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濱地健三郎の幽たる事件簿/有栖川有栖

■ 感想

「濱地健三郎の幽たる事件簿」有栖川有栖(角川書店)P304

怪異とミステリのあわいで捻じれた世界を解いていく濱地健三郎・第二弾。

泥臭さとは縁遠い瀟灑たる紳士でありながら懐深く、人情的な差配で以て解決へと導かれる事件の顛末は総じて温かい。が、今作はなかなかに怨念強めの怪と幽溢れる案件が散見される。

『お家がだんだん遠くなる』に引用される野口雨情の歌詞から連想させる不穏さは物語を仄暗い妄想へと掻き立て、日本の怪異の恐ろしさの真骨頂である見えずとも感じさせる「なにか」の恐怖と、時間との勝負となる時限爆弾的焦燥感で読者の気持ちを逸らせる。

霊の仕業である案件だけでなく物の怪の類も登場し、今後の広がりに更に期待。

■ 漂流読書

<<<漂流読書>>>

■十五夜お月さん/野口雨情

野口雨情の「あの町この町」が作中に登場して、久しぶりに大好きな野口雨情の世界を堪能したくなった。

「お家がだんだん遠くなる 遠くなる 今きたこの道 帰りゃんせ 帰りゃんせ」

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