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また歩ける日まで~PTのリハ徒然草~ グラウンディング

2月9日のこと

夜になって、いつものように家族で夕食をとりながら、父がつけていたテレビをそのまま見る。
歌手、さだまさしの特集だった。
そうだ、ちょっと前から気になっていた昔のヒット曲、iTunesで買って聞こう。

それは「道化師のソネット」

聞きながら、母と一緒に口ずさむ。
いつ流行ったんだっけな、1980年か、私は小学校低学年くらいかあ。
そう思いを馳せていたら、急に涙が溢れてきた。

何故なのか、分からない。
その曲に、何か思い入れや思い出がある訳でもなし。

ただ、
今までも、そうだ、本当に幸せだったんだ
今こうしていること、生きていること、本当にありがたい…
という気持ちが、胸いっぱいに、
それこそ本当に胸が、両方の肺の隅々までが、その感情に満ち溢れ、キューっとなった。

我に返り、歯磨きをしようと洗面所に行く。
そこで鏡に映った自分の顔を見ながら、かけ続けている曲のサビ部分を、「笑ってよ、君のために~」と一緒に歌った。

急に、鏡に映った自分が、何と言ったらいいのか、すごくいい感じ、というか、くっきりとし、しっかりとした、端正な顔に感じて、まじまじと見入る。

ああ、本当によかった
今までも、そしてこれからも、私は大丈夫なんだ
何も恐れる必要はない

その時その時で、一生懸命、真摯に向かい合って生きていれば、何も心配する必要はない
人の為、自分の為、ああした方がいい、こうした方がいい、等と、むやみに執着する必要もない

全ては、完全・調和へ向かう宇宙の真理のままに、自分もその宇宙の中の一部であり、例えこの世での自分がダメになっても、何の問題もなく、この世を含む全ては、よき方向へ向かい続けるんだ

そんな考えが頭に浮かぶ。
そして、どっしりとした安堵感、安心感が湧いた。

2月7日のこと

大怪我をしてから、今日で三か月半余り。
仕事復帰だけを、ただひたすらに、ずっと考え続けていた最初の2ヶ月半。

そして、いざ復帰してからは、著しい体力低下と、思ったより厄介な、創外固定や免荷中に生じていた機能不全との闘い。

本当に、また不自由なく歩けるようになるのか、愛犬の散歩で一緒に小走りくらいしてやってあげたいけど、大丈夫なのか。
これだけ丁寧にリハしてきているのに、いい加減心が折れそうだよ、と長引く歩行障害に、うんざりする気持ちも出てきていた昨今。

年末以来、6週間振りに受診。レントゲン画像も見せてもらう。

「えー!まだ骨ついてないんですか。」

「こんなもんですよ、粉砕した横骨折だから。普通は3,4か月でつきますけど、状態が悪かったからね。仮骨もかなり見えてるし、早くもなく、遅くもない感じです。どうですか、足の具合は」

「お陰様で、大分歩けるようになりました。一応、正常可動域は出せます。でも、しゃがみ込みや階段の降りは厳しいですし、長い距離は歩けなくて。今日、診てもらって問題なければ、もうちょっと可動域練習も圧をかけて、しゃがめるくらいまでやりたいと思ってました。もちろん、無理はしませんが。」

「可動域は、制限なしでやっていいです」

「ありがとうございます。まだ走れませんけど、そのうちスロージョグくらいはしたいと思っていて。先生、もう年末から全荷重で歩いて、ある程度時間も経ちましたし、今の時点でレントゲン上も問題なければ、そうそう人工靭帯が緩んだりすることはないですか?そこがちょっと不安だったので。」

「人工靭帯のホックもかっちり留まってますし、結んだところも問題ないですし。そうですね、言ってみれば、何をやっても大丈夫です。」

やった!

そして、3か月以上経過し、難治性骨折に移行したため、自己負担額が4万円近くなる超音波骨折治療は終了とし、松葉杖を返却、傷病手当金や生命保険の請求も手続きした。

2月8日のこと

仕事を終えてから、早速、ピラティス機器とヤムナ・フットウェイカーで自主トレ。

その後、自宅から公園まで、ノルディックウォークで歩行練習。
芝生の場所まで行き、靴を脱いで、受傷後お初の裸足歩き。


芝生とはいえ、雨の後だったので、冷たい!
けど、とても気持ち良い。

早速、靴を履いていては分からなかった、前足部の使い方の悪さが分かる。
そして、かなり後方重心のまま歩いていたのに、初めて気づく。
というか、歩くとき、こんなに前方重心だったけ?
中足骨より遠位に、こんなに体重載せるんだったっけ?

「歩き方が分からなくなって、、、」とよく患者さんが言っていたのは、本当だったんだ。
免荷装具、松葉杖、杖と、いずれもそうスムーズに前方移動はできないから、3か月近くの間に、後方重心がすっかり身体に染みついてしまったのだろう。

早速、足部のローリングを意識して歩行トレーニング。
荷重時痛があるが、気にせず歩く。
おー、前に進む感覚、これだ、これだ!
懐かしい、うれしい!

帰宅すると、めちゃめちゃ眠くなって、1時間ばかり横になる。
グーグー寝る。
毛布の中ですれる右足の感覚が、とても気持ち良い。
こんな感覚、久し振りだ。
夜も熟睡。

再び2月9日のこと

そして、翌朝、2月9日。
足の腫れが違う!
朝一番に、起き上がって足をついた瞬間の、あのイヤな突っ張り感と痛みが、ほとんどない。

前足部を使ったことで、足底腱膜が伸縮され、腫れがひいたのか?
それともグラウンディング効果?
「何をやっても大丈夫」と主治医に言われ、かなり安心感が出たのも、動き改善には影響大、機能的な動きもできたのだろう。

久し振りに、行きも帰りも、駅まで歩き、電車で通勤することにした。
歩行練習を兼ねて、T字杖ではなく、ノルディックウォーク用のポールを両手に持って歩く。
やっと、遅めの人並み程度の歩行速度になり、駅まで15分程度で歩けた。松葉杖の時は45分だったのを思い出す。
帰りの電車の中で、ポールを抱えて座っていると、改めて、いつもこんな風に電車に乗ってたんだな、と当たり前のことに、じんわりと感謝。

涙が溢れる思いをしたのは、そんな数日を過ごした、その日の夜のこと。

裸足、地に足をつけること。
なんと奥深いことなのだろうか。

そして、言葉の魔力。
不安感は、主治医の言葉で一掃され、安心感へ変わった。

ああ、いい心の持ち様にさせてもらった。
ありがとう。

参考までに、以前、裸足仲間から教えてもらった動画をシェアします。


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