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【リズムの話】ラジオ体操を「練習する」ブラジル人【ブラジル音楽】

先日、家の前の公園で、突然、ラジオ体操が始まりました。
流れてくる音楽に身を任せて一緒に体操していた時、
両親の友人のネイティブブラジル人の方の話を思い出しました。

言語学的なリズムの話「リズム類型論」

一般的に日本人が「表リズム」だと思っている私たちのリズムは、
おそらくモーラ拍リズムの影響があるのではないかと思います。
5・7・5の俳句のリズムなのですが、
つまり「拍」でリズムを取っているのです。

一方ブラジル人は音節拍リズムを取っています。
音節内にあるアクセントの強さでリズムが変わるというものですが、
これが「表リズム」では捉えられないリズムなのではないかと個人的には考えています。

ちなみに英語は強勢拍リズムで、音節のアクセントの有無で発音する長さが変わってきます。

言語学ではこの3つのリズムが存在すると考えられていて、
日本語、ポルトガル語、英語、それぞれ別のリズムを取ります。
この話は私のレッスンか、また別の機会に詳しくお話しします。

リズムの話を文字で伝えるのは難しいので伝わりにくいかもしれませんが、
言語学的な観点からも、表リズムと裏リズムが発生してしまうのではないか、という話をします。

ブラジル人は「裏リズム」で生きている

どちらが「表」で「裏」であるか、
今は議論しないことにします。
まずお話ししたいのは、ラジオ体操を「練習」しないと体操できないブラジル人の話です。

日本の小学校に通う子供をもつブラジル人男性がいるのですが、
彼はある時、学校の役割分担のローテーションで、
ラジオ体操の見本としてみんなの前で体操をする役割を担ってしまいます。
しかし彼は「裏リズム」で生きているブラジル人であり、
「表リズム」のラジオ体操の音楽に合わせて、
体を動かすことができません。

「いち、に、さん、し」
彼の世界では
「ッいち、ッに、ッさん、ッし」
言葉の前に必ず16分休符くらいの詰まりというか、
アクセントが潜んでいます。

例え音楽をやっていなくても、
ブラジル人には「言葉のリズム」が入っています。
ポルトガル語は、発話のときにアクセントが入りますので、
「ッ」という、一瞬詰まったような拍があります。

「いち」で私たちの体が沈んでいる時、
彼は「ッ」で一度浮き上がってから、沈むのです。
そして、遅れてしまうのです。

言葉とリズムと音楽の密接な関係

言葉にもリズムがあります。

以前、演劇の先生に
「台詞は8分音符で言え」
と指導されたことがあります。
「台詞を話す」ことができない俳優は、「文字を読んでいるだけ」になってしまいます。
すると、つい一定のリズムになってしまいます。
4分音符のリズムを崩さず、淡々と読み上げているだけと、
聞いている方は眠くなってしまいますし、音の抑揚がないので内容が頭に入ってきません。
これがいわゆる「棒読み」に繋がります。
ここで8分音符にしたりスタッカートを入れたり、言葉にリズムやアクセントをつけることにより、少なくとも間延びした台詞にはなることはありません。
(そもそもきちんと「台詞を話す」ことができればこんな小手先の技術は必要ありませんが)
これは日本語の台詞の話ですが、やはり言葉にもリズムがあるのだなぁと実感した指導でした。

本題に戻りましょう。
お伝えしたいのは、
ポルトガル語のリズムで生きているブラジル人が、日本のリズムを取るのは難しいということです。
つまり、逆に考えると、
日本人がブラジル音楽のリズムを取ることが難しいという意味にもなります。

「ブラジル人が日本のリズムが難しい」と感じるということは
「日本人もブラジルのリズムが難しい」と感じるはずなのです。
しかし、そう感じている人は少ないと思います。
ポルトガル語の「本当のリズム」を知らないから、
自分たちのリズムが「日本特有のリズム」であることに
気付けていないのです。

「ラジオ体操は難しいから、練習した」
衝撃的な言葉です。
ブラジル人にとって「表リズム」は難しいのです。
日本人ネイティブに生まれつき備わっている才能です。
ブラジル人がどうやっても手に入れられないリズム感を、私たちは持っているのです。
それはつまり、「私たちはブラジル人のリズムをどうやっても手に入れられない」と、やはり言えます。

「いち」で沈む私たちが、
「ッいち」で「浮き上がってから沈む」リズムを捉え、ブラジル音楽に活かすことは困難に思えます。

「音楽のためにポル語を勉強しよう」やっぱりここに戻ってしまう

ではどうしたらいいのか。

それを解決するのが、「ポルトガル語を学ぶこと」なのです。

いつも申し上げている通り、
サンバ、ボサノバ、その他の全てのブラジル音楽を作っているのは、ブラジル人です。
そして彼らが話す言語は、ポルトガル語です。
ポルトガル語で歌ったり演奏できるような音楽を作っています。

彼らは、日本語のリズムに合わせた楽曲を作れません。
日本語を知らないからです。
当然のことです。
しかし私たちは、その「当然のこと」と矛盾することをしようとしています。
ポルトガル語を知らないのに、ブラジル音楽をやろうとしているのです。

文法を学んでも、「言葉のリズム」は学べません。
ネイティブの方と会話をしても、「ポルトガル語のリズムの仕組み」を知らなければ
何も得られません。
きちんと論理的な面を理解した上でポルトガル語に携わっていかないといけないのです。
その「理論的な面」というのが「音声学」であり、「発音」になります。
だから、発音を学んでほしいと、いつもお願いしているのです。

ブラジル音楽に限らず、外国の音楽をやっている方々はその事実を知りません。
音楽の世界と言語学の世界が密接な関係にあることを多くの方に知っていただきたいと願っています。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
・「ポル語グルーヴ」のブラジル音楽への落とし込み方
などを教えています。
YouTubeでミニ講座を投稿している他、オンライン無料レッスンも行っています。
ご興味がある方は是非YouTubeチャンネルHPをご覧ください.*˚✩
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✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

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