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読書日記 2023/10/30

 今日は行き帰り、金沢美術工芸大学の稲垣健志先生の阪大在籍時博士論文「移民の対抗文化に見るアイデンティティ・ポリティクスの実践 : 戦後イギリスにおける人種関係協会の活動をめぐって」を読み始めた。
 人種主義に反論、反抗する形の反人種主義ではなく、移民(マイノリティ)の立場から反人種主義という思想がどのように築かれ、移民の人たちはどうアイデンティファイしてきたのか、みたいなことをイギリスに今も現存し活動している「人種関係協会」と近現代の歴史とあわせて論じたもの。
 反対の立場として、でなく当事者たちから立ち上ったものとして、というのが読んでいて自分でも全く盲点だったと思った。
これからの抵抗の形として参考にできることはいっぱいありそう(まだ始めの方で本論まで辿り着いていないので)

 あと、やはりパレスチナ問題やポストコロニアル問題を考えるにあたってイギリスは外せないのでそういう意味でも重要だと思った。
 こんな論文が10年前に書かれていて、今も全く無関係で無学な者が無料で読めるこの幸せよ。

もっと開けアカデミア!

(読み終わったらまた感想書きます)

※追記
 読み終わった感想を書かないままだったので、続き。
政府に属する機関だった「人種関係協会」が、当事者たちがハックし、人種関係を外側のこととして調査していた機関が、国内の移民たちやマイノリティに寄り添うものとしていく過程がアツい。(イギリスで起きたカーニバルを軸にした反ナチス、反人種主義というムーブメントは内紛もあったりで尻すぼみになるのだけど、それはそれで参考にできることはたくさんあった。)
 そして、全く存じ上げなかったのだけど、そのハックの中心人物であるスリランカ出身(タミルの人)のシヴァナンダン氏が猛烈にアツい。知れて良かった!。またこちら⬇を読むと後日譚的なことが書かれているのですが、スチュアート・ホールがシヴァナンダンの初著書に言葉を寄せているのに、その後決裂、というのも最高にアツい。
 決裂した理由も、読んでいて既視感があったのですが、この「リベラルは右派の戦略に学ぶ部分はある」論争、本邦もあるよねー。単純に「だから駄目だ」とバッサリやるのではなく、両方の言ってること分かる、分かるよ〜(泣)となる位、双方の言わんとしていることを簡潔に短い文章にまとめあげていて、筆者もすげえとなりました。SNSの登場と社会インフラ化を経て、単純に「だから駄目だ」とバッサリやることが増えて、その先に行けない(話が続かない)ということも増えたし、消耗するし、となっている現代に、この二人の応酬は学べるところ多々、という感じでした。

 で、元引用の論文に書かれているカーニバルについても考えることは多くて、#入管法改悪反対 のムーブメントがあって以降、「難民・移民フェスティバル」が生まれ、開催のたびに盛り上がりを見せていること、そもそも入管法改悪反対アクション自体が、リーダーや決まった主催団体がいるものではなく、それまで路上に出ることやアクションを起こすことに無縁だった人も参加しやすいものであったこと(軸になって呼びかけや発信をして下さった団体の方々が作った土壌があってのことで、感謝とリスペクトしかないが)等を経た今から見ると、国内外のムーブメントについて、なぜ失敗したのか、なぜ大きいムーブメントになったのか、やはり重要なのはインターセクショナリティと非マッチョな運動であることなのかなと思ったり。
 人種関係協会がシヴァナンダンたちのハック後、連帯するマイノリティも広がりを見せ、様々な論考が機関紙の『MIX & RACE』に寄せられ彼の死後も今に至るまで続いていることもヒントになる気がする。
 あと、トム・ロビンソン・バンド。普通に好きだったけど、そういう背景から出てきたバンドだったのか〜と今更ながら知れたのも良かった。年上の友人で昔のロックやパンクのレコードやCDを腐るほど持っていていちいちうんちくタレてくれる人がいて、若い頃入り浸っては勝手にカセットに落としまくっていた中で(今考えると相当失礼)トム・ロビンソン・バンドとも出会ったのだけど、もっとそのタレていたうんちくも聞くべきだったと思ったとこ。思想とかウゼ〜ってなってたので。ナベちゃんごめん。
 この稲垣先生の編著で近日出る #ゆさカル にもカーニバルのことは取り上げられているっぽいので、そちらも楽しみである。戦うことも学ぶことも大事だけど、祭も大事。あと、追記で引用した論考の冒頭がステイトメントかっつうくらい、カルチュラル・スタディーズやアカデミアに対して(と、ご自身に対して)叩きつけるような感じになっていて、そんな気持ちで編まれた本なのかなと思って、それも楽しみ増幅。追記終わり。

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