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イチジクの葉の香りのグリンピース@MAISON 渥美創太          フランスの食関連ニュース 2021.06.23

今週のひとこと

渥美創太オーナーシェフの「MAISON」へ。7月8日までバースタイルでオープンするというので足を運んできました。彼のお料理をいただくのは、おそらく1年半ぶり、本当に久しぶりでしたが、素材への力に委ねることのできる優しい感性というか、その感性の豊かさが一回りもふた回りも広がっていて、目を覚まされました。特にグリンピースのグリル。いただくものはクリンピースだけなのですが、それがイチジクの葉に包まれて出てくる。グリルをしたグリンピースをいただくと、ヨモギに似たほんのりとした苦味、ミネラル感のある涼感が加味されていて、グリンピースの甘みを引き立ててくれる。グリルしたその加減も優しい。絵のような佇まいもそうですが、イチジクの葉の香りとグリンピースの組み合わせという妙。研ぎ澄まされた組み合わせにどうやって思い至ることができたのだろうと脱帽でした。おそらく塩も胡椒も、なんの調味料も加えていない。創太シェフは、人としても、嘘のない人というか、プラスして化粧することのない性格は、料理にも表れています。https://sotaatsumi.wixsite.com/mysite-1

実は昨年のロックダウン明けのころ、まだまだ外出が阻まれるころに、鎌倉生まれのチョコレートブランド「メゾン・カカオ」の代表者、石原紳伍さんと創太シェフの対談を手がけさせていただいたことがありました。 「メゾン・カカオ」のページにて掲載されているので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。https://maisoncacao.com/journal/taidan-sota-atsumi/

石原さんと創太シェフは、温かな友情で結ばれていて、そんな関係性から、このページを作成することになり、執筆を担当させていただけたのは、お二人が会話する言葉の中に、たくさんの気づきをいただけて、本当に幸せでした。「メゾン・カカオ」のブランド創立ストーリーも素晴らしく、次回日本に帰国したときには、「メゾン・カカオ」のチョコレートを味わってから、何か執筆できたらなと思っています。石原さんは、コロンビアのチョコレートを扱っていらっしゃいますが、生産者の信頼を得て自社農園を持っている。政府とも関わり、学校も設立しながら、カカオ生産地の豊かさをも目指すという、事業の目的を一歩先に据えている人です。これからの時代の企業に求められる姿は、どんな形であれ社会に貢献することだと思うのですが、その第一線に立つ、有言実行の人。しかも飾り気なく率直で、社員を愛し、応援もするという統率力もあって、「メゾン・カカオ」というチーム力も感じました。創太シェフは石原さんの運営するコロンビアの農園にも一緒に訪れています。

そんな石原さんとの対談の中で、石原さんは創太シェフの料理のことを、こう言っていました。「例えば、イノベーションを謳うレストランに行くことがある。すごく楽しいし、創造力も刺激されるんですけれど、安心感があって美味しいものが食べられたかと言うと、そこはちょっと違うかなと思ったりもします。それに対して、創太の料理はいろいろな旅をさせてくれるのですが、結果、安心感がある。美味しくて、また食べたいと思わせてくれるんですよね。」

イノベーションと安心感のバランスというのは、どういうことだろう。この対談以来、あれこれと考えています。しかし、自身の私利私欲を超えて、いわば雑念とは離れて、素材と向き合ったときに現れるクリエーションが、私たちの心も癒してくれることもあるのかなとも思います。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載されます。【A】「プラザ・アテネ」と「ディオール」のシェフに君臨するジャン・アンベール【B】名シェフ、より従業員に優しい環境作りを提案【C】ザラホームがトップ・パティシエと組んで« Pastry Collection»を発表【D】「OAD(Opinionated About Dining)」のヨーロッパ・レストラン・アワードにおける日本人シェフの高評価【E】カカオバリー社100%カカオの実から作ったチョコレートを発表

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