全ての聖夜の鎖
■ 感想
中島らもとして世に出る前、一夜にして書き上げたという三つの掌編にインタビューやエッセイなどを加えた形で限定復刊された本書。オリジナルと同じく、真っ黒な紙に白字のカードを模して造本されているのがまた嬉しい。
厚みのあるコート紙に白く浮き出すように印字された掌編たちは、夜の淵かららも氏が語りかけた言葉が文字となって流れてくるようで紙面のその奥に惹きつけられ、永劫を彷徨う果たされない約束たちは哀しいほどに美しい。『成熟とは縁のない、この永遠に若い極上の密造酒』と例えた諏訪哲史氏。
時に腐り、倦みながらも、静と動どちらにも身を置き、自らが爆発するようなエネルギーとともに走り抜けていった、らも氏。”アルコールの海を泳ぎ、酩酊の夜を越え、覚醒の朝を迎える。”頼んでもないのにまた朝がきた…とぶつぶつ言いながら、酒の抜けきらない体を起こし、また原稿に向かうらも氏の続く作品がもっと見たかった。
■ 漂流図書
◽マダム・エドワルダ | ジョルジュ・バタイユ
掌編の中でとても気に入った一節が、ジョルジュ・バタイユのこの作品を想起させると諏訪哲史氏が解説に書いてくださっていたので、どう繋がりを感じるか楽しみに読みたい。