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衛星システム技術の裏側note(第4回)

こんにちは。衛星システム技術の裏側noteの第4回目の投稿です。暑い日が続きますので、北極海域(グリーンランド近傍の東側)の大きな氷が写った衛星画像を選んでみました。真夏に向かって北極海の氷が解けて分離している様子が写っています。赤い矢印で示しているように一番大きな氷の長辺は約10kmということで、この1つの大氷で、だいたい「山手線1周」くらいの大きさになりそうです。衛星画像の強みは、北極海域の撮影などなかなか行くことが難しいような場所でも撮影できること、そして地球の大きさ(スケール感)、地球の変化・ダイナミクスを俯瞰的にみられることですね。アクセルスペースの社員は、普段より社内Slack等で世界中の衛星画像を見ることができます。「宇宙から見た一番あたらしい地球の姿」を普段より目にしていると考え方・物事など視座が上がるような気がします。

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さて、今回は「衛星の姿勢制御」と「衛星の時計」の重要性とそれを「実装すること難しさ」の話を書きたいと思います。地球を俯瞰視できるのが人工衛星の特徴と書きましたが、それは衛星が地上からとても高い高度(宇宙から)から撮影しているからです。例えば軌道高度約500km上空で地球をまわっている「ほどよし1号機」で地上の目標物を撮影をする場合、カメラのレンズの方向を非常に精度よく制御する必要があることは想像できると思います。下図に示すように衛星搭載のレンズが軌道上で1度方向がずれると地上では約9.5kmずれてしまいます。高精度な姿勢制御を実現するためには、まずは自分の姿勢を知る(=姿勢決定)必要があります。姿勢決定のためにスタートラッカーやジャイロスコープと呼ばれる姿勢決定センサーからデータを用いて姿勢の計算するわけですが、センサーから得られるデータには必ずエラーやバイアスなどのノイズがあり、それを適切に信号処理・フィルターをし高精度に姿勢を決定しています。姿勢決定ができたところで、次はレンズを撮影対象にビシっと向ける姿勢制御をするわけですが、その制御に関しても短時間で確実に向けるために姿勢制御機器(リアクションホールなど)を擾乱等を考慮しながら適切な制御アルゴリズムを開発し制御を行っています。

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続いて「衛星の時計」もとても重要な要素となります。衛星は「第一宇宙速度」と呼ばれる速度で地球を回っており、軌道高度約500kmの衛星ですと秒速約7.6kmで進んでいきます。下図に示すように撮影時刻が1秒おくれると地上では約7.6kmずれてしまいます。「衛星の時計」はとても重要なのですが、これをいざ衛星に実装するのがなかなか難しいことなのです。衛星の内部に真に正確な時間を持つことが難しく、また遅延なく確実に撮影を動作させることにも実装上の難しさがあります。

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エンジニアリングはトライ&エラーの繰り返しです。どのようなモノづくりでも一発で動くことは稀で、試行錯誤しながらデバッグしてゆきます。衛星開発の難しさは、宇宙という遠いところにあって、打ち上げ後は物理的に修理ができず、そして常に衛星と通信ができるわけではないという「リモートで且つ、通信が定期的に切れる環境」でリモートデバッグをしないといけないところです。一方で直接手が届かない宇宙という離れた場所で想像力を働かせ衛星を正しく制御できた時の喜びは、宇宙開発のエンジニアとして痺れる面白い部分でもあります。

今日紹介した衛星の姿勢と時間の正確な管理・制御は衛星開発の難しさでもあり面白さでもあります。24時間ノンストップで衛星をビジネスで利用するためには、アルゴリズム開発だけではなく、電気・機械・ソフトウェアなどを含めた衛星システムとして実装しなければなりません。アクセルスペースでは、多くの技術領域においてエンジニアを募集しています( https://www.axelspace.com/career/ )。現職の技術を多く使っていただいて衛星のリモートデバッグエンジニアリングに参加いただきたいと考えています。 是非、ご応募ください。

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