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日本語になったポルトガル語〖podcast更新〗

日本に最初に入ってきた西洋人

1543年、種子島に1隻の中国船が漂着しました。
その船にはポルトガル人も乗っていました。
(タイに滞在していたポルトガル部隊から脱走して中国船に乗り込んだ人だとか、ポルトガルの囚人だったとか、色々な話を聞きます)
これが、日本人にとっての初めての西洋人との出会いでした。

鉄砲伝来と織田信長

1500年代といえば、織田信長の時代です。
信長は早い時期から鉄砲に目をつけていました。長篠の戦いでの勝利は信長の「鉄砲隊」がもたらしたと言います。

歴史ドラマで、信長がポルトガル人と会合している様子の描写がありました。畳の上にカーペットとテーブルと椅子を置いて、日本刀と袴スタイルの信長がそこに座るのです。「すげー!」と興奮したのを覚えています。

もしかしたら日本もポルトガル領になっていたかもしれませんが、日本の強力な社会構造、武力抵抗、キリスト教の布教の失敗(取り締まりの強化)、ポルトガルの支配力の限界など、サムライ魂が強すぎてポルトガル人には支配できなかったという話もあります。
(歴史の話は諸説ありますので、参考程度にお聞き流しください。)

ブラジル人はpiada(ポルトガル人の悪口の笑い話)が大好きですが、よくこう言われます。

「ブラジルの不運の始まりは、ポルトガル人に居座られたことだ。日本は幸せだよね、だってポルトガル人が帰っていったんだから」

ブラジルの歴史の始まりはポルトガル人に発見されたところからであるのに、そもそもそれが不運だったとは、なんとも皮肉がきいています。

(日本人にはちょっと笑えないくらい厳しい皮肉話もありますが、ブラジル人からするとpiadaは「鉄板話」らしく、大爆笑します。日本人は顔が引きつっているのに、ブラジル人は声をあげて笑っている光景を何度も目にしてきまた。「笑いのツボ」が違うんだなと、いつも思わされます。)

1500年代から交流がある国

当時は大航海時代で、ポルトガルは海を使った商売(貿易)が得意でした。
ブラジルを発見したのも1500年です。大陸の発見や難しい航路の攻略なども含め、当時は世界的にブイブイ言わせていた大国です。

現代の日本ではポルトガルとの目立った関係は特にありませんし、ポルトガルがそんな強国だったという印象もないと思います。それどころか、ポルトガルという国がどこに位置しているのかも知らない日本人はたくさんいると思います。
(ヨーロッパ最西端の国、スペインの西側にあります。歴史的に色々ありましたが、領土の大きいスペインに結果的に飲み込まれることがなかったため、ポルトガルは強国であるという印象を拭いきれません。)
そして、日常的に使っている言葉の中に「ポルトガル語」が溶け込んでいることも、ほとんどの日本人が知りません。

「パン」はポルトガル語

ポルトガル語を知らない友人にこの事実を伝えると、「ウソ!」と必ず驚かれます。
「じゃあ英語でパンって何て言う?」と訊くと、更に驚いた顔をして「ブレッドだぁ〜!」と興奮してくれます。
「パン」は日本語だと認識していないのに、英語だとも認識しておらず、日本語に馴染んでいるのに日本語だと認識していない…(ややこしい)

それくらい昔からある言葉なんだと思います。織田信長の時代に既にパンは日本に入ってきていたらしいので、500年近く使われているものだと推定されます。

今回のpodcastでは、こういった「日本語になったポルトガル語」を紹介しています。

capaと合羽と河童

podcastの補足です。
capa(合羽)もポルトガル語由来だという話をしています。そして「河童」も関係あるのではないか、ということにも言及しています。

capaはポルトガル語で「マント」という意味ですので、「雨合羽」の言葉が生まれた経緯も理解できますが、どうやら「カッパ」は、隠れキリシタンの人々が「宣教師様」を指す隠語だったのではないか、との説があります。

宣教師様はマントを羽織っていますので、それにちなんで「カッパ」という隠語を使っていたとか…
もちろん「神父」という意味の「パドレ(Padre)」を普通に使っていたかもしれませんが、歴史の浪漫を紐解いてみましょう。
(ちなみに「キリスト」や「キリシタン」も最初はポルトガル人から伝わったものだと推測されます。)

更に宣教師の方々は、「トンスラ」という髪型をしています。日本のお坊さんも髪を剃りますが、当時の宣教師様たちは「頭のてっぺんだけを剃って、鉢巻をしたような形で周囲は残す」という髪型をしていました。
今回補足したいことはこの「トンスラ」です。というのも、「宣教師様はみんな禿げているんだなぁ」と思っていたのですが笑、あれは「宣教師のヘアスタイルだった」という事実を随分前に知って衝撃を受け、それをお伝えしたかったのです。(ポルトガル語関係ない)

そして「河童」ですが、その「トンスラ」ヘアスタイルと河童ちゃんの頭の皿が似ています。
見慣れない異人が「カッパ」と呼ばれ、その人たちと関わったら未知の世界(キリスト教の世界)に連れて行かれてしまう。そして戻って来れない。(=隠れて生きなくてはいけない、処刑される)
海の向こうからやってきたポルトガル人ですので、「海の向こうの世界の文化に溺れさせる」=「河童は子供を川に引きずりこむ」という伝説の生き物を作り、キリスト教の弾圧騒ぎから子供たちを守ろうとしたのではないか…

という話があります。
本当のところは分かりません。根拠もありません。
ただ、ひとつの「面白い雑学」程度に受け取ってくださると嬉しく思います。

「日本語になったポルトガル語」が載ってる本

面白い本がありました。本屋さんで思わず衝動買いしました。
ポルトガル語語源の日本語が載っています。
というか、「どうしてこの日本語になったのか」をポルトガル語の視点から解説しています。
「ほんと?」と疑わしいのもありますし、「それっぽい…」と思わされるものもありますし、「これはマジだろう」というものもありますし、個人によって感想が変わってくると思いますが、とても興味深いです。

『西欧音源の日本語1016 日葡辞書にグラッチェ・ミ~レ!』 レナート・ミナミ著

…今読み返していましたが、個人的に嬉しい発見がありました。

先日から「『ジョウロ(如雨露)』はポルトガル語が語源だ」という大学時代からの記憶と戦っていました。お花にお水をあげるときの道具です。
ポルトガル語でジョウロはregador(ヘガドール)なので違うな、と思っていたのですが、この本に書いてありました!
ポルトガル語のjorro「噴出、ほとばしり」が由来らしいです。
この話を、ポルトガルでの1ヶ月セミナー留学の時に、ポルトガル人の先生に聞いたことも今し方思い出しました!
スッキリ‎𖤐 ̖́-‬ 笑
そういう話がたくさん載っていますので、ご興味のある方は読んでみてください。

私も「日本語になったポルトガル語」リストを作ったのですが、公開はまだ先になりそうです。小さなリストですが、皆様の参考になれば嬉しく思います。

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꧁愛マリアンジェラ꧂
著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

HP
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所属事務所 (声優/ナレーター)
株式会社FIREWORKS

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