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短歌作品

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記事一覧

博多酔吟集(15首)

   スターバックス太宰府天満宮表参道店
木材に深く組まれて空間は保たれながらコーヒーを飲む

勾玉のブレスレットが売ってあるお守り屋さんに集うこどもたち

   思い出したように話しかける
長い参道にならぶふたりはふたりとも結婚記念日を忘れてる

見えてきた文字がゆっくり意味になる 〈ひとつの中心のその中心〉

   九州国立博物館
一瞬のたのしさがくるかなしさは馬のはにわの写真を撮った

すす

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ハンガー・ハンガー



妙におしゃれな麻婆豆腐専門店におしゃべりな黒服のスタッフ

JASRACをdisっておけばいいという風潮がある時期たしかにあった

勝ち確とおもってからがむずかしいボードゲームのつぎ二回戦

えちえちのえち って何?っていうきもちと肯うきもちがたたかっている

いつ見てもスーパー玉出のひまわりは禍々しくてわらってしまう

ワザップにガセネタあふれこわされたセーブデータに泣いてたのかな

即興の

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めまいと感電



くもりびをあなたはぼくのTシャツを借りて炭酸水買いにゆく

血行がよくなるとよくないことを教えてもらう春の抜歯痕

コートのとれたボタンをずっとポケットにしのばせたまま月をまたいだ

さくらんぼみたいなものが生っていたきのうと伐採されていた今日

めまいと感電が同時にやってくるような4月 やわらかくパン焼き上がる

ハナミズキがぼろぼろになっていることに立体的なときめきが来る

インスタントコ

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ロックンロールを聴きながらつくった歌



24、5、6くだらなく過ぎていく齢(よわい)も都市の光なのかな

風邪かもな 風邪じゃなかったらいいけどな ルルには糖衣がついててえらい

脳みそが飛び出るほどのシンガロングいいんだ濁ってもその声で

ギターを持ってきみが静かに歌いだす 光のなかを駆け抜ける馬

会っててもきみに会いたい 会ってても手を握ってもそこにはいない

秋は好き 舗道を走るもこもこのフリースのこどもとすれちがう

新幹

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浅春集/送春集/暮春集

浅春集/送春集/暮春集

浅春集(抄)(2015年) 三月十六日、京大短歌追い出し歌会。折句「また会おう」

まさに言葉は旅なのだから愛すればおしなべて咲きうる揚花火

 その後コンパで酔い潰れ、榊原さんに家まで送ってもらう

就職しても元気でいてね まだ寒い春にまぶたがぶつかっている

 三月二十四日、京都大学卒業式。ぼくは大学院へ進学する。

疏水の横を歩いて帰るイヤフォンを外していても音楽が湧く

 三月二十八日、京

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ある中華街(2016年7月)

うれしいときみが言ったらうれしいな 太陽がひっくり返っても

ナチュラルアメリカンスピリット喫いながらこの世の続きはどうなるのかしら

500円玉が財布に2枚あるちょっとうきうきする大通り

降りそうな7月の朝 目を閉じてあなたのかなしみをめぐらせる

海岸通りをあなたと歩く 商店街をあなたと歩く 記憶はずっと

神戸なら神戸のなかに心なら心のなかにある中華街

くちびるに味付け海苔を貼り付けてへ

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においで醒めた(2016年1月と2月)

御社、って口にするとき恥ずかしい 高価な服を着てるみたいで

参拝の帰りにいなり寿司を買い駅のホームで食べれば冬だ

憎しみは輪郭を得て憎しみは奔馬となってぼくを出てゆく

 *

一時間すわったままで聞いていた話のオチがおばあちゃんかよ

寝転んで就活のこと考えてきょうのアルバイトはさぼりたい

友達が最低な夜、飲んでたら最高な夜 まちがってゆく

使いきるだけなのにただ難しいひとりぐらしのココ

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新幹線に乗りながらつくった歌

ぶち猫の夢を見たならぶち猫は夢見るぼくに夢みさせてる

セブンイレブン厳選むぎ茶おいしいね厳選すごい厳選こわい

心すら新幹線と等速で移動するけどさびしいのかなあ

たぶんあれ富士山だったんだろうけどまぁいっか茶畑がながれる

キックボードさばきの上手い駅前のおんなのこおとこのこ幸あれ

わたしのたばこが吸えないの、って意地悪な顔してほほえんでずるかった

京都駅大階段をみ

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吸わないけれど(2015年12月)

3年ぶりにメールを送ってきたひとの、枯木立がぎしぎし鳴っている

自転車の空気を入れて漕ぎ出すとけやき並木が明るんでいた

バイト帰りにお店の前でファミチキを食べる A very Merry Xmas!

噴水のたまたま止んでいる池に建物の灯りは落ちてから揺れる

河原町三条六曜社地下店の吸わないけれど好いマッチ箱

ステファンさんに渡邉と間違えられて渡邉として返すほほえみ

(初出:「塔」201

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春合宿吟行詠(2016.3.23)

ちょっとだけ運転手さんが怒ってる3月23日のバス

船岡山 京都の自然200選 200はガバガバすぎんよとおもう

 〈人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢まぼろしの如くなり……〉

ずっとずっと滅んでいこう参道の手すりのペンキが遊具みたいだ

 今宮神社

あぶりもちりたかったけれど競合のお店のふたつとも定休日

 やくも食堂でオリオンビール(缶)をいただく

クソリプのように生きたい平日の

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スペシャルサンクス

どのかなしみも引き受けるからはつなつの回転寿司を食べにいこうよ

あれはかつての恋人の家 遠いほど細かくなっていく夜景光

あなたとの短い会話 ゆっくりと土の山をくずしている重機

電車での女子大生のおしゃべりの、そういう日々が薄明りだよ

夏の花、ぼくら許して許されてそしたら見にいこう、冬の花

見てきたことを話してほしい生まれ育った町でのイオンモールのことを

海岸のようにあなたは眠るからずっ

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ワールドイズファイン

常緑樹に降る雨の音を聞きながらコーヒーはひとりで淹れられる

噴水がきらきら喘ぐ 了解ですみたいなメールをたくさん送る

終電をみんなうつむきドアの開く寸前  ほんとうに音がない

母親が見かねてくれたマフラーをやんわりと巻いてバイトいってきます

右も左もクリスマスだね。見上げればサノバビッチのような星々

ワールドイズファイン、センキュー膜っぽい空気をゆけば休診日かよ

だらしなく降る雪たちに

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