心が無い職人ならば、わざわざその異様な人混みの中調達には行かない。

また、その人混みから毎年何らかのいざこざが起きる。実際にイベント中は大阪府警の警官も巡回するが、盗撮の現行犯で逮捕者が出たりもした上、猥褻物陳列で警察沙汰寸前と云う事態が起きた、と云う話も聞いている。
その…少なくとも5年前には…次何か警察沙汰の事件が起きれば、今後は道路の使用を拒否すると云う通達が警察から有ったと言われる。
歩行者天国のイベントが開けない時点で、ストフェスは消滅する。名前だけ残して何処かの商業施設などに会場を移すのは、日本橋界隈の活性化と云う当初の目的から外れる上、それだけの場所も無い。

話が脱線したが、短期的な影響はデメリットが大きく見えるが、そこを差し引いても、年間を通して活性化すれば成功。それが地域振興だとは思っている。
しかし、それにも至っていないことは、ストフェス不要論が出ることからも判る。
ただ、イベントとして大きくなり過ぎた結果、イベントを団体側の自己都合にしろ不可抗力にしろ、畳むことができなくなっている。いや、畳むことはできるのだが、その影響が大きい。コミケが潰れないのも、他方面に及ぼす影響が大きすぎて、潰すワケにはいかないと云う面が有る。

予想ではあるが、次回は2022年3月、3年ぶりの復活を目指すだろう。今回早々にキャンセルしたことでプールできた資金と、協賛企業が有るなら協賛金…それもどれだけ確保できるかだが…で、準備できるのか。そして社会的に開いても問題が無いようになっているのか。
三度目の正直か、二度有ることは三度有るのか。前者の結果になった場合、最短で2023年3月を待つ前にイベント離れが起きるだろう。

だからと、オンラインイベントに移行すると、それこそ「ストリート」フェスタの名前が形骸化、単なる固有名詞でしかなくなる。
確かに、自身はストフェスオンライン2021と云うハッシュタグを勝手に作ったが、それはあくまでイベントが開かれたつもりになり、且つ過去を懐かしむための茶を濁す、溜飲を下げる為でしかない。
それに、そもそもコスプレイベントのオンライン化は収益が出ない一方で費用だけは当然のように発生する。それこそ、ストフェスにとっては一時の延命措置だとしてもコスパは悪く、今後もリアルイベントを継続させるためには、逆に手を付けられないのではないか。

ストフェスは2年連続で飛んだことで、いよいよその存続意義を含めて正念場を迎えた。2022年も無ければ2023年以降は絶望的だと捉えているが、果たして1年後のリリースはどんな中身になっているのか。

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