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イギリス チェーンカフェのマーケティング

イギリスにも日本と同じく様々なチェーンのカフェがありますが、今回は私もお世話になっているPret A Manger (以下Pretと省略) という大手チェーン店のマーケティングに注目したいと思います。というのもここ最近戦略に大きな動きがあり、歳入を増やしているから。ではさっそく見ていきましょう。

Pret A Manger について


BBC (Pret A Manger customers complain over drinks subscription deal) より引用

Pret は約40年前の1980年代にロンドンで創業されました。国内に約434店舗、フランス、ドイツ、アメリカなどの海外にも全体の20%ほどの店舗があります。ちなみに日本でも展開していましたが、2004年に撤退しています。
後に詳しく記述しますが、Pretはロンドン市内に多くの店舗を構えています。コーヒーからフラッペ、スムージー系のドリンクがあります。
フードはReady-made のみですが、サンドイッチやサラダなど競合と比べ種類を豊富に販売しています。Veggie Pretsという店舗もロンドンに数店舗あり、その店舗ではフードはお肉を使わないもののみ販売しています。

Getty Image より引用

戦略チェンジ

Pret はコロナ禍で大きな戦略転換を図りました。その2つが、

1. サブスクリプション制度導入
2. 地方にも店舗展開

1つずつ見ていきます。

1. サブスクリプション制度導入

サブスクリプションは2020年9月からスタートしました。まだコロナの影響が肌で感じられる頃ですね。スタート時よりも少し値上がりしましたが、現在(2023年4月時点)では月£25で1日5杯までバリスタが作る全てのドリンクが飲めます。始めた当初は初月無料でしたが、今は半額の£12.50になっています。
私が良いなと思ったのはウェブサイト上でいくらお得か計算されるこのページ。サブスクリプションによって実際どれくらいお得なのか気になりますよね。それが一目で分かり、ユーザー目線でサイト設計されてるなと思います。

Angle のこちらの記事によると、サブスクリプション顧客は、そうでない顧客に比べて4倍もお金を落としているのだとか。月額で払っていますが、店舗に行った時に実際にコーヒーのお金は払わないので、無料でもらっているという感覚になるのかもしれません。返報性の原理を利用したマーケティングと言えるかもしれませんね。

ただ私としては、このサブスクリプションが消費者のブランドへの印象、好意度に影響をもたらしたのか気になります。というのも、今までは行くたびにドリンクに対して対価を払っていたのが、サブスクリプション導入後はそれがなくなりました。この「いつでも飲める」という感覚がPretというブランドを安く見せてしまってはいないのか。また、サブスクリプションに対して5000以上の不満が寄せられた、との記事(BBCより)も。サブスクリプションにはスムージーも含まれているのですが、時間がかかるからと店員が出すのを渋ったことに対しての不満などが見受けられます。(ちなみに2023年5月頃スムージー系の飲みものはサブスクリプションから外されるそうです。)
Pret は元々コーヒーやフードの質にこだわり、良いカスタマーサービスが受けられるという印象がありました。ですがサブスクリプション導入後、どうもそれが崩れてしまっているように感じられます。残念ながらこのブランドの好意度に関する調査は見つかりませんでしたが、少なからずネガティブな印象ももたらしたのではないかと考えます。

2. 地方にも店舗展開

Pretは、2022年前期の決算発表で、歳入が対前年比の230%と発表しました。コロナでかなりのダメージを受けただろうにも関わらず、なぜこのプラスの数字を出せたのか。1つの大きな理由は地方展開を始めたことです。Pretは元々ロンドン市内のみ、の戦略でビジネスしていました。しかし、2021年9月に今後5年以内にビジネスの規模を2倍にする、と発表し地方展開を進めていきました。
ちなみにイギリスの各メジャーカフェチェーンのロンドンの店舗数は以下。

Pretの店舗は約65%がロンドンに集中しており、他と比べてもかなり高いことが分かります。ちなみに日本の東京だと、同じエリアにスタバが何店舗もありますが、全国店舗1320に対して317店舗なので、東京の店舗数は全体の約24%。敷地もロンドンの方が東京に比べて狭いので、ロンドンのPretの店舗数がかなり多いことがお分かりいただけるかと思います。

ちなみに地方への展開を決定した理由は、コロナ禍で通勤数が圧倒的に減ったからでと考えられます。イギリスでは在宅勤務が多くの企業で定着し、Bloomberg によると、2022年一期のロンドンへの通勤数は、2019年の四期に比べて30%ほど落ちたそうです。これはロンドン中心に、通勤に便利な立地に店舗を構えていたPretにとっては大きな痛手。ですが、ロンドン中心に店舗展開という従来の戦略に固執せず、このタイミングを逆にチャンスととらえ新たな戦略で突き進み成功に至った良い例の1つだと思います。

まとめ

今回はイギリスの大手カフェチェーン、Pret A Mangerのコロナ禍での新たな戦略とその結果を私の個人的な意見も合わせて見ていきました。地方展開とサブスクリプションによってコロナ禍でも歳入を増やしたPret。海外でもさらなる展開を目指しているようで、今後の拡大に注目したいと思います。
余談ですが私もこのpret のサブスクリプションユーザーで利用するときはマイボトルを持参しています。私のマイボトルはアイスコーヒーも入れられるように少し大きめなのですが、それに合わせてカプチーノやラテなどのミルクを入れてくれるのでいつも量が多めです苦笑。ショット数は変わらないのですがPretのコーヒーは元々濃いめなので薄いと感じたことはありません。沢山飲みたい方は大きめボトルを持参してみてください。
Preは上記で挙げた点以外にもオーガニックにこだわる、その日に売れ残ったフードはホームレスの人たちへの配給に回すなど、他チェーンと比べてもユニークな特徴があるので、次回は競合との比較もしてブランドについて見ていきたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました :)
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参考文献
Angle, Review | Pret-a-Manger's Coffee Subscription
The Guardian, Pret returns to profitable operations with strongest sales outside London
Bloomberg UK, London Endures Greatest Post-Pandemic Shift in Working Habits
Pret A Manger, Pret A Manger Announces Ambition To Double Size of Business Within Five Years
BBC, Pret A Manger customers complain over drinks subscription deal

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