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4年間続けたホームページを畳もうと思う

長く継続すること、それ自体はとても大事なことだ。でも、時には引いたほうがいいこともある。半年前から考えていたことがあった。今運営しているホームページの更新をそろそろ終わりにしたい。

今回は、一つのHPを立ち上げてから終わるまでのモチベーションの変化を残しておこうと思う。HPを立ち上げようと思っている人の参考にちょっとはなるかもしれない。


4年前に立ち上げた挑戦

社会人の忙しさにようやく慣れてきた4年前のことだ。ようやく余裕ができて思ったことがあった。

「文章を発信したい」

大学時代ではちょこちょこ文章を書いていた。でも社会人だとツイッターにぽちぽち打って虚空へ文章を飛ばすぐらいしか機会がない。

何かしたい。でも何をすればいいんだろう。こういうときに必要なのは「熱意」だ。自分の熱を持てるもの、何かないかな。

周囲をぐるりと見渡す。ふと、腕に目が留まった。視界に入ったのはアナログの腕時計だ。思わず手で文字盤をなでた。ふふん、これはただの時計じゃないのだよ。その名も「ハイブリッドスマートウォッチ」だ!

最初に買ったウィジングズ「Activite Steel」。この見た目なのに歩数測定や自動時間補正ができるってワクワクしません?

ハイブリッドスマートウォッチとは、アナログの文字盤がメインで使われているスマートウォッチのことだ。知っているだろうか。

日本で最初に話題になったのは2015年のこと(Activite)。それから3年。今、まさに黎明期で大企業やスタートアップが競うように新モデルを競い合っていた。

どんな世界でも黎明期は楽しい。「このアイデアで勝ち上がってやる」と野心にあふれた製品が次々と飛び出し、ニュースやレビューを見るたびに一喜一憂するあのわくわく感たるや。

さらには、参入企業も普通のガジェットと違う面白さがあった。なにせ「ハイブリッド」な時計だ。フレデリック・コンスタントやシチズンといった時計メーカー勢と、ノキアやガーミンといった電子機器メーカー勢が日々しのぎを削り合っていたのだ。メーカー一覧を眺めていると異種間格闘技のフィールドのように見えてくる。

一番心を撃ち抜かれたのは「Sequent」という製品だ。人が腕を振ったり歩いたときの「運動エネルギー」を使って充電なしでも使えるという尖ったコンセプトがたまらない。

さて、次は大事なSEOの話だ。競合がいないかチェックしよう。グーグル先生に聞いてみた。すると、いい具合に同じようなHPがないではないか。

それどころか、間違った情報がさも正しいかのように書かれていて思わず拳を握りしめてしまった。スマートフォンで例えると、iPhone ProとiPhone SEが別々のOSですみたいな暴論が書かれた記事が並んでいたからだ。

これはどげんかせんといかん。こうしてHP「ハイブリッドスマートウォッチカタログ」が始まった。


更新を続ける日々

調べると出てくるわ出てくるわ知らなかったハイブリッドスマートウォッチが。しかもクラウドファンディングで出た怪しいやつとか、同じ型なのに別の名前にして発売し直してたりとか香ばしいものもあったり。

まさに海に点在する島のよう。これは、自分が調べて地図を書かないと誰もこの世界の形を知らないままになってしまう。

ウィジングズ「Steel HR」。ディスプレイ&心拍測定がありながら25日も充電しないで使える優れモノだ。

こうして週一のペースで更新する日々が始まった。調べれば調べるほど視界は空高く広がっていく。高い場所からはさらに新しいハイブリッドスマートウォッチが見えてくる。その繰り返しだ。ただその世界を旅して広がりを記録していくのが楽しかった。

でも世界は丸い。だから果てはある。2年ほど経っただろうか。紹介したいハイブリッドスマートウォッチを全て書き終わった。やりきった達成感に満たされながらも、これからも続けるぞと改めて肩に力を入れる。これからは新製品が出たら真っ先に記事にしてやるんだ。

シチズン「Eco-Drive Riiiver」。シチズンのクラウドファンディングで1億円も集めて話題になったが、届いてからのガッカリ感もなかなかだった。今となっていはいい思い出だ。

しかし、ハイブリッドスマートウォッチの世界には夕日が差し込み始めていた。


ハイブリッドスマートウォッチの異変

2020年のことだ。世界一売れている時計がアップルウォッチであることがニュースになり、時計業界が震えた。

スマートウォッチは時計の市場を喰い始めていたのだ。その波の中には、時計とスマートウォッチが手を組んで作る製品、つまりハイブリッドスマートウォッチの居場所はなかった。

と同時に、スマートウォッチ技術は成熟をむかえ、性能が頭打ちとなった。WearOSもAndroidWearもそこまで大きな違いがなくなってきた。それにともない、独自OSのような我が道をゆく製品は市場から姿を消していった。

当然、ハイブリッドスマートウォッチにも同じ流れが押しよせる。クラウドファンディングで騒ぐような製品はなりを潜め、売れ筋はアナログ時計に小さなディスプレイがついた形式の製品一択となった。

今使っているのはウィジングズ「ScanWatch」。アップルウォッチと同じように心電図測定機能があるが、まだ認証が降りず日本では使えない。待ってます。

さらに販売メーカーも「ウィジングズ」「ガーミン」「フォッシルグループ」の三強となり、他社の製品をめっきり耳にしなくなってしまった。クラウドファンディングを検索してもいつも顔ぶれが変わらなくなった。

2ヶ月に一度ハイブリッドスマートウォッチのニュースをまとめていたが、そのニュースも少なくなった。仕方ないのでニュースをまとめるのは3ヶ月に一度に変えた。


モチベーションが下がっていく

こうして更新の頻度が下がっていった。でも文章は書いていたい。よし、HP更新への熱意を別のことに向けてみるか。

そこでおもしろ記事を書いてみた。noteを始めて好き勝手に書いてみたりした。小説を書いてみて自分に向いていないことを痛感したりもした。

色々やってみて気づいてしまったことがあった。

僕、そもそもガジェットの記事を書くのに向いてなかったんだ。

ガジェットの情報を調べるのは、自分しか知らない世界をどんどんのぞけてとにかく楽しい。でも、文章を書いていると、自分の中の熱が冷えていくのを感じることがあった。

ガジェットの記事で大事なのは「読みやすくひねってない文章」だ。そこに個性はいらない。でも、エッセイで自由に文章を工夫してこねくり回している時間はとにかく楽しかった。

そうか。僕は調べるのは好きだけどガジェット記事を書くのは好きじゃなかったのか。

あとは反響の違いもある。ハイブリッドスマートウォッチを書いていて、反応がもらえることはほとんどない。ニッチな市場だからアクセスは少なく金銭的に儲かることもない。でも、おもしろ記事やエッセイだとたまーにご褒美のように反応が返ってくる。

書いてて楽しいだけでなく、感想までくれるなんてそんな優しい世界があるのか(もちろん反応がないことのほうがはるかに多いが)。


HPを畳みます

2022年5月。ハイブリッドスマートウォッチを調べるうえで欠かせなかったサイト「Engadget日本版」が更新を終了した。Engadgetの記事がまちがっていると義憤に駆られて文章をつづったりもしていたのに。

ふと思った。潮時かな、と。

よし、決めた。今年いっぱいは続けて、HPの更新を終わりにしよう。


役立っていることはたくさんある

「ハイブリッドスマートウォッチカタログ」は幕を下ろすことにした。でも、おかげで得られたことはたくさんある。

これを書いている今も、手元には大好きなウィジングズのハイブリッドスマートウォッチ「ScanWatch」がいる。この心拍測定機能のおかげでフルマラソンの完走もできた。今でも頼れる相棒だ。

HPについても、実はもう一つ始めたものがある。それが「ほっこり癒しニュース」というHPだ。自作のツイッターアカウント「こういうニュースだけ見ていたいbot」で集めた記事を毎週集計してここにまとめている。一度ワードプレスをいじった経験があるおかげで、エスカレーターのようにスムーズにHPを立ち上げることができた。


4年間という短い間でしたが、ちょっとでもハイブリッドスマートウォッチに興味を持ってくれた人がいたら、HPを読んで楽しんでくれた人がいたなら嬉しい。
HPの維持費(ドメイン代)は大したことないので、当分は消さずに放置しておく予定だ。

改めて、ありがとうございました。

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