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【ワイン】友達のアパートのベランダからスペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラまで繋がった話

こんばんは。フランス在住大学院生の aya です。

先日友達の家で料理を振る舞うことになったので、自分の中でブームになっていた炙り帆立と揚げズッキーニのアラビアータを作ることにしました。私が住んでいるニースでは、朝市で新鮮な野菜や魚介類が手に入るので、その日の朝採れたての帆立とズッキーニを買いに行きました。

たくさん並ぶ魚や貝を見て、帆立を見つけると、札に«Saint Jacques»と書いてありました。(なるほど、帆立はSaint Jacquesというのか)とそこで新しい単語を覚えつつ、おじさんに「今現金5ユーロしかないから、5ユーロ分ください」と言って買いました。"Saint"というのは、「聖」という意味で、"Jacques"というのは、人の名前というのはわかりましたが、どうして聖人の名前をつけているのかはわかりませんでした。

後で調べたところ、Saint Jacquesとは、聖ヤコブのことで、その聖人のシンボルが帆立貝なんだそう。なんでも、聖ヤコブはイエス・キリストの十二使徒の一人で、(スペイン語ではサンティアゴ)の墓があるとされている場所へ向かうサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路を歩く巡礼者たちは帆立貝の貝殻を身につけることで安全を祈り、巡礼者であることを示していたのだそうです。

そこで思い出したのが、ブラジル人作家パウロ・コエーリョの『星の巡礼』でした。日本の大学に通っていた時にブックオフで文庫本を買って読んだこの物語の主人公たちが巡礼していたのが、まさにサンティアゴ・デ・コンポステーラ(=サンチャゴへの道)でした。小説を読んだ時に、いつか自分も巡礼してみたいと思ったことを思い出しました。本当に巡礼できたら、帆立貝を身につけたいです。

さて、ズッキーニですが、日本語ではイタリア語(アメリカ英語)のズッキーニと呼びますが、フランス語ではコルジェットと呼びます。(イギリス英語でも同じく。)このように、イギリスではフランス語由来の英語を使い、アメリカではイタリア語由来の英語を使うことがあり、他にもイギリスでロケットと呼んでいる緑の葉野菜は、アメリカではイタリア語由来のアルゴラと呼んでいたりもします。日本ではルッコラと呼んでいますね。

手土産にお料理に合うワインを持っていきたかったので、ニースの旧市街にある老舗のワインショップ(フランス語では、cave du vin=ワインの洞穴)で帆立に合うワインを教えてもらうことに。

以前、牡蠣に合うワインをお薦めしてもらった時には、ミネラルっぽいアロマのラングドックの白ワインをお薦めしてもらいました。その時の店員さんが私のことを覚えてくださっていて、私が「帆立も魚介だから、前と同じのでも合うかな?」と訊くと、「いや、帆立はオークっぽい、蜜蝋みたいなアロマがいいよ」と言って、教えてくださいました。「今夜飲むの?」と聞かれたので、そうだ、と答えると、冷えたものを奥から持ってきてくれました。まだフランス語が辿々しい私にもしっかり対応してくださって、とっても親切な店員さんです。

10ユーロほどしかしませんでしたが、とても美味しく、もちろんお料理とも合って、とても楽しい時を過ごすことができました。

家に帰ってからそのワインの産地のことをもう少し調べてみたところ、Rhôneという地方のものだということがわかりました。ワインの産地は、フランスの都道府県のような分け方とは違い、ワインの産地の独自の分け方があります。(AOC(Appellation d'Origine Contrôlée)/ AOP(Appellation d'Origine Protégée)という。)

Rhône(ローヌ)は、ラングドック(以前牡蠣とペアリングしたワインの産地)とプロヴァンスという二つの地方の間にあり、更に、王と教皇という二つからの勢力の影響を受けたという歴史を知りました。

アヴィニョンという街の近くにあり、アヴィニョンは、教皇庁があることで有名です。アヴィニョンと聞いて最初に思い浮かんだのは、ピカソの『アヴィニョンの娘たち』という作品ですが、調べてみたら、ピカソのアヴィニョンは、スペイン・バルセロナのアヴィニョ通を指しているそうで、フランスのアヴィニョンとは違うみたいでした。

というわけで、旅行する時間はありませんが、友達のアパートのベランダからスペインまで飛んで行けたような気がしました。

いつか行く機会があったら、今日のことを思い出すと思います。

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