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フランスから、食関連ニュース 2021.01.13

今週のひとこと

年末の大晦日に、南仏からシュトーレンが届きました。キリストが生まれた時の着ぐるみにちなんで作られたドイツの伝統菓子ですが、そのシュトーレンもクリスマスの装いを施した白い紙に包まれていて、神聖さを纏っているようです。このシュトーレンを手にすると、ずっしりとした幸せが舞い込んでくるような心持ちになるのです。もう3年前から、このシュトーレンの美味しさに虜になって、年末年始には必ずいただきたいお菓子となったのですが、今年は忙しさにかまけ、注文を怠ってしまっていたので、11月末に注文をしようとサイトを開いたら、なんとソルドアウトに。今年はいただけないのかと寂しく思っていたところ、作り手である「BIOMOMO」の橋本さんご夫婦から一報が。すると、今年もお送りいただけるという嬉しいご提案をいただけたのです。それで大晦日に手元に届いた時には、喜びもひとしおでした。日本では昨年期間限定で伊勢丹さんで取り扱いしていたとのことでした。

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橋本泰典さん、恵美子さんご夫婦が構えるアトリエは、ローマ期最大の水道橋で知られる南仏ニームからほど近いベルギャルドという小さな村にあります。ご夫婦のことは、彼らがアトリエを構えたばかりの、おそらく翌年の5年ほど前から縁あって存じ上げていました。いまや、毎年開催される食品コンクールの祭典「Le Monde de l'épicerie fine」では、常に賞を取っていらして、仏ガストロノミーの継承を使命とする団体、アラン・デュカス氏らの料理人の名士たちが運営する「Collège Culinaire de France」からも、推奨する生産者として選ばれており、彼らが生み出す味わいが評価されています。南仏の恵みを表現するさまざまなコンフィチュール、アーモンドのペーストなど。イチヂクと薔薇の花のコンフィチュールの味わいにもノックダウンされたのですが、「BIOMOMO」のエンブレム的な存在はジンジャーのコンフィでしょう。現在の「BIOMOMO」の支援者で、オーガニック農協として草分けのニコラ・ルーズさんから託された生姜を、現在のコンフィに仕上げると、ルーズさんはその味わいにいたく感激して、農協の一角にアトリエを構えることを提案してくれたという立身談が背景にあるのです。

このシュトーレンには橋本さんご夫婦の結晶が詰まっていると思います。1年前から仕込み始めたフルーツコンフィに6種類のスパイス、南仏産の古代小麦petit épeautre(アインコーン/一粒小麦)で作った生地で、中心にデーツが入っています。一年に限定数しか作らないというこのシュトーレン。華やかで重厚な甘み、ジンジャーのすっきりと滋味あるアクセント、自然の恵みをしっかりといただいていると感じます。今年は弊社atelier DOMAの3人でいただきましたが、1時間で1個があっという間にはくなってしまいました。新年1月7日にいただく七草粥ではないですが、そんな一年の健康を願えるようなお菓子だなと思いました。

昨年は年末年始に日本で家族と一緒にいただいたものだなと思い出し、人々が自由に行き来できるという当たり前だった幸せが、また舞い戻ってくれることを祈りながら、小さな幸せを大切に思える心を育てたいと思います。

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以下の今週のトピックスは、今週のひとことの後に掲載いたします。【A】パリの人気レストラン「セプチーム」パティスリーオープン。【B】トップシェフ出演シェフ、テレビのアニメーターに抜擢。【C】仏版ミシュラン2021、1月18日に発表。【D】パリ市、市内のマルシェ、レストランに解放決定。

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