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ブラジルのバス停とバス内事情

引き続き、バスの話題です。

ブラジルのバス停

かつてブラジルのバス停は、木の棒1本が突っ立っているだけでした。
時刻表がないことは以前書きましたが、
駅名も行き先も、
何も書いてありません。
近年の都心部は、屋根があってベンチがあって、
お洒落にデザインされたバス停が目立ちますが、
今でも木の棒だけのバス停はあると思います。

駅名がない

バス停には駅名がありません。
降りたい場所の住所や建物の名前を言って、
近くになったら教えてもらうよう、
近くの乗客や運転手かcobrador(後述)にお願いします。

バスの乗り方と降り方

日本と違い、乗客がいなければバスは停車してくれません。
自分が乗るバスが来たら手を挙げて運転手に知らせます。

手の挙げ方ですが、腕を横くらいまで上げ、
人差し指だけを伸ばすのがブラジルでの手の挙げ方です。
人差し指だけ伸ばすのは、学校などで挙手するときも同じです。
この場合は腕は上に上げますが、いかなる場合も5本指全てを伸ばすことはしません。

現在は日本と同じように、
停車駅に近づいたらボタンを押して運転手に知らせるシステムですが、
かつては天井に張り巡らされている紐を引っ張って知らせていました。
少し前までは古い型の車種も使われていたので、
私も紐を引っ張ったことがあります。
さすがに現在はもうないかと思います。

cobrador

cobradorとは「集金人」という意味です。
運転手とは別に、運賃を集金する人が同乗しています。
小さい車体のバスの場合は、運転手が集金することもあります。

最近はICカードも普及しています。
カードでも現金でも、
cobradorにお金を払ったら
バス内にある回転式ゲートを通ります。

cobrador用の座席、集金箱、ICカード用の機械、回転式ゲートが
きちんと設けられています。

混雑している時などは特に、
「cobrador分のスペースも乗客用にしてほしい…」と願ってしまいますし、
運転手がいるのにどうしてcobradorが必要なんだろうと
感じる方もいらっしゃると思います。
私もそうでした。
これに関しては、ブラジルの雇用問題に言及する必要があります。

ブラジルは未だに識字率が低く、
字の読み書きができない人がたくさんいます。
そういう方でも仕事ができる世の中である必要があり、
cobradorの方々も、
もしかしたらそれ以外に受けられる仕事がないのかもしれません。
地下鉄にもbilheteria「切符売り場」がありますが、全て有人です。
日本の電車の切符は機械で買うのが一般的で、
そのスピード感と手軽さに慣れてしまっているため、
対応は遅いし列は長いしと、
効率が悪く感じてしまいます。
でもこれも、雇用に関して言及してしまうと、
「効率が悪い」だけでは済まされない事情があるのかもしれないと考えさせられます。

連結バス

大通りなどを走るバスは、2台分の車両が連結しているバスがあります。
前の車両と後ろの車両を、蛇腹の「繋ぎ」で繋いで走行します。
その形状から「アコーディオンバス」とも呼ばれるそうです。
日本にもあるそうですし、世界的にも導入している国は多いようですが、
私はサンパウロで初めて見て、その大きさと大胆さに驚きました。
ポルトガル語ではônibus articulados(連結されたバス)というそうです。

その他にも、
cobradorが同乗していないマイクロバス程度の小さめの車種、
連結されていないけれど降車用ドアが2箇所ある大きな車種など、
同じサンパウロ内でも、
走行エリアによってたくさんの種類のバスが使い分けられています。

面白い動画を見つけました。こちらで連結バスのイメージが湧くのではないでしょうか。

A HISTÓRIA DOS ÔNIBUS AETICULADOS
連結バスの歴史

それにしてもチャンネル名が
Clube Do Ônibus Official
には驚きました。
「公式バス倶楽部」
とでも翻訳するといいのでしょうか。
色々なチャンネルがありますね。
おかげで、日本にいながらでもブラジルの事情を知ることができます。
とてもありがたいことです。

車内の事情

こちらはバスだけでなく、電車内でも事情は同じです。

まず、女性やお年寄りが目の前に立っていたら、
ブラジル人の多くは何も考えずにすぐ席を譲ってくれます。
それが当然のようで、譲らない人は具合が悪いとか怪我をしているとか、
余程の理由がある人だと思います。
日本人は「遠慮が美徳」とされているので、
譲られたらつい断ってしまいそうになりますが、
ブラジルを始めとする欧米では失礼に当たります。
もしも席を譲ってもらったら、
素直に厚意を受け取りましょう。

たくさん荷物を持っている人が目の前にいたら、
座席に座っている人は赤の他人でも
荷物を持ってあげようと声をかけてくれます。
「悪意があるのでは?」と身構えてしまいますが、
彼らは純粋な厚意で言ってくれているので、
こちらも素直に甘えてしまいましょう。

他にも私が驚いたことがあります。
日本では、
降りる駅に到着する直前に席を立って
ドアの前まで移動することが多いと思いますが、
ブラジルは違います。
降りる駅の前の駅を出発したらもう立ち上がって、
ドアの前で待っています。
もし日本と同じタイミングで移動すると
「その次で降りる人かな」
と思われてしまいそうです。
ブラジルでは少し早めに降りる準備をするといいでしょう。

もうひとつ、
「これも日本人独特の思考回路だな」と痛感したことがあります。
日本人は、端の席に好んで座るイメージがあります(私もそうです)。
もしバスで窓際の席が空いたら、
そちらに詰めようとします。
立ってる人が座りやすいように詰めてあげる意味合いもあります。
しかしブラジル人は、席の移動をしません。
どんな体型の人でも、どれだけ荷物を持っていても、
詰めてくれません。
もし目の前の奥の席が空いて、
座ろうとするなら、
手前にいる人を跨いで座らないといけません。
こちらが苦労しているのに、
「詰めてあげよう」というアイデアがまるで浮かばないようです。
「詰めればいいのに」と感じてしまうのは日本人だけなんだろうなと思いました。

あるとき窓際が空いたので詰めてあげたら、
「なんでこの子は席を移動したのだろう」という目で見られました。笑
私の気のせいかもしれませんが、
生きてきた環境が違うと物事への物の見方も違ってくるのだなと身をもって感じました。

「生活する」ということ

私は留学で1年しか住んでいませんでしたし、
それ以前も何回も家族でブラジルに旅行していたので
ある程度のブラジル事情は知っていましたが、
「生活するとはこういうことなんだな」と感じました。
同時期に留学した友人たちは、
私が知ってる「当たり前のブラジル」を知らずに困惑し、
「こうするんだよ」と助けてあげたこともたくさんありました。
この記事を書いていて、
バスの乗り方ひとつでも日本とはまるで違うなと
改めて痛感しました。
そしてこうしてたくさんの方に語ることで
海の向こうにある世界を紹介することができます。
海外に住む経験ができたことに
今更ながら感謝しています。

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私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
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꧁愛マリアンジェラ꧂

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『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

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