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濱地健三郎の霊なる事件簿/有栖川有栖

■ 感想

「濱地健三郎の霊なる事件簿」有栖川有栖(角川書店)P272

科学だけでは説明のつかない怪異を視る力と鋭い推理力で以て事件を解決へと導く、心霊探偵・濱地健三郎。

依頼に関係のない行きずりの霊も放っておけず、道案内をするように迷える霊をいくべきはずの場所へと導く優しい姿も魅力的。助手としてバディを組む志摩さんや、霊感で解決したものの法的解決とする為にお互い協力関係となる捜査一課の赤波江刑事とのコンビネーションや関係性も心地よく、霊感のなかった志摩さんの霊感の覚醒が先生とはまた違った能力となるのかも興味深い。

不可視の世界があることを認めながらも幽霊に対して、加害者につきまとうとか殺された現場に突っ立てるとかじゃなく「あいつにやられた」と言ってくれたらよさそうなものなのに気が利かないにも程があると言ってしまう赤波江刑事の不遜さもからりとしていて不快感がなく、情念の絡む事件でも最後にはふわっと儚く消えていくように浄化される軽やかさも絶妙。

芥川や宮沢賢治など文学作品がちらほらと登場するところも愉しい。怪異の中心にある心を解き明かす心霊探偵の今後がますます楽しみ。

装画が大好きなササキエイコさんなのも凄く嬉しい。厚めのグラシンのような紙に儚く印刷されたイラストが紙片コラージュやイラストの下絵と重なる装幀となっていて、彼岸と此岸が淡いレースのレイヤーで重なり合うようで美しく、物語の描こうとしている空気を見事に表現されていて、映画のエンドロールを見るような気持ちになった。

■ 漂流読書

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■濱地健三郎の霊なる事件簿/有栖川有栖

■田辺聖子全集7,8(新源氏物語)

作中で「源氏物語」の六畳御息所の妖しさが話題となっていて、年内に読もうと思っていた源氏物語が更に愉しみに。

ギリシャ神話にはまりすぎていて年内に辿り着けるのか怪しいけれど💦

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