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94 衣裳哲学

 スーツが仕事に出掛けてから、寝間着は布団に入って二度寝を始めた。

 部屋着は身支度を整え、やがてウォークインクローゼットのなかへ自らを収納した。
 代わって普段着がそこから姿をあらわし、自らのしわを伸ばし、少し身震いしてホコリを落とすと、財布がポケットに舞い込み、かばんが肩に掛かった。

 そこへ犬の首輪が現れ、普段着のズボンの裾にまとわりつく。

 すると犬の紐がするすると伸びてきて犬の首輪までその先端を伸ばした。
 もう一方の端、つまり輪になった持ち手は普段着の左手の裾のほうへ伸びる。

 接続された普段着と犬の首輪はそのまま玄関先へ向かう。

 スニーカーが現れて普段着のズボンの裾の先へ収まると、それらは外へ繰り出した。

 それから少しして寝間着は布団から出ると洗面所へ立ち、身支度を整え、やがてウォークインクローゼットのなかへ自らを収納した。

 代わって普段着がそこから姿をあらわし、自らのしわを伸ばし、少し身震いしてホコリを落とすと、トートバッグが肩にかかり、そこへ財布が舞い込んだ。

 玄関先へ向かうとスニーカーが現れて普段着のズボンの裾の先へ収まった。

 そうして普段着はドアを開け、外へ繰り出した。

 外にはたくさんの普段着と、スーツと、作業着と、制服と、子供服とで溢れている。

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