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大学時代に「等身大なシャープペン」と運命の出会いをした

デザイン性能コスパ最強の「ゼロシン」に出会った中学時代。変態的な作り込みの「エルゴノミックス」に助けられた高校時代。学生生活のそばにはいつもシャープペンがあった。今度はどんなシャープペンと出会えるかな。期待をふくらませてくぐった大学。それなのに、まさかあんなことになるとは。今回は、すべてを失ったあとに出会った新しいシャープペンの話。


大学デビュー!

さあ大学1年生だ。桜の花びらをくぐりながら教室に足を運びながら考える。今日の議題は友達の作りかた。どうやって話せば仲良くなれるんだろう。イメージトレーニングをしてみよう。教室に座る。席にノートと筆箱を取り出す。横の人を見る。目に入るのは隣の人の筆箱。変わったデザイン。思わず話しかけたくなる。これだ!

楽しい筆箱を持っていけばいいんだ。幸いちょうどいいものが手元にあった。くるくる布を広げて使う「ロールタイプ」の筆箱だ。しかもこれは高校の卒業記念でもらったもの。「大学デビューしてこい!」と高校からの応援のエールが聞こえる。この想い受け取ったぜ。

中にペンをセット。もちろん500円の「最強のシャープペン」ゼロシンもセット。あとUSBメモリを入れておこう。先輩から過去問をもらえるかもしれないしね。捕らぬ過去問の紙算用。準備万端だ。大学生活がんばるぞい!


すべてが0になる

大学生活が始まった。筆箱のおかげかはわからないけど、幸い友達はできた。サークルにも所属した。あと委員会にも入った。先輩から過去問もゲットした。そして勉強のお供はもちろんゼロシン。実験のレポートは手書き指定だからシャープペンは必須だ。大学で使う機会が減るかとも思ったけどそんなことはなかった。

そんなある日。カバンを探ると違和感が。ない。手が空を切る。カバンの中をのぞく。いつもあるはずの筆箱がない。もはや戦友同然のゼロシン、思い出の筆箱、過去問が入ったUSB……。血の気が引いた。

回れ右。歩いていた道をたどる。ない。学務課の落とし物コーナー。ない。

結局筆箱は見つからなかった。大学デビューの強力なお供は大学のどこかに忽然と消えてしまった。

肩を落として家に帰る。思い出の詰まったものを落とした悲しみ。貧乏大学生にとって、筆箱とペンの価格はバカにできない。お年玉で買ったUSBもなくしてしまった。とりあえず100円ショップの筆箱に前使っていたシャープペンを入れる。これでしのぐしかない。


新しいシャーペンとの出会いを求めて

1週間がすぎた。大学の落し物コーナーは手がかりなし。あきらめるしかない。もうあのペンたちに会えないのはさびしいけど、そろそろ切り替えないといけない。新しい出会いを探しに文房具屋へ向かうことにした。

店に入る。店内には流行りのシャープペンがずらり。「Dr.グリップ」や「α-ゲル」に「エアーフィット」。どれもデザインは悪くない。高校時代の僕なら買っていただろう。でも今は大学生。せっかくだからもっと大人らしいデザインがほしい気分。最近はやりの「クルトガ」も目に入った。グリップなしでいいかも。価格を見る。500円。ゼロシンとほぼ同じだ。もうゼロシンはいない。胸がひりつく。伸ばした手が止まる。やっぱり無理だ。また同じ価格のシャープペンを落としたらと思うと耐えられない。

どこかないか。安くて落ち着いたデザイン。それでいて安物感がないやつ。


「カラーフライト」との出会い

一つのシャープペンに目が留まる。電撃が走った。

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すらっと細身で六角形のデザイン。安いプラスチックじゃない、しっかりとした金属のペン先。グリップ代わりに凹凸で滑り止めが施された握り部分。それでありながら消しゴム部分はゼロシンと同じ繰り出し式! これ、まさに求めていたデザインだ。めっちゃ好き。

深呼吸をする。まだ買うのは早い。こういうペンは高かったりするんだ。知ってるよ。値札をめくる。

「ゼブラ カラーフライト 300円」

ペンを手に取る。足を動かす。レジに向かう。勝った。買った。こうして新しい推しのシャープペンが生まれた。

今も使ってます

あれから10年がすぎた。大学を卒業し社会人になり、新しい環境にもとっくに慣れた。でもその横にいるシャープペンは変わらない。カラーフライトだ。ただし4代目。熱でゆがんだり、さび付くまで使ったり、落としてしまったり。なんだかんだ買い替えながら使い続けている。

カラーフライトの魅力って何だろう。「ゼロシン」のような高性能でもない。「エルゴノミックス」のような強烈な個性もない。

思うに、カラーフライトほど「自然な姿」を見せているシャープペンはないんじゃないか。世の中のシャープペンは「折れない芯」「人間工学」と新機能を競い続けている。太くしたりくびれを作ったり新しいデザインを追い求め続けている。でも、カラーフライトは違う。最新というよりレトロなデザイン。変わった機能は繰り出し式の消しゴムぐらいで、あとはスタンダードそのもの。流行なんて関係ない。わが道をいくその姿は10年たっても色あせることはない。


そして今日、新しく5代目のカラーフライトをお迎えした。これからもよろしく頼むよ相棒。



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