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優しいと思われたくない

 優しくなりたい。誰にでも公平に振る舞う、責任感の強い、優しい心を持った人間になりたい。

 今まで見てきた数多の漫画や映画に、憧れのヒーローがたくさんいる。みんなかっこよくて、強くて、優しかった。
 少年漫画の主人公とかアクション映画に出てくるスターなど、いかにもなヒーローではなく、リアリティある作品に出てくる主人公の友人とか、控えめだけど努力を絶やさない脇役に、僕はヒーローとして憧れることが多かった。
 いろんなヒーローを見るたびに、こんなふうになりたいと思い、明日から僕は生まれ変わるんだと思うのだけれど、そんな簡単に性格を変えられるわけがなく、気づけばいつも通りに小心者として振る舞っていた。

 いつも周りの目を気にしながら生活を送っている。なるべく嫌われないように。好かれたいというよりは、嫌われたくないという思いのほうが強い。

 そんな思いで、基本的には当たり障りのない人付き合いをしているので、ありがたいことにあまり嫌われている感覚はない。

 しかし、「優しい」とか「良い人だ」とか、僕に対して誰かが使う言葉に対して、僕は強く否定したくなる。

 僕はあなたが思っているほど優しくはない。優しく見える行動も、あなたを思ってではなく、自分が嫌われないためだったり、自分が周りからどう思われるのかを考えたり、打算的な意図がほとんどなんです。と、自白したくなる。
 僕の振る舞いの結果としてあなたが救われるのならば、それは嬉しいのだけれど、僕のことを優しい人だとは勘違いしないでほしいのです。裏切ることもできず、傷つけることもできず、ただただ臆病なだけなのです。だからといって「偽善野郎」と指さされたら僕は泣いてしまうので、それはやめてください。

 優しい人になりたい。
 今の僕は優しくない。
 だから、優しい人だとは思われたくない。

 どうすれば、心から、人に優しくなれるのだろうと、日々考えている。

 

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