見出し画像

祖母と私とおいしい思い出

目を覚ます。隣には、空っぽの母の布団が冷たく佇んでいた。

対する自分の布団はあったかく、朝起きようとする私を話してくれない。今日も誘惑に負けて、2度寝してしまおうかと思った時。階下からきな粉の香ばしいにおいがしてきた。

わあ、今日も作ってくれてる。と思ったと同時に、体は階段を下りている。

さっきまでのだるさはどこへ行ったのか。本当に、体は正直だ。

下に行くと、やっぱり祖母が茹でたちくわぶにきな粉をふりかけた私の大好物を作ってくれていた。

他の人の家では食べたことがないのだけど、祖母考案なのかな。それとも、おばあちゃんの知恵袋的なあれかな。なんて考えも、食べ物が前に来たら消え去ってしまう。

うん。今日もすっっごくおいしい。きな粉の甘さとちくわぶのもちもち感が絶妙なのだ。すごくおいしい!って満面の笑顔で祖母を見ると、祖母もまた私を嬉しそうい見てくれるのだ。

それがうれしくて、お互いにふふふ、えへへとなってしまう。

とにかく、私はこの、きな粉とちくわぶが大好きで、いつもそれを祖母にせがんだ。

母と会えない間、祖母はできるだけ私の願いをかなえてくれた。遊びたいと言ったときは、一緒に編み物をしてマフラーを作ったり、折り紙をした。音読が宿題のときは、毎日たくさん聞いてくれた。

そんな祖母のおかげでその時間だけは悲しい気持ちを少し、忘れることができた。素敵な思い出の1ページ。

むかしむかしの遠い冬のお話。

久しぶりに、祖母に頼んで作ってもらおうかな。いや、今度行ったら、一緒に作ろうかな。


この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,489件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?